俺にエンジョイもチートも全否定!~仕方ない、最弱で最強の俺が行ってやろう~
第二十二回 魔物大量襲来③
真っ白なローブが風になびく。茶色の髪をポニーテールにした少女、彩がギルドマスタールカから借りた雪のように白い杖を掲げる。
能力レベル20
体力122
攻撃力130
防御力120
知識120
特別スキル――「支配者」スキル「空気操作」スキル「感情爆発」スキル「精霊の光」
称号「ユリウスの主」「王者」
属性「光」
リオンの出場が終わり、彩に交代する前彼女が一度アーナーに鑑定してもらった結果だ。少しだけだが上昇はしている。
『精霊の光』は杖があった方がやりやすい。
そう言うとルカは彼が持っている中でも一番いい杖を貸してくれた。勿論魔力が通しやすい方が威力も出るので喜んで受け取った。
「そうだなぁ……もうすぐか」
目を細めて戦場を見ると上手く精霊の光が撃てるように真ん中が開いていた。あいにく意志も知識もない魔物にそこを通り抜ける知能は無い。
もし飛び出てきたとしても冒険者達が一掃して自分の位置に素早く戻る。
信頼を胸に、彩は目を閉じて長めに詠唱をする。その方が威力が格段に上がるのだ。
『その力を示せ、その主が命じよう、暴れまわり、全てを破壊し尽くす許可を出そう、破壊の光、うごめく大地、何のために存在するのか、行動で示して見せよ!!』
精霊の光なのに物騒な呪文だが、そこは気にしないということで。
前出した精霊の光よりもずっと威力の強い光が飛び出した。
細く高熱が集まった光が魔物の軍団に当たり、高熱が広がっていく。光に触れる前から死んだり、触れた瞬間に死んだりで死に方はそれぞれだがほぼ全滅した。
残った何体かの魔物は冒険者達に任せ、彩は肩で息をしながらルカのいる部屋―――ギルドマスター室へ向かう。
「今回の評価も期待できないな。……まだリオンは超えられていない」
リオンと比べてしまった何だか惨めだが、超えられていないというのは事実。リオンならば時間をかけずにちゃっちゃと終わらせるだろう。
そして今の彩みたいに肩で息をするなどは問答無用でしていないと断言できる。
『ご主人様、気に病むことでもないかと。戻りましょう』
「まあ……そうだな。戻ろう。―――しかし、此処まで上手く行くもんなのか?」
何か、違うことでも起きないのか。
こうして早く解決できてしまったことが彩には胸騒ぎに感じられた。
もう何も考えないようにして彩はアーナーの言う通りルカの待つギルドマスター室へ足を速める。
扉を叩くと「入って」と声が聞こえ、彩は扉を引いて開けた。
「うん、良くできたと思うよ。ありがとう。でもぼくはね……」
「こう簡単に終わると思わない、か」
彩の言葉を聞くとルカはにこりと笑って顔を真剣なものに戻して頷いた。どうやらルカも彩と同じことを考えていたらしく、此処で終わることが胸騒ぎになっているようだ。
こう簡単に終わるのならばルカ一人でもなんとかなったのだ。
此処までたくさんの兵力を直感で出す必要もなかった、ともいえる。
ルカの直感は当たる。というか、当たらなかったことがない。
これだけたくさんの兵力を使ったのはこれで終わらないかもしれないという直感から。
「そう言えばリオンはもう帰ったのか?」
「うん。何か任務があるらしくてね。ぼくはそっちを優先したよ。下手にあの組織を怒らせたくもないしね……」
「―――それで、何か始まるような感じもないが」
「そうなんだよね。冒険者達は勝利の飲酒をしているようだけど」
ルカが外を覗くと、冒険者達が勝利を祝って酒を飲んで居たり談笑していたりした。彩は気になって見てみると、端っこに黒い服を着た男がにやりと笑った。
―――そして、目が合った。
「ルカ! あいつは危ない!」
「うん、ぼくも分かってる、でももう引き上げるのは間に合わない!」
ルカが窓から降りようとするのと男が手を空に掲げるのと。同時に行われた。
男の術が行使されるのとルカがそこまで駆けつけるの、どちらが早いかは一目瞭然。
彩は何もできない自分が―――憎かった。
――――――。
大爆発が、起きた。
ルカは急いで冒険者達と自分に結界を張るが、犠牲がどれだけなのか煙や炎で分からない。
(これだけの大規模な魔法か魔術を放ったということは、相手も相当な実力者ということなのか……?)
炎が彩の精霊魔術で物理的に消され、煙が消え去った時。
冒険者達がケガをしていたり重症だったりはしていたが、誰一人死んではいなかった。
「どういう、事だ?」
「ルカ! あの男は?」
「逃げられたよ。どうやら目的はぼくらを殺すことじゃないらしい」
とにかく調査が必要だ、とルカは続ける。
「アヤちゃんは冒険者達を誘導してギルドに戻って! それからサテラは神殿に行って治癒魔法の聖女を呼んで! ぼくはあいつを追いかける!」
「あぁ!」
「分かりました、ギルドマスター!」
言いたいことを言ってルカは真剣な顔をして恐らく男が去った方向へ走っていった。彩はそれを見届けると冒険者達をギルドへ誘導する。
精霊魔術をアーナーから借りれば治癒魔法も少しだけならできる。
サテラが彩の逆方向に向かって走る。目的地は聖女のいるはずの神殿だ。
サテラが戻ってくるまで彩はアーナーから借りた治癒魔法で一旦凌ぐことにした。
―――しかし、事件は終わらないのだろうか。
「どうしよう……なぁ、準人―――――――――」
好きな人の名前をつぶやいて、彩は目に涙を溜めた。しかしそれをこらえて笑顔で冒険者達を怖がらせないように治癒を進めていく――――――――。
能力レベル20
体力122
攻撃力130
防御力120
知識120
特別スキル――「支配者」スキル「空気操作」スキル「感情爆発」スキル「精霊の光」
称号「ユリウスの主」「王者」
属性「光」
リオンの出場が終わり、彩に交代する前彼女が一度アーナーに鑑定してもらった結果だ。少しだけだが上昇はしている。
『精霊の光』は杖があった方がやりやすい。
そう言うとルカは彼が持っている中でも一番いい杖を貸してくれた。勿論魔力が通しやすい方が威力も出るので喜んで受け取った。
「そうだなぁ……もうすぐか」
目を細めて戦場を見ると上手く精霊の光が撃てるように真ん中が開いていた。あいにく意志も知識もない魔物にそこを通り抜ける知能は無い。
もし飛び出てきたとしても冒険者達が一掃して自分の位置に素早く戻る。
信頼を胸に、彩は目を閉じて長めに詠唱をする。その方が威力が格段に上がるのだ。
『その力を示せ、その主が命じよう、暴れまわり、全てを破壊し尽くす許可を出そう、破壊の光、うごめく大地、何のために存在するのか、行動で示して見せよ!!』
精霊の光なのに物騒な呪文だが、そこは気にしないということで。
前出した精霊の光よりもずっと威力の強い光が飛び出した。
細く高熱が集まった光が魔物の軍団に当たり、高熱が広がっていく。光に触れる前から死んだり、触れた瞬間に死んだりで死に方はそれぞれだがほぼ全滅した。
残った何体かの魔物は冒険者達に任せ、彩は肩で息をしながらルカのいる部屋―――ギルドマスター室へ向かう。
「今回の評価も期待できないな。……まだリオンは超えられていない」
リオンと比べてしまった何だか惨めだが、超えられていないというのは事実。リオンならば時間をかけずにちゃっちゃと終わらせるだろう。
そして今の彩みたいに肩で息をするなどは問答無用でしていないと断言できる。
『ご主人様、気に病むことでもないかと。戻りましょう』
「まあ……そうだな。戻ろう。―――しかし、此処まで上手く行くもんなのか?」
何か、違うことでも起きないのか。
こうして早く解決できてしまったことが彩には胸騒ぎに感じられた。
もう何も考えないようにして彩はアーナーの言う通りルカの待つギルドマスター室へ足を速める。
扉を叩くと「入って」と声が聞こえ、彩は扉を引いて開けた。
「うん、良くできたと思うよ。ありがとう。でもぼくはね……」
「こう簡単に終わると思わない、か」
彩の言葉を聞くとルカはにこりと笑って顔を真剣なものに戻して頷いた。どうやらルカも彩と同じことを考えていたらしく、此処で終わることが胸騒ぎになっているようだ。
こう簡単に終わるのならばルカ一人でもなんとかなったのだ。
此処までたくさんの兵力を直感で出す必要もなかった、ともいえる。
ルカの直感は当たる。というか、当たらなかったことがない。
これだけたくさんの兵力を使ったのはこれで終わらないかもしれないという直感から。
「そう言えばリオンはもう帰ったのか?」
「うん。何か任務があるらしくてね。ぼくはそっちを優先したよ。下手にあの組織を怒らせたくもないしね……」
「―――それで、何か始まるような感じもないが」
「そうなんだよね。冒険者達は勝利の飲酒をしているようだけど」
ルカが外を覗くと、冒険者達が勝利を祝って酒を飲んで居たり談笑していたりした。彩は気になって見てみると、端っこに黒い服を着た男がにやりと笑った。
―――そして、目が合った。
「ルカ! あいつは危ない!」
「うん、ぼくも分かってる、でももう引き上げるのは間に合わない!」
ルカが窓から降りようとするのと男が手を空に掲げるのと。同時に行われた。
男の術が行使されるのとルカがそこまで駆けつけるの、どちらが早いかは一目瞭然。
彩は何もできない自分が―――憎かった。
――――――。
大爆発が、起きた。
ルカは急いで冒険者達と自分に結界を張るが、犠牲がどれだけなのか煙や炎で分からない。
(これだけの大規模な魔法か魔術を放ったということは、相手も相当な実力者ということなのか……?)
炎が彩の精霊魔術で物理的に消され、煙が消え去った時。
冒険者達がケガをしていたり重症だったりはしていたが、誰一人死んではいなかった。
「どういう、事だ?」
「ルカ! あの男は?」
「逃げられたよ。どうやら目的はぼくらを殺すことじゃないらしい」
とにかく調査が必要だ、とルカは続ける。
「アヤちゃんは冒険者達を誘導してギルドに戻って! それからサテラは神殿に行って治癒魔法の聖女を呼んで! ぼくはあいつを追いかける!」
「あぁ!」
「分かりました、ギルドマスター!」
言いたいことを言ってルカは真剣な顔をして恐らく男が去った方向へ走っていった。彩はそれを見届けると冒険者達をギルドへ誘導する。
精霊魔術をアーナーから借りれば治癒魔法も少しだけならできる。
サテラが彩の逆方向に向かって走る。目的地は聖女のいるはずの神殿だ。
サテラが戻ってくるまで彩はアーナーから借りた治癒魔法で一旦凌ぐことにした。
―――しかし、事件は終わらないのだろうか。
「どうしよう……なぁ、準人―――――――――」
好きな人の名前をつぶやいて、彩は目に涙を溜めた。しかしそれをこらえて笑顔で冒険者達を怖がらせないように治癒を進めていく――――――――。
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