俺にエンジョイもチートも全否定!~仕方ない、最弱で最強の俺が行ってやろう~
第二十一回 魔物多量襲来②
「実はね、君に力を貸してほしいんだ」
「あ?」
彩が目を光らせて睨むが、ルカは肩をすくませるのみで動じることは無かった。さすがギルドマスターということだろう、ヤンキーのパクリでは驚いたりもしない。
というか、Bランク冒険者だってこの眼光には動じなかったのだから。
……受付嬢はBランク冒険者だった。試しに威圧をかけてみても「どうしましたか?」と返されて全く恐れられなかった。
今も恐れられると思ってやっているわけではない。
「アヤちゃんの努力は聞いているんだ。それでね……魔王城から大量の魔物が溢れてきてるから冒険者全員を集めることになったんだ」
「それは普通集合命令をかけて冒険者達を集結させるんだろ? なんでこうして個人的に話しかける必要があるんだ?」
「リアっていう受付嬢代表の子に無理を言ってアヤちゃんだけ特別にぼくから声をかけたんだよ。初めてだろうし、それに色々説明したいことがあるからね」
いまいち信じられなかったが、とりあえず彩は彼の話を聞くことにした。
そしてギルドマスター室で作戦を立てたり岩の上に立たされたり色々無茶したりして現在こうなっている。ひとつの計画が終わるたびに報告するように言われているのだ。
私に頼むくらいなら自分でやれよ、とも思ったがルカの真剣な表情を見て意見することは叶わなかった。
こうして人助けになっているのだ、それもいいと割り切れたのだ。
「……魔物大量一掃計画が終わったぞ、報告しに来た。それで、ラストの助手とかいうヤツは誰なんだよ……?」
「失礼します。リオンと、申します」
「その助っ人というのが……お、来たかリオン。機密組織の中でも有数の強さを誇る賢者リオンだよ」
「機密組織か」
不満そうに扉を開けて勝手にそこら辺にあった椅子に座ってルカに問いかける。ルカが答えないうちにドアが開けられ―――機密組織賢者隊長―――リオンが現れた。
これは彼女がリーゼルトに襲撃をかける少し前の事、リオンは既にリーゼルトの居る街を襲撃する命令を受けていたのだが、ルカに戦力申請をされたため長引いたのだ。
機密組織、という単語を聞いた彩は密かに奥歯をかみしめた。全ての元凶である機密組織を、どの方面で考えても許せなかったのだ。
「それでねアヤちゃん。先にリオンを戦わせるから休憩を終えたらリオンと合流して。お互いその時に出せる最上級の魔術を撃ちだしてほしいんだ」
「待て。それを私ができるとでも―――」
「了解しました、ギルドマスター。必ずこなして見せましょう」
アーナーの力を借りているだけだし彩自身自己回復能力が低い。そう簡単に、そう早く回復できるわけではないのだ。
しかし敵でもある機密組織のトップに近い賢者リオンが了承して誓いまでしたのを見て、どうしても弱音を吐くことはできなかった。
それが彩のいいところであり悪い所でもあることを昔リーゼルトに教えてもらったことがある。
「ってことは私は此処で休憩をしていればいいってことか?」
「うん。そういうことだね。じゃあ善は急げ……リオンは先に前線に出て、大体冒険者達でも簡単に太刀打ちできる数になったら一度戻ってきて」
「分かりました」
そう短く了承すると、リオンは転移魔術を使って前線に出ていった。彩は彼女がいた場所を一瞬にらみ、意識をルカの方に戻した。
「それで、私に何か言いたいことがあるんじゃないのか?」
「そうだねぇ……君は機密組織に何か恨みでもあるのかい? ぼくが機密組織というたびに、そしてリオンが来てから目の色が鋭くなっているよ」
―――気づかれていたのか。
恐怖心でもなく、彩の心には純粋な賞賛の気持ちが浮かんでいた。くすりと笑い、その表情を緩める。
「まあそうとも言えるな。私の場合ただの恨みではなく、此処に来た理由そのものが機密組織に近づくためなんだ」
「―――悪いことは言わないよ。ただあの組織に深くかかわると怖いし。このぼくでもあそこのボスと戦えば赤子をひねるかのように殺されるかな」
「は。そんな奴がいたとしても面を向かって戦ってやるよ。それとすでに悪いことを言っているのは自覚があるか?」
「あるよ勿論。アヤちゃんがそういうのならぼくはもう何も言わないけど……君の表情から見るに方法はあるということかな?」
聞いていた、ギルドの高位ランクの冒険者達から。ルカは人の表情から読み取るのが得意で彼を騙せる者は世の中にも少数だ。
ルカの前では騙しも細工も何も効かないのである。
真実を話すしかないとなるとルカと取引を希望する者もその分減るのだが。
方法はある、という言葉を彩は無言という返事の仕方をした。黙認と言ったら正しいだろう。彩がルカにこんなことを話したのは単純な信頼だ、きっと分かってくれるだろうと思っている。
「―――それで、戦況はどうなんだ? 私は見るのは得意ではないから何がどうなっているのか分析出来ないんだ。この状況は良い状況と言えるのか?」
「アヤちゃんの活躍のおかげで冒険者達も騎士たちも色んな人たちが頑張ってくれてね。今の戦況はすごくいいと思ってるよ」
これ以上聞かれたくないという気持ちもあって彩は違う話題に変える。ルカも気付いたのかはわからないが彩に合わせてくれている。
―――しばらくすると前線に降り立って花弁を散らせるリオンの姿が鮮明になる。
リオンの姿を見てもっと冒険者達などは進み、気持ちが高まっているようだ。
「やる、な」
小さな一言をこぼし、彩はただ黙ってその光景を見つめるのだった。
「あ?」
彩が目を光らせて睨むが、ルカは肩をすくませるのみで動じることは無かった。さすがギルドマスターということだろう、ヤンキーのパクリでは驚いたりもしない。
というか、Bランク冒険者だってこの眼光には動じなかったのだから。
……受付嬢はBランク冒険者だった。試しに威圧をかけてみても「どうしましたか?」と返されて全く恐れられなかった。
今も恐れられると思ってやっているわけではない。
「アヤちゃんの努力は聞いているんだ。それでね……魔王城から大量の魔物が溢れてきてるから冒険者全員を集めることになったんだ」
「それは普通集合命令をかけて冒険者達を集結させるんだろ? なんでこうして個人的に話しかける必要があるんだ?」
「リアっていう受付嬢代表の子に無理を言ってアヤちゃんだけ特別にぼくから声をかけたんだよ。初めてだろうし、それに色々説明したいことがあるからね」
いまいち信じられなかったが、とりあえず彩は彼の話を聞くことにした。
そしてギルドマスター室で作戦を立てたり岩の上に立たされたり色々無茶したりして現在こうなっている。ひとつの計画が終わるたびに報告するように言われているのだ。
私に頼むくらいなら自分でやれよ、とも思ったがルカの真剣な表情を見て意見することは叶わなかった。
こうして人助けになっているのだ、それもいいと割り切れたのだ。
「……魔物大量一掃計画が終わったぞ、報告しに来た。それで、ラストの助手とかいうヤツは誰なんだよ……?」
「失礼します。リオンと、申します」
「その助っ人というのが……お、来たかリオン。機密組織の中でも有数の強さを誇る賢者リオンだよ」
「機密組織か」
不満そうに扉を開けて勝手にそこら辺にあった椅子に座ってルカに問いかける。ルカが答えないうちにドアが開けられ―――機密組織賢者隊長―――リオンが現れた。
これは彼女がリーゼルトに襲撃をかける少し前の事、リオンは既にリーゼルトの居る街を襲撃する命令を受けていたのだが、ルカに戦力申請をされたため長引いたのだ。
機密組織、という単語を聞いた彩は密かに奥歯をかみしめた。全ての元凶である機密組織を、どの方面で考えても許せなかったのだ。
「それでねアヤちゃん。先にリオンを戦わせるから休憩を終えたらリオンと合流して。お互いその時に出せる最上級の魔術を撃ちだしてほしいんだ」
「待て。それを私ができるとでも―――」
「了解しました、ギルドマスター。必ずこなして見せましょう」
アーナーの力を借りているだけだし彩自身自己回復能力が低い。そう簡単に、そう早く回復できるわけではないのだ。
しかし敵でもある機密組織のトップに近い賢者リオンが了承して誓いまでしたのを見て、どうしても弱音を吐くことはできなかった。
それが彩のいいところであり悪い所でもあることを昔リーゼルトに教えてもらったことがある。
「ってことは私は此処で休憩をしていればいいってことか?」
「うん。そういうことだね。じゃあ善は急げ……リオンは先に前線に出て、大体冒険者達でも簡単に太刀打ちできる数になったら一度戻ってきて」
「分かりました」
そう短く了承すると、リオンは転移魔術を使って前線に出ていった。彩は彼女がいた場所を一瞬にらみ、意識をルカの方に戻した。
「それで、私に何か言いたいことがあるんじゃないのか?」
「そうだねぇ……君は機密組織に何か恨みでもあるのかい? ぼくが機密組織というたびに、そしてリオンが来てから目の色が鋭くなっているよ」
―――気づかれていたのか。
恐怖心でもなく、彩の心には純粋な賞賛の気持ちが浮かんでいた。くすりと笑い、その表情を緩める。
「まあそうとも言えるな。私の場合ただの恨みではなく、此処に来た理由そのものが機密組織に近づくためなんだ」
「―――悪いことは言わないよ。ただあの組織に深くかかわると怖いし。このぼくでもあそこのボスと戦えば赤子をひねるかのように殺されるかな」
「は。そんな奴がいたとしても面を向かって戦ってやるよ。それとすでに悪いことを言っているのは自覚があるか?」
「あるよ勿論。アヤちゃんがそういうのならぼくはもう何も言わないけど……君の表情から見るに方法はあるということかな?」
聞いていた、ギルドの高位ランクの冒険者達から。ルカは人の表情から読み取るのが得意で彼を騙せる者は世の中にも少数だ。
ルカの前では騙しも細工も何も効かないのである。
真実を話すしかないとなるとルカと取引を希望する者もその分減るのだが。
方法はある、という言葉を彩は無言という返事の仕方をした。黙認と言ったら正しいだろう。彩がルカにこんなことを話したのは単純な信頼だ、きっと分かってくれるだろうと思っている。
「―――それで、戦況はどうなんだ? 私は見るのは得意ではないから何がどうなっているのか分析出来ないんだ。この状況は良い状況と言えるのか?」
「アヤちゃんの活躍のおかげで冒険者達も騎士たちも色んな人たちが頑張ってくれてね。今の戦況はすごくいいと思ってるよ」
これ以上聞かれたくないという気持ちもあって彩は違う話題に変える。ルカも気付いたのかはわからないが彩に合わせてくれている。
―――しばらくすると前線に降り立って花弁を散らせるリオンの姿が鮮明になる。
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