俺にエンジョイもチートも全否定!~仕方ない、最弱で最強の俺が行ってやろう~

なぁ~やん♡

第二十回 魔物大量襲来①

魔物が走っている。
冒険者、騎士、戦えるものは全て彼らと退治し続けている。

そこから遠く離れた大きな岩に立っている少女。彼女は耳に付けたイヤリングがきれいで目立つ。そして少女のチャームポイントでもある。
ピッ。
少女がイヤリングを押すと、薄い青のパネルが浮かび上がった。

「ふうむ、やっぱり大魔王城が原因だな」

『マスター、大魔王の配下である者が死んだようで、彼女が使役していた魔物がこちら、王都フェリラーに来ているだけのようです。消えたと向こうは思ってるようですがね』

「冒険者の情報を見せろ、アーナー」

『了解しました。マスター』

あれから少女もとい彩はイヤリングもといナビアーナーを鍛え上げ、カタコトではなくふつうに話せるようにした。
その努力のかいもあってちゃんとアーナーは話すことができている。

「むぅ……やはりか」

下級の冒険者が何人かいないのはどうでもいいのだが、Aランク冒険者が一人いない。
考えられるのは組織が何か手を回したか、大魔王城で何かが起こっているのか。

アーナーはそう推測し、彩に伝える。

「まああり得るかもしれんが、どちらにせよ今は関係ない。技を放つぞ」

『マスター、ただいまよりあたちの魔力を渡します』

ぶわっ、と彩のオーラが膨れ上がり、彩は歯をかみしめて悲鳴を抑えた。
能力レベル15
体力120
攻撃力122
防御力117
知識119
特別スキル――「支配者」スキル「空気操作」スキル「感情爆発」スキル「精霊の光」
称号「ユリウスの主」「王者」
属性「光」
『判定 表示できません』

現在の彩のステータスはこうなっている。
具体的にはアーナーのステータスを合体させているだけだ。

「いつも何だか体が熱いな。もう慣れたがな……」

『マスター、最初は何度も悲鳴を上げていましたね』

「なっ!? い、言うな恥ずかしいッ!」

そのとおり、最初力を渡す練習をしたとき彩は五回目くらいの時まで悲鳴を上げていた。
ひとつため息をついて、彩はスキル「精霊の光」発動準備をする。

同時に魔物をひれ伏させるかのようにスキル「支配者」称号「王者」を利用する。

『精霊の光』

彩の持つ最高の手札。全魔力をかけて魔物を一掃していく。
ちなみにギルドマスターが冒険者や騎士たちに号令をかけて彼らは少し後ろに退去している。

光が覆いかぶさるかのように地面を剃って魔物を撃ち殺していく。
悪は苦しみ、正しき者は癒しを感じるこの光、実は人間にも作用がある。

作用が起こってしまうと悪い者が誰かバレたりするのも面白いのだが今は止めるようにしている。さすがにこの重要な時に捕まえたりそういうのは忙しさが増すだけだ。
なんなら後で彩が自ら拷問的なのをしに行けばいい。

「ぎゃああああ!!!」

「ヴおああああああ!!」

「びひぃ」

絶叫と断末魔の阿鼻叫喚の地獄絵図。
勿論それが魔物で提供されれば気持ち悪さと地獄さ、グロさはもっと増す。

こんな状態を創り出した本人はどや顔で笑っていた。

「こんなもんか。でもまだだな、あいつらがまだだ」

魔物の中でもリーダー敵役目を持っているだろう魔物、オーガ。
ただの巨体、と言ってしまえばそれで終わりだが、硬すぎて攻撃も魔術も通らないし何せデカいので間合いを詰められやすい。
それが百匹辺り……彩でももう応対はしにくい、後はユリウスに任せるしかない。

もうひとつ精霊の光を撃てるようになったらユリウスとまた交代するつもりだ。

「あー休む」

『マスター、この岩が破壊される前に先にギルドマスターに報告しに行きましょう』

「うわ、めっちゃめんどくせえ」

『マスター、怒られる方がもっとめんどくせえです』

「そうだな」

休むのはひとまず後回しにして、彩はギルドマスターに報告することにした。
こういう時にアーナーは物凄く役に立っている。

その前に……どうして彩が此処に居るのか、どうしてこうなっているのか。




時間は少しだけ遡る。

――――――――――――――――――――――――――――――――☆

依頼を終えて彩は宿に帰ってきた。
今日はまだランクアップはできていないが、F、E、D、の三つの下級ランクの中では上級のDランクだ。スライムダンジョンから帰って来た時世界最速だと言われてランクを上げられた。

その中には期待も含まれているだろう。

「あ、アヤさーん。アヤさんを探している人がいるらしいので下へ行ってください」

「何か約束した覚えはないがな……一応行く、案内しろ」

眠たくて閉じそうとする瞼をプライドで開けて宿の店主にそう言った。
案内されたのはいつもの食堂的な場所で、一人の男がいた。

店主はどうやら男に畏まっているようで、案内するとそそくさと逃げていった。

「あの……私を呼んだのは貴様か? ……ギルドマスター?」

「ははは、良く分かったねぇ。ぼくはギルドマスター、ルカだ、よろしく」

「は? はあ」

事態は、そこから始まったのだった。
彩が「こんなところ」に来なければいけなくなったのは。

これがきっかけだった。

今でも彩はギルドマスターもといルカを少しだけ恨んでいるらしい。

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