俺にエンジョイもチートも全否定!~仕方ない、最弱で最強の俺が行ってやろう~
第七回 藍の強さを知れ
またも約一日の時を得た。
魔物たちは藍とロナワールが交代で500体辺りを消滅させている。
全然本気は出していないのである。
そして、魔物の数が足されたのが今日。
残り約500体の魔物が足されて約700体に増えてしまった。
しかもそのうち200体がSSSランクだというのだ。さすがにそれはロナワールにも難しいらしい。殺せるが体力の消費が激しいのだという。
それを集めたのはシアンとユノアだと斥候は言っている。
「戦術級魔術はできればシアンが来るまでに残しておきたい、あいつは必ずオレを狙うからな」
「……」
ロナワールの言葉に藍が黙った。その表情は憐れむものでも、心配でもなかった。
考え事をしているそれだった。
しばしして、藍は脳内で答えを出した。
「私に任せて。戦術級なら私でもできるわ」
「ユノアとシアン以外の者の始末はどうするんだ?」
「大丈夫よ、進化したスキルを一度だけ打てばいいのだから」
それを聞いたロナワールは一度考え込み、ため息をついて答えを出した。
「全く……分かったが、無茶はするな」
それを聞いた藍の目は瞬時にぱあああと輝いた。
サタンもフェーラも、空気と化しその情景を見守っていた。
「大魔王様!魔物が突進してきます!すべてが、です!」
「そうか、下がれ」
その時、斥候がまたも帰ってきた。彼の話によると700体のSランク超えの魔物が全て突進してきたらしい。
すでに計画を立て終わっていた彼らが怯むことはなかった。
むしろ笑っていたのだ。
「ラン、行け」
「分かったわ。待っていなさい……!」
藍は手首までの黒い手袋をつけると、背を向けてテントから出る。
その髪が大きく揺らめき、さらりと音を立てた。
手袋をつける原因は魔力の暴走を抑えるため。ロナワールによると、魔力を凝縮させ、漏れないようにする魔術式が組み込まれているのである。
土がまくり上げられている。
近いとも遠いとも言えない位置で、魔物たちが唾を飛ばしながら向かってきている。
先頭に立つのはSSSランク約二百体。
一度一人で、自分に向かって頷いて、藍は掌を魔物らに向けた。
『漆黒なる藍色の瞳』
冷静に、一度目を閉じて、藍はそうつぶやいた。
両手をカメラ状にし、目に当てる。
黒い赤みのかかった光の中には、藍色の電撃が加わっていた。明らかに強くなった威力に、藍も付いていけていない。
唇から一筋、血があふれ出す。
それと同時に、光が発射される。まるで藍の意志の沿うかのように光は広がり、全ての魔物を覆いつくした。
藍の髪が舞う。テントから出た時よりも強く、美しく、荒く。
今の藍の実力はロナワールの三分の一。千単位と万単位の中心辺りの実力は持っている。
「終わったかしら?」
口についた血をふき取り、藍は現場を凝視する。煙が消える。
魔物は一体残らず、全て消え去っていた。
「あ……あぁ……本当に……」
その向こうで、膝から崩れ落ちた人影を、藍は見逃さない。
後方からその様子を、サタンとフェーラは見ていた。
「す、すざまじい……」
「進化に加え、一日ほどの鍛錬、無駄ではありませんでしたね♪」
終わったのを見て、サタンとフェーラは身体強化をして藍に駆け寄った。
藍はそれを見て微かに首を振った。
「まだよ、まだだわ」
「どうしましたか??」
それには答えずに、藍は振り返って、一点を見つめた。
魔物の中心辺りに見えるライトブルーの肩にかかる髪の少女。
少女は藍の姿を認めると、震えるように手を後ろについた。
「行くわよ」
「あ。分かった」
足に強化をし三人で浮く。
そして力を入れると、前に進んだ。
地面に足が付くとともに、少女の目の色はどんどん恐怖に染まった。
「貴方は、敵なの?」
「……っつ」
藍がそう問いかけた瞬間、少女は諦めたように頷いた。自分では彼女に勝てないとわかったからだ。
サタンとフェーラは驚いたように問いかけた。
「ユノア……??」
「ユノアさん!?ユノアさんですよね!」
「サタン……フェーラ……」
フェーラは少女、ユノアと呼ばれた彼女の肩を揺さぶり、叫んだ。
ユノアはつぶやくようにそう言った。
藍は彼女がロナワールの元部下だと認識した。しかし、どうしても彼女が許せなかった。
以前ならばこんな感情はないはず。そもそも藍からは感情が消えたはずである。
しかし、なぜ……。
「こっ、降参します、だっ、だから、殺さないで下さい……」
サタンとフェーラをも見てか、ユノアは完全に諦め、降参を示した。
しかし、戦力をひとり剃っただけである。前途多難なのは変わらない。
ひとまず、ロナワールのもとへ戻ることにした。
ユノアを縛るということはせずに。
それは元部下ということにかねて、フェーラとサタンが藍に頼んだのだ。
「ん、終わったか……って、はぁっ!?どっどうやったんだ!?」
入ってきた藍たちをみて、ロナワールは盛大に驚き、ユノアを指さした。
咎めたりする様な感じはしない。むしろ楽しんでいるようだった。
ユノアは反省し、頭を下げている。
「ロナワール様、すみません、私……」
目を潤わせながらそう言ったユノアに、ロナワールは肩をすくめ、そして微笑んだ。
「良いんだ、戦いはしたくない。戻ってくれれば、それだけで助かる……」
「ホントに、そんな発言が、私は好きなんです。もう、何で裏切ったのかな……?」
涙をこぼしながら、ユノアは笑った。
ロナワールも笑い返した。
サタンもフェーラも楽しそうにユノアの肩に手を乗せた。
暗いあそこよりはよほどいい、ユノアはそう言った。ロナワールはその言葉に喜んでいた。
……その様子が、藍には遠く見えた。
心がちくりと痛む。
(好き……)
ユノアが言ったその言葉が、何度も脳内で再生される。
再生するたびに、心が痛い。
その正体は、残念ながらわからない。放っておきたい、しかし放っておけない。
生まれて初めて、藍はそんな複雑な気持ちに襲われた。
(どうして心が痛むのかしら……?)
藍は唇をかみしめ、何とかロナワールたちのトークに笑顔で入っていった。
ただ一人、藍のそれにうっすらと気付いた者がいた。
(ランさん、早く気付いてください♪)
彼女は一人でニヤニヤと笑っていた(・∀・)ニヤニヤ
魔物たちは藍とロナワールが交代で500体辺りを消滅させている。
全然本気は出していないのである。
そして、魔物の数が足されたのが今日。
残り約500体の魔物が足されて約700体に増えてしまった。
しかもそのうち200体がSSSランクだというのだ。さすがにそれはロナワールにも難しいらしい。殺せるが体力の消費が激しいのだという。
それを集めたのはシアンとユノアだと斥候は言っている。
「戦術級魔術はできればシアンが来るまでに残しておきたい、あいつは必ずオレを狙うからな」
「……」
ロナワールの言葉に藍が黙った。その表情は憐れむものでも、心配でもなかった。
考え事をしているそれだった。
しばしして、藍は脳内で答えを出した。
「私に任せて。戦術級なら私でもできるわ」
「ユノアとシアン以外の者の始末はどうするんだ?」
「大丈夫よ、進化したスキルを一度だけ打てばいいのだから」
それを聞いたロナワールは一度考え込み、ため息をついて答えを出した。
「全く……分かったが、無茶はするな」
それを聞いた藍の目は瞬時にぱあああと輝いた。
サタンもフェーラも、空気と化しその情景を見守っていた。
「大魔王様!魔物が突進してきます!すべてが、です!」
「そうか、下がれ」
その時、斥候がまたも帰ってきた。彼の話によると700体のSランク超えの魔物が全て突進してきたらしい。
すでに計画を立て終わっていた彼らが怯むことはなかった。
むしろ笑っていたのだ。
「ラン、行け」
「分かったわ。待っていなさい……!」
藍は手首までの黒い手袋をつけると、背を向けてテントから出る。
その髪が大きく揺らめき、さらりと音を立てた。
手袋をつける原因は魔力の暴走を抑えるため。ロナワールによると、魔力を凝縮させ、漏れないようにする魔術式が組み込まれているのである。
土がまくり上げられている。
近いとも遠いとも言えない位置で、魔物たちが唾を飛ばしながら向かってきている。
先頭に立つのはSSSランク約二百体。
一度一人で、自分に向かって頷いて、藍は掌を魔物らに向けた。
『漆黒なる藍色の瞳』
冷静に、一度目を閉じて、藍はそうつぶやいた。
両手をカメラ状にし、目に当てる。
黒い赤みのかかった光の中には、藍色の電撃が加わっていた。明らかに強くなった威力に、藍も付いていけていない。
唇から一筋、血があふれ出す。
それと同時に、光が発射される。まるで藍の意志の沿うかのように光は広がり、全ての魔物を覆いつくした。
藍の髪が舞う。テントから出た時よりも強く、美しく、荒く。
今の藍の実力はロナワールの三分の一。千単位と万単位の中心辺りの実力は持っている。
「終わったかしら?」
口についた血をふき取り、藍は現場を凝視する。煙が消える。
魔物は一体残らず、全て消え去っていた。
「あ……あぁ……本当に……」
その向こうで、膝から崩れ落ちた人影を、藍は見逃さない。
後方からその様子を、サタンとフェーラは見ていた。
「す、すざまじい……」
「進化に加え、一日ほどの鍛錬、無駄ではありませんでしたね♪」
終わったのを見て、サタンとフェーラは身体強化をして藍に駆け寄った。
藍はそれを見て微かに首を振った。
「まだよ、まだだわ」
「どうしましたか??」
それには答えずに、藍は振り返って、一点を見つめた。
魔物の中心辺りに見えるライトブルーの肩にかかる髪の少女。
少女は藍の姿を認めると、震えるように手を後ろについた。
「行くわよ」
「あ。分かった」
足に強化をし三人で浮く。
そして力を入れると、前に進んだ。
地面に足が付くとともに、少女の目の色はどんどん恐怖に染まった。
「貴方は、敵なの?」
「……っつ」
藍がそう問いかけた瞬間、少女は諦めたように頷いた。自分では彼女に勝てないとわかったからだ。
サタンとフェーラは驚いたように問いかけた。
「ユノア……??」
「ユノアさん!?ユノアさんですよね!」
「サタン……フェーラ……」
フェーラは少女、ユノアと呼ばれた彼女の肩を揺さぶり、叫んだ。
ユノアはつぶやくようにそう言った。
藍は彼女がロナワールの元部下だと認識した。しかし、どうしても彼女が許せなかった。
以前ならばこんな感情はないはず。そもそも藍からは感情が消えたはずである。
しかし、なぜ……。
「こっ、降参します、だっ、だから、殺さないで下さい……」
サタンとフェーラをも見てか、ユノアは完全に諦め、降参を示した。
しかし、戦力をひとり剃っただけである。前途多難なのは変わらない。
ひとまず、ロナワールのもとへ戻ることにした。
ユノアを縛るということはせずに。
それは元部下ということにかねて、フェーラとサタンが藍に頼んだのだ。
「ん、終わったか……って、はぁっ!?どっどうやったんだ!?」
入ってきた藍たちをみて、ロナワールは盛大に驚き、ユノアを指さした。
咎めたりする様な感じはしない。むしろ楽しんでいるようだった。
ユノアは反省し、頭を下げている。
「ロナワール様、すみません、私……」
目を潤わせながらそう言ったユノアに、ロナワールは肩をすくめ、そして微笑んだ。
「良いんだ、戦いはしたくない。戻ってくれれば、それだけで助かる……」
「ホントに、そんな発言が、私は好きなんです。もう、何で裏切ったのかな……?」
涙をこぼしながら、ユノアは笑った。
ロナワールも笑い返した。
サタンもフェーラも楽しそうにユノアの肩に手を乗せた。
暗いあそこよりはよほどいい、ユノアはそう言った。ロナワールはその言葉に喜んでいた。
……その様子が、藍には遠く見えた。
心がちくりと痛む。
(好き……)
ユノアが言ったその言葉が、何度も脳内で再生される。
再生するたびに、心が痛い。
その正体は、残念ながらわからない。放っておきたい、しかし放っておけない。
生まれて初めて、藍はそんな複雑な気持ちに襲われた。
(どうして心が痛むのかしら……?)
藍は唇をかみしめ、何とかロナワールたちのトークに笑顔で入っていった。
ただ一人、藍のそれにうっすらと気付いた者がいた。
(ランさん、早く気付いてください♪)
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