俺にエンジョイもチートも全否定!~仕方ない、最弱で最強の俺が行ってやろう~
第十三回 謎の地下室、二度目に参る
「うん……っく」
朝、早めに起きた彩はぐい、と背伸びをしてひとつあくびをした。
何と言うか、これは気分の高揚による早起きと言うわけではなく面倒ごとを早く終わらせたいという意味の込められた早起きだった。
彩にとってあの地下室には少し恐怖がある。
そのすぐ後にユリウスも起きた。
ドラゴンの種族と言うのは人間より早起きをするそうだ。
「ん? アヤはもう起きたのか?」
「あぁ……そのレキストとやらに早く会って終わらせたいからな」
「うむぅ。我によると結構な大事だと思うのだが?」
「私だけの力で、何とかできるものでもないだろう?」
そこでようやくユリウスは彩の考えが分かった。
自分の実力をよく知り、適度に助けを求めるということだろう。
彩の計画力、そして「適度な」プライドというのは褒め称えるべきだろう。
ただ本当に褒めると調子に乗るためそれはやめておいた。
「では我は布団を片付ける、アヤは行く準備をしておれ」
「分かった。……せっかく大理石までになったのに、まだ布団を敷いているのか」
ユリウスのために体の大きさをわざわざ測ったベッドが置いてあるのに未だに使っていない。
彩はため息をついて、動きやすい服に着替える。
とはいってもパジャマからここに来た時に着ていた服にかえるだけなのだが。
「我はどうも落ち着かんのだ。地面に寝ておったからの」
「はぁあ、ドラゴンの種族って贅沢嫌いなのかよ」
「……遠回しに屈辱しているような気もするが。そうなのだ。力で十分だったからな」
それもそうか、と彩は納得する。しばらくして押入れに布団を押し込んだユリウスが頷くと、あの地下室へいく合図が出された。
才能の部屋には、海斗の部屋だけにある放送室に繋がるスピーカーがある。
『彩、ユリウス、セシア、『転移』』
他には何も言わずに、いきなり転移させられた。
「ちょぉ!?」
彩が声を上げたときは、すでにうす暗い地下室の通路に居た。
「まあ時間をかけたくなかったからさ」
「私だって時間はかけたくないが扱いがひどいぞ」
「……アヤ、カイト。魔法陣が来るぞ」
「な、何でそんなのがわかるんだよ、神じゃないか」
「魔法の気配。しかもとても強い、強い者同士こそがわかるシステム」
遠回しにナルシストをしている、というツッコミは封じ込み、彩は顔をひきつらせるだけにとどめておいた。周りを見ればセシアも海斗も同じような顔をしている。
肝心のユリウスは全く気付いていない。
しばらくするとユリウスの言う通り巨大な魔法陣が全員を包んだ!?
「ま、前来たときは……一人ずつだったのに」
「今回はレキスト様の意図的なものだったからなのだろうか?」
彩とユリウスの声は虚無に吸い込まれて消えていった。
しかしその声は、その言葉は響いて全員に届いたのだという。
「んんっく……」
眼をきゅっと閉じ、ゆっくりと確認するようにセシアは目を開けた。
目の前には、それほど大きくはない水晶が置いてある。
つられて皆もゆっくりと目を開ける。そして変わらぬ景色に安堵したのだった。
「ああ~早く終わんないかな」
海斗の声は響いて渦に巻き込まれるかのように消えた。
「……この空間、なんか変じゃないか?」
彩の声も、全員に届いたその後にすぅ、と消えていった。
「そうだな……魔力の少ない者は消えてしまうようだ」
言葉の魔力も立派なほど多いのだがそれすらも吸い込まれて消えてしまったのだ。
彩はギリギリここにいることができる範囲内なのだろう。
ユリウスは余裕、海斗はまだいいというくらいでセシアは少しきついと感じている。
人間の範疇ならば腹に力を入れて消されないように踏ん張るだろう。
此処で彩が少し耐えきれなくなり魔力を結界にするかのように放出する。
「元の私ならこんなの……」
「今の彩と昔の彩は違うのだ、我も手伝う」
そしてユリウスは彩に魔力を受け渡しし、海斗もセシアに少しだけ魔力を渡す。
これで全員が感じる空間の圧迫感はほぼ同じになる。
ユリウスの魔力は彩が半分ごっそりと持っていかれており、海斗はわずかに減っただけだ。
この計算だと同じというのもありえるだろう。
そして空間が落ち着いたところで、空間の圧迫感はまた増える。
「うあっ!?」
彩が悲鳴を上げて数歩下がった。
水晶の中間あたりに元からあった光る点。
それが今一番に光っており、この場にいる全員の眼を針のように突き刺した。
光は空間を支配し、もはや水晶などみえない。
「女神は、これだけ、つよい、ということか」
信じられない圧迫感に必死に耐えながらもユリウスは声を漏らした。
この場に女神が居るということは間違いない、と証明された。
しばらくして光の強さがやや弱まり、四人はせめて立っていられる状態となった。
光っていたその一点から、息を呑むほどの美しさの女神と思われる人物が現れる。
華やかな着物、美しい肩掛け、空間に舞う長く清潔な髪。みずみずしく見る人を惑わす唇。
彼女がにこりと微笑むと、セシアとユリウスが別空間に転移される。
笑っただけで人を転移させるという超人技。
どうやら彼女をレキストとみて間違いはないようだ。
そしてその唇がゆっくりと開かれる。
朝、早めに起きた彩はぐい、と背伸びをしてひとつあくびをした。
何と言うか、これは気分の高揚による早起きと言うわけではなく面倒ごとを早く終わらせたいという意味の込められた早起きだった。
彩にとってあの地下室には少し恐怖がある。
そのすぐ後にユリウスも起きた。
ドラゴンの種族と言うのは人間より早起きをするそうだ。
「ん? アヤはもう起きたのか?」
「あぁ……そのレキストとやらに早く会って終わらせたいからな」
「うむぅ。我によると結構な大事だと思うのだが?」
「私だけの力で、何とかできるものでもないだろう?」
そこでようやくユリウスは彩の考えが分かった。
自分の実力をよく知り、適度に助けを求めるということだろう。
彩の計画力、そして「適度な」プライドというのは褒め称えるべきだろう。
ただ本当に褒めると調子に乗るためそれはやめておいた。
「では我は布団を片付ける、アヤは行く準備をしておれ」
「分かった。……せっかく大理石までになったのに、まだ布団を敷いているのか」
ユリウスのために体の大きさをわざわざ測ったベッドが置いてあるのに未だに使っていない。
彩はため息をついて、動きやすい服に着替える。
とはいってもパジャマからここに来た時に着ていた服にかえるだけなのだが。
「我はどうも落ち着かんのだ。地面に寝ておったからの」
「はぁあ、ドラゴンの種族って贅沢嫌いなのかよ」
「……遠回しに屈辱しているような気もするが。そうなのだ。力で十分だったからな」
それもそうか、と彩は納得する。しばらくして押入れに布団を押し込んだユリウスが頷くと、あの地下室へいく合図が出された。
才能の部屋には、海斗の部屋だけにある放送室に繋がるスピーカーがある。
『彩、ユリウス、セシア、『転移』』
他には何も言わずに、いきなり転移させられた。
「ちょぉ!?」
彩が声を上げたときは、すでにうす暗い地下室の通路に居た。
「まあ時間をかけたくなかったからさ」
「私だって時間はかけたくないが扱いがひどいぞ」
「……アヤ、カイト。魔法陣が来るぞ」
「な、何でそんなのがわかるんだよ、神じゃないか」
「魔法の気配。しかもとても強い、強い者同士こそがわかるシステム」
遠回しにナルシストをしている、というツッコミは封じ込み、彩は顔をひきつらせるだけにとどめておいた。周りを見ればセシアも海斗も同じような顔をしている。
肝心のユリウスは全く気付いていない。
しばらくするとユリウスの言う通り巨大な魔法陣が全員を包んだ!?
「ま、前来たときは……一人ずつだったのに」
「今回はレキスト様の意図的なものだったからなのだろうか?」
彩とユリウスの声は虚無に吸い込まれて消えていった。
しかしその声は、その言葉は響いて全員に届いたのだという。
「んんっく……」
眼をきゅっと閉じ、ゆっくりと確認するようにセシアは目を開けた。
目の前には、それほど大きくはない水晶が置いてある。
つられて皆もゆっくりと目を開ける。そして変わらぬ景色に安堵したのだった。
「ああ~早く終わんないかな」
海斗の声は響いて渦に巻き込まれるかのように消えた。
「……この空間、なんか変じゃないか?」
彩の声も、全員に届いたその後にすぅ、と消えていった。
「そうだな……魔力の少ない者は消えてしまうようだ」
言葉の魔力も立派なほど多いのだがそれすらも吸い込まれて消えてしまったのだ。
彩はギリギリここにいることができる範囲内なのだろう。
ユリウスは余裕、海斗はまだいいというくらいでセシアは少しきついと感じている。
人間の範疇ならば腹に力を入れて消されないように踏ん張るだろう。
此処で彩が少し耐えきれなくなり魔力を結界にするかのように放出する。
「元の私ならこんなの……」
「今の彩と昔の彩は違うのだ、我も手伝う」
そしてユリウスは彩に魔力を受け渡しし、海斗もセシアに少しだけ魔力を渡す。
これで全員が感じる空間の圧迫感はほぼ同じになる。
ユリウスの魔力は彩が半分ごっそりと持っていかれており、海斗はわずかに減っただけだ。
この計算だと同じというのもありえるだろう。
そして空間が落ち着いたところで、空間の圧迫感はまた増える。
「うあっ!?」
彩が悲鳴を上げて数歩下がった。
水晶の中間あたりに元からあった光る点。
それが今一番に光っており、この場にいる全員の眼を針のように突き刺した。
光は空間を支配し、もはや水晶などみえない。
「女神は、これだけ、つよい、ということか」
信じられない圧迫感に必死に耐えながらもユリウスは声を漏らした。
この場に女神が居るということは間違いない、と証明された。
しばらくして光の強さがやや弱まり、四人はせめて立っていられる状態となった。
光っていたその一点から、息を呑むほどの美しさの女神と思われる人物が現れる。
華やかな着物、美しい肩掛け、空間に舞う長く清潔な髪。みずみずしく見る人を惑わす唇。
彼女がにこりと微笑むと、セシアとユリウスが別空間に転移される。
笑っただけで人を転移させるという超人技。
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