俺にエンジョイもチートも全否定!~仕方ない、最弱で最強の俺が行ってやろう~
第十四回 過去に近づく
前記の通り、藍はプライドが高い少女である。
仕事をしたからって自己満足をするようではない。
勉☆強。
あるのみである。
いくら二回目でも一回目と二回目では時間の差が違い、常識も変化がある。そのため、勉強は欠かせないのである。特にプライドが高い彼女にとって。
仕事は毎日しているものの、三日に一回ということになった。勉強をするために!
そんな急速な藍の決心にロナワールも付いて行けないでいる。
そして今日はロナワールが歴史について教えてくれる日だ。何故なら彼は此処にいる者の中で一番生きているのだから。常識的に当然なのだが。
ちなみに今年で五百六十年目だそうだ。
「七百年前の侵略事件、担当大魔王……ルナセス……」
魔法文庫と呼ばれる部屋の真ん中にある金で作られた机に二人は座っていた。
ロナワールが語れるのは千年前くらいの事実のみらしい。
七百年前に進んだ時、その歴史には藍が恨んでいたルナセスの名が刻まれていた。
「まあ、仕方ないわね、歴史はもういいわ。ちょっと気になることがあるの」
「ん?なんだ、応えられるなら答えよう」
藍の表情を確認し、ロナワールは答えた。
実は藍は討伐クエストをクリアしてから、ルナセスなどどうでもよくなっていた。
しかし妖術に対する感情が消えたことはないのだという。
大昔のばあやと呼ばれるグロッセスという女性が黒魔法を創り出した。
もともとは悪いことに使う気などなかったのだろう、しかし人々はそれを乱用した。
黒魔法は禁忌となり、使えなくなったために人々はそれを改造し、妖術と呼んだ。
はるかに黒魔法を上回っている妖術は、禁止することができないほど強力なものだった。
と。
ロナワールはそう教えてくれた。
藍は妖術を憎んでいるわけではない。グロッセスの気持ちの軽さを嘲笑しているのだ。
こうなることは分かっていなければいけない。魔法を作るのだから。
それでも軽い気持ちで挑んだ彼女を、藍は許すことができなかった。
リーゼルトが彼女を探しているとも知らずに。
「大魔王について、教えてもらえないかしら」
「マジか、長くなるぞ?」
「いいわよ、今日は仕事がないんだし」
ちょっと引き気味のロナワールだが、藍は気にしない。
自分の意見を曲げることはロナワールも藍も少ないのだが、ロナワールが本気を出さなければ藍の方が自分主張が強いのである。ロナワールが本気を出さなければ。
参考にするためにその辺にあった本を手に取り、ロナワールは話す準備をする。
もちろん適当に手にとったわけではなく、彼は本の配置をすべて覚えており、今手に取った五センチくらいの分厚い本にはちゃんと大魔王の歴史が書いてある。
そこの辺りもロナワールの凄さが語れる。
「まずな、オレは大魔王六代目だ」
「長いわね」
「まあな、寿命が長すぎて退屈なんだよ、だからルナセスがああなるのも無理ないんだがな」
「……そう考えたら、だわね」
時間をおいて、藍は答えた。
実際にはどう答えればいいのかを探っていただけなのだが。
「それで、一代目は世界を創った。その時は「大魔王」となんて呼ばれなかったのだがな。しかし二代目はちょっとヤバイくらいのバトルジャンキー。そこから「魔人」とか言われてな」
「二代目からやばかったのね。」
そんな藍の言葉に、ロナワールは鼻で笑った。
「三代目は何とか世界を正したが、四代目で世界破滅の危機。そして作られた帝国やら秘密機関やら大賢者やら……で、五代目はルナセス」
「世界破滅もっかいしそうね」
確かに、世界破滅はしそうだったのだろう、藍が討伐しなければ。
「でオレが六代目な」
「ああ、そう言う流れなのね」
「ほんで成り行きで前代大魔王のやったことはそのまま次代へ引き継がれるんだってよ」
「……え」
ロナワールはそう、笑顔で言った。
なにかを言おうとする藍を遮るかのように、ロナワールは席を立ち、本を戻した。
藍は彼を見つめ、神秘的な感覚を覚えた。
しばらくしてロナワールが戻ってくると、彼は藍をとある部屋の前に案内した。
「息抜きに、ちょうどいい」
あの書庫からまっすぐ行って右に曲がり、更にまっすぐ行った所にあったこの部屋。
隅っこにあり、メイドもそこを通る様子はない。ドアも古びている。
そんなに目立たない場所で、いったいどんなものを見せてくれるのか、藍は期待していた。
「よいしょ」
少々重苦しい扉を藍が開けると、そこには幻想的な情景が広がった。
ふわりと舞う香りが体を幻想に引き込み、中に入ることを強いられた。
辺り一面に広がる花畑。
壁にも、地面にも、花で埋め尽くされている。
足を踏み込むと、すぅ、とその部分の花だけが消え、そこから進むとまた花は生まれた。
「わぁ……本当に綺麗ね、どうやって作ったの?」
「部屋で栽培するというのを思いついてな、魔法でやった」
「え!?」
「成長スキルとかいうのを持ってるやつがいてな、花を成長させたり。まあとにかく作業は大変だったぜ。あんまり振り返りたくねえくらいにな」
はは、と笑いながらロナワールはこの部屋を見渡した。そうしている彼の表情はいままでよりもずっと幸せそうで、此処を愛しているのだと一目で分かった。
一方の藍もそれを察し、嬉しさを感じた。
愛するところ、それは他人に易々と見せる場所ではないのは、メイドが行き来していないことからわかる。
そんな場所を見せられるほど信頼されているということに、藍は嬉しさを覚えていたのだ。
なぜかはもちろん、分からない。
改めてもう一度この部屋を見てみる。
努力の結晶とはこのことを言うのだろう。
「これ、やるよ」
「え……?」
ロナワールから渡されたのはひとつの鍵だった。
それを見つめ、藍は呆然とした。
「この部屋の鍵だ、これからは自由に出入りができる」
「これを、私に?いいのかしら、大事な部屋なのに」
「いや、まあ、お前なら管理できるかな~って思って~」
さっきまでしっかりとしていた面影は何処に行ったのやら、情けない声でロナワールはそういった。
それを聞いた藍は思わず吹き出し、鍵を受け取った。
「これは私がちゃんと管理するわよ、どっかの大魔王さんには任せられないわ」
「ちょっ!?お前ひっでぇ!!」
と、遊びながらも今日一日は過ぎていったのであった。
(鍵、もらっちゃった♪)
藍の心には、なんとも言えない感情が宿っていた。
ロナワールが教えてくれた大魔王についてのことは、藍が密かに書いているノートにメモされていた。
そのノートに何が書いてあるかは、まだひみつである。
仕事をしたからって自己満足をするようではない。
勉☆強。
あるのみである。
いくら二回目でも一回目と二回目では時間の差が違い、常識も変化がある。そのため、勉強は欠かせないのである。特にプライドが高い彼女にとって。
仕事は毎日しているものの、三日に一回ということになった。勉強をするために!
そんな急速な藍の決心にロナワールも付いて行けないでいる。
そして今日はロナワールが歴史について教えてくれる日だ。何故なら彼は此処にいる者の中で一番生きているのだから。常識的に当然なのだが。
ちなみに今年で五百六十年目だそうだ。
「七百年前の侵略事件、担当大魔王……ルナセス……」
魔法文庫と呼ばれる部屋の真ん中にある金で作られた机に二人は座っていた。
ロナワールが語れるのは千年前くらいの事実のみらしい。
七百年前に進んだ時、その歴史には藍が恨んでいたルナセスの名が刻まれていた。
「まあ、仕方ないわね、歴史はもういいわ。ちょっと気になることがあるの」
「ん?なんだ、応えられるなら答えよう」
藍の表情を確認し、ロナワールは答えた。
実は藍は討伐クエストをクリアしてから、ルナセスなどどうでもよくなっていた。
しかし妖術に対する感情が消えたことはないのだという。
大昔のばあやと呼ばれるグロッセスという女性が黒魔法を創り出した。
もともとは悪いことに使う気などなかったのだろう、しかし人々はそれを乱用した。
黒魔法は禁忌となり、使えなくなったために人々はそれを改造し、妖術と呼んだ。
はるかに黒魔法を上回っている妖術は、禁止することができないほど強力なものだった。
と。
ロナワールはそう教えてくれた。
藍は妖術を憎んでいるわけではない。グロッセスの気持ちの軽さを嘲笑しているのだ。
こうなることは分かっていなければいけない。魔法を作るのだから。
それでも軽い気持ちで挑んだ彼女を、藍は許すことができなかった。
リーゼルトが彼女を探しているとも知らずに。
「大魔王について、教えてもらえないかしら」
「マジか、長くなるぞ?」
「いいわよ、今日は仕事がないんだし」
ちょっと引き気味のロナワールだが、藍は気にしない。
自分の意見を曲げることはロナワールも藍も少ないのだが、ロナワールが本気を出さなければ藍の方が自分主張が強いのである。ロナワールが本気を出さなければ。
参考にするためにその辺にあった本を手に取り、ロナワールは話す準備をする。
もちろん適当に手にとったわけではなく、彼は本の配置をすべて覚えており、今手に取った五センチくらいの分厚い本にはちゃんと大魔王の歴史が書いてある。
そこの辺りもロナワールの凄さが語れる。
「まずな、オレは大魔王六代目だ」
「長いわね」
「まあな、寿命が長すぎて退屈なんだよ、だからルナセスがああなるのも無理ないんだがな」
「……そう考えたら、だわね」
時間をおいて、藍は答えた。
実際にはどう答えればいいのかを探っていただけなのだが。
「それで、一代目は世界を創った。その時は「大魔王」となんて呼ばれなかったのだがな。しかし二代目はちょっとヤバイくらいのバトルジャンキー。そこから「魔人」とか言われてな」
「二代目からやばかったのね。」
そんな藍の言葉に、ロナワールは鼻で笑った。
「三代目は何とか世界を正したが、四代目で世界破滅の危機。そして作られた帝国やら秘密機関やら大賢者やら……で、五代目はルナセス」
「世界破滅もっかいしそうね」
確かに、世界破滅はしそうだったのだろう、藍が討伐しなければ。
「でオレが六代目な」
「ああ、そう言う流れなのね」
「ほんで成り行きで前代大魔王のやったことはそのまま次代へ引き継がれるんだってよ」
「……え」
ロナワールはそう、笑顔で言った。
なにかを言おうとする藍を遮るかのように、ロナワールは席を立ち、本を戻した。
藍は彼を見つめ、神秘的な感覚を覚えた。
しばらくしてロナワールが戻ってくると、彼は藍をとある部屋の前に案内した。
「息抜きに、ちょうどいい」
あの書庫からまっすぐ行って右に曲がり、更にまっすぐ行った所にあったこの部屋。
隅っこにあり、メイドもそこを通る様子はない。ドアも古びている。
そんなに目立たない場所で、いったいどんなものを見せてくれるのか、藍は期待していた。
「よいしょ」
少々重苦しい扉を藍が開けると、そこには幻想的な情景が広がった。
ふわりと舞う香りが体を幻想に引き込み、中に入ることを強いられた。
辺り一面に広がる花畑。
壁にも、地面にも、花で埋め尽くされている。
足を踏み込むと、すぅ、とその部分の花だけが消え、そこから進むとまた花は生まれた。
「わぁ……本当に綺麗ね、どうやって作ったの?」
「部屋で栽培するというのを思いついてな、魔法でやった」
「え!?」
「成長スキルとかいうのを持ってるやつがいてな、花を成長させたり。まあとにかく作業は大変だったぜ。あんまり振り返りたくねえくらいにな」
はは、と笑いながらロナワールはこの部屋を見渡した。そうしている彼の表情はいままでよりもずっと幸せそうで、此処を愛しているのだと一目で分かった。
一方の藍もそれを察し、嬉しさを感じた。
愛するところ、それは他人に易々と見せる場所ではないのは、メイドが行き来していないことからわかる。
そんな場所を見せられるほど信頼されているということに、藍は嬉しさを覚えていたのだ。
なぜかはもちろん、分からない。
改めてもう一度この部屋を見てみる。
努力の結晶とはこのことを言うのだろう。
「これ、やるよ」
「え……?」
ロナワールから渡されたのはひとつの鍵だった。
それを見つめ、藍は呆然とした。
「この部屋の鍵だ、これからは自由に出入りができる」
「これを、私に?いいのかしら、大事な部屋なのに」
「いや、まあ、お前なら管理できるかな~って思って~」
さっきまでしっかりとしていた面影は何処に行ったのやら、情けない声でロナワールはそういった。
それを聞いた藍は思わず吹き出し、鍵を受け取った。
「これは私がちゃんと管理するわよ、どっかの大魔王さんには任せられないわ」
「ちょっ!?お前ひっでぇ!!」
と、遊びながらも今日一日は過ぎていったのであった。
(鍵、もらっちゃった♪)
藍の心には、なんとも言えない感情が宿っていた。
ロナワールが教えてくれた大魔王についてのことは、藍が密かに書いているノートにメモされていた。
そのノートに何が書いてあるかは、まだひみつである。
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