俺にエンジョイもチートも全否定!~仕方ない、最弱で最強の俺が行ってやろう~
第三十一回 そして組織から声がかかる
『一時突破スキル:時間操作』
そのスキルを発動し、圧倒的スピードで杖を振り上げ、身動きが取れないフェルトの間合いに入っていく。審判も、放送の人も、声を上げられない。
初めて見たのだろう、こんな圧倒的な試合そのものを。
「―――終わりだ」
「っっ―――!!」
杖を振り上げ、勢いよく下げると思われたが、彩はステップを踏んで杖を腰の辺りまで持っていき、フェルトの腹に食い込ませる。
かはっ、と声を上げてリングにたたきつけられ、気絶しているフェルト。
体力的にも魔力的にも疲労がたまっているので、彩は二重人格を解除する。
フェルトが担架で運ばれるとき、すれ違いざまに彩は言った。
「―――二重人格は、最強さ」
「二重……人格……」
爽やかな笑みで彩が微笑むと共に、審判がようやく起動する。
「し、勝者竜舞姫アヤ様! 優勝です! 二位2ヴェリト様! 二位黒騎士フェルト様! あああありがとうございましたぁああっ!!」
審判もどうやらカチコチに固まっているようで、彩はぷっと吹き出してしまった。その後彩も医療室に運ばれ、サテラに心配される。
ポーションを掛けられ完璧に治った傷を見て、彩は苦笑いを浮かべる。
―――さすが異世界だ。
ギルドの門をくぐる。
まだ疲れが取れていないのか、足取りがおぼつかない。
「ふん」
疲れている身体に鞭を打ち、彩は走って宿に向かう。宿の兄さん、姉さんがおめでとう! と涙を流しながら迎えてくれている。
その光景にクスリと笑いながら、彩は部屋の扉を開けた。
「うっ!?」
ベッドの上に見覚えのない水晶があり、そのあまりの輝きに先程閉めた扉に寄りかかって目を塞ぐ。しばらくして目を開けると―――。
水晶は無くなり、代わりに画面が映し出されていた。
『リーゼルト君に、会いたいかい?』
「誰だかわからんが、勿論だ」
『ふふ……僕は君達が恨み続けている組織のボスだよ、彩、君のことは良く知っているさ。リーゼルトは必ずここに来るよ』
「……組織の、ボス」
相変わらずモニターの画面は真っ黒だが、そこから声が聞こえるのに偽りはない。
少し気分が悪くなる声に彩は眉をひそめる。
『そうだねえ、何と言えばいいかな? 王城って行ったことあるかい』
「ない」
『そこの扉をくぐったら、組織に入れる。素質があるならね? 素質があるなら扉に近づけば透明化することができる』
「つまり私に素質がなければ組織と関われないということじゃないのか」
『そこは大丈夫。僕がこうして声をかけている時点で、君に素質があることは確定だよ。頑張れ、彩―――』
「見知らぬ奴に言われたくはないな」
モニター画面が消え去る。
相変わらず彩はボスと名のった男(仮)を信じ切ることはできないが、その声の威圧感から組織に関係あることは断言できる。
そして組織への入り口を言ってしまうとは、何をするつもりなのだ。
その時、扉が開かれた。
「アヤ、何をしておるのだ?」
「ユリウスか、何でもない、何でもないさ」
彩は笑顔をユリウスに向けた。
その笑顔が本気だったかどうかは―――誰も知らない。
―――――――――――――――――――――――――――――。
第三章、終了。
次回第四章:目線:全員。
いよいよ物語は―――クライマックスに向かっていく。
そのスキルを発動し、圧倒的スピードで杖を振り上げ、身動きが取れないフェルトの間合いに入っていく。審判も、放送の人も、声を上げられない。
初めて見たのだろう、こんな圧倒的な試合そのものを。
「―――終わりだ」
「っっ―――!!」
杖を振り上げ、勢いよく下げると思われたが、彩はステップを踏んで杖を腰の辺りまで持っていき、フェルトの腹に食い込ませる。
かはっ、と声を上げてリングにたたきつけられ、気絶しているフェルト。
体力的にも魔力的にも疲労がたまっているので、彩は二重人格を解除する。
フェルトが担架で運ばれるとき、すれ違いざまに彩は言った。
「―――二重人格は、最強さ」
「二重……人格……」
爽やかな笑みで彩が微笑むと共に、審判がようやく起動する。
「し、勝者竜舞姫アヤ様! 優勝です! 二位2ヴェリト様! 二位黒騎士フェルト様! あああありがとうございましたぁああっ!!」
審判もどうやらカチコチに固まっているようで、彩はぷっと吹き出してしまった。その後彩も医療室に運ばれ、サテラに心配される。
ポーションを掛けられ完璧に治った傷を見て、彩は苦笑いを浮かべる。
―――さすが異世界だ。
ギルドの門をくぐる。
まだ疲れが取れていないのか、足取りがおぼつかない。
「ふん」
疲れている身体に鞭を打ち、彩は走って宿に向かう。宿の兄さん、姉さんがおめでとう! と涙を流しながら迎えてくれている。
その光景にクスリと笑いながら、彩は部屋の扉を開けた。
「うっ!?」
ベッドの上に見覚えのない水晶があり、そのあまりの輝きに先程閉めた扉に寄りかかって目を塞ぐ。しばらくして目を開けると―――。
水晶は無くなり、代わりに画面が映し出されていた。
『リーゼルト君に、会いたいかい?』
「誰だかわからんが、勿論だ」
『ふふ……僕は君達が恨み続けている組織のボスだよ、彩、君のことは良く知っているさ。リーゼルトは必ずここに来るよ』
「……組織の、ボス」
相変わらずモニターの画面は真っ黒だが、そこから声が聞こえるのに偽りはない。
少し気分が悪くなる声に彩は眉をひそめる。
『そうだねえ、何と言えばいいかな? 王城って行ったことあるかい』
「ない」
『そこの扉をくぐったら、組織に入れる。素質があるならね? 素質があるなら扉に近づけば透明化することができる』
「つまり私に素質がなければ組織と関われないということじゃないのか」
『そこは大丈夫。僕がこうして声をかけている時点で、君に素質があることは確定だよ。頑張れ、彩―――』
「見知らぬ奴に言われたくはないな」
モニター画面が消え去る。
相変わらず彩はボスと名のった男(仮)を信じ切ることはできないが、その声の威圧感から組織に関係あることは断言できる。
そして組織への入り口を言ってしまうとは、何をするつもりなのだ。
その時、扉が開かれた。
「アヤ、何をしておるのだ?」
「ユリウスか、何でもない、何でもないさ」
彩は笑顔をユリウスに向けた。
その笑顔が本気だったかどうかは―――誰も知らない。
―――――――――――――――――――――――――――――。
第三章、終了。
次回第四章:目線:全員。
いよいよ物語は―――クライマックスに向かっていく。
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