俺にエンジョイもチートも全否定!~仕方ない、最弱で最強の俺が行ってやろう~

なぁ~やん♡

第二十三回 お☆と☆ま☆り~性格が合わない~

「それじゃぁ、リーゼルト君たちは三階を使ってください。わたくしとリオン様は四階に居ますので、何かあればお呼びください。」
「あぁ、分かったです。」

此処は三階の長い廊下を通った部屋の前。
話していたのはケリアン。それに中途半端な敬語で答えたのはリーゼルトだった。
そしてケリアンとリオンはそのまま四階に行く。
残されたのは、俺、レスナ、ネルタリー。
ビックレの話だと、部屋はベッドが三つ置いてあり、真ん中に大きな机があるという。

「さて、入るとするか……」

そう言ったのはレスナだ。見かけにはよらず、一番泊まりたかったのはレスナだと俺は定めている。
長い付き合いとは言えないが、表情を見て何が言いたいか伝わる仲にはなったと俺は思っている。
一方のレスナも、きっと同じことを思っているだろう。
もしも思っていないのなら……ということは考えないことにした。

「う、うへぇっ」

部屋に踏み込んで、頭を上げた俺が見たのは引きこもりには初めての光景であった。
今までの通った場所よりもずっと高級な部屋。

一面に敷かれた花模様の絨毯。レースのカーテンが二つ。大きなベッドが右側の壁に沿って三つ、掛布団にはラビットの毛が使われているらしい。
そしてど真ん中には日本で言う桂の木で作られた机がある。その机には羽根の形をしたペンが、黒いインクの中に刺さっていた。そしてその上の棚には本が並べてある。
そしてベッドの横と左側の壁に、茶色の柔らかそうなソファーが置いてあった。
天井には様々な装飾があり、どれも一言では述べにくい美しさだった。

それは絶景であり、元引きこもりは絶句している。
日本では稀にみられない情景だろう。
レスナはこの部屋の装飾を認めるように頷いた。それを見てネルタリーは自慢げに胸を張っている。
そして部屋にはいっていく俺たちだが、小さなハプニングは起きた。

グー。

「……」
「はぁ……」

鳴ったのは俺のおなかだ。
あんなに戦って体力を消費したのに、今まで何も食べていないのだ。まぁそれは許せるだろう。
それを承知で、レスナは何も注意せず、ため息をついた。

「シアノンの弁当、食べるか」

俺はレスナにそう言った。
レスナは頷き、自分のカバンを触って弁当を出す。

「少し傾いているようだが、中は無事だ。二段弁当箱か……一段ずつな」
「なんだよレスナもお腹すいてんじゃねぇか」

俺は意地悪そうにレスナに向かって笑う。実際嫌味でやったのだが。
弁当箱は可愛い花柄だった。此処のものと比べると比べ物にもならないし比べたら逆にかわいそうだ。
庶民の目で見て、可愛い。ということだ。

そしてそれを不満そうに見ている者がいた。

「他人の作ったものですのね?」
「……あぁ、友人のシアノンが。」

「リーゼルト、これを束縛というんだぜ」

暗い目で尋ねるネルタリー。少し戸惑いながら答える俺に、レスナは小声で耳打ちをする。
小説ではよくある事。しかし体験することになるとは。
ちゃんと、話を、つけなければ。

「だめですわ。すぐにわたくしが作り直しますわ」
「……」
「おいおい、やべーって、早く断れよ」

レスナはさっきから小声で俺に話しかけている。

「了解。」

俺もネルタリーに聞こえないくらいの小声でレスナに言う。
今こそヤンキー雰囲気を出すべき時。
いつか言っただろう。この俺に権力も身分も関係ないと。

俺が暗い顔でネルタリーを振り返ると、彼女の肩がビクッと震えた。
町一番のヤンキーが出すオーラは、だてなものではなかった。

「……そこまで束縛するのは止めてくれないか?」
「っ……」

「よ、よく言ったリーゼルト。さ、さぁ弁当食べようぜ!」

レスナは自分の声を小声から普通の声に変え、弁当箱を一段ずつに分け、俺に渡した。

「でっ、では箸をお持ちいたします」

そばでその修羅場を見ていたメイドが慌ててドアを開け、キッチンに向かった。
これは素人が見ても分かる。
強者を見たときの、震えと恐怖の表れだ。しかし彼女は貴族のメイド。逃げたということは感じさせたものの、恐怖と震えを表情や体に表すことはなかった。

「お持ちいたしました。」

しばし経って、メイドは奇妙な模様が彫られている箸を二膳持ってきた。
そしてそれを俺たちに渡したことを確認すると、すぐにドアの傍に移動し、姿勢よく立った。

俺たちはその美しい動作に見惚れている余裕はなく、その箸で弁当を貪り始めた。

「さすがシアノンうめぇー!」
「やっぱりシアノンは天才だな」

と口々に褒めながら、弁当は底を見せていく。
そして弁当箱の中身は完全に無くなった。
横ではネルタリーが悔しそうにこちらを見ている。しかし、俺たちにそれは見えなかった。

一方こちらは四階。

「あー、こういうの可愛いですよね!」
「えぇ、わたくしもこれがお気に入りなんです。」

女子力が高いふかふかした部屋で、サテラとケリアンはひとつの青いイヤリングを見つめていた。
一つ一つの模様がきらきら輝いていて、耳に着けたらきっとイヤリングの方が目立つだろう美しさだ。

「あと、このネックレスもなのですよ。」
「あぁー!私が欲しかったやつですこれ!いいですねー……」

次にケリアンが取り出したのは翡翠のネックレスだ。ライトグリーンに少し黒みがかかった翡翠。
昔サテラが欲しかったが手に入れることができなかったものだ。

「んー、ババ抜きしませんか?」
「ばば、ぬき……?」
「はい、ババ抜きというのは……」

ババ抜きというのは地球の知識なのだが、サテラはそれをケリアンに教え込んだ。
このゲームはサテラが地球の勉強をしている際に最も気に入ったものである。
ブラックホールを起動させ、そこからトランプを出した。

「珍しいスキルですねぇ……さすが賢者です。」
「これ……ギフトでもらったスキルなんですよー」

と駄弁りながらも、トランプ装着完了!

「あと三枚になっちゃいました」
「後二枚になっちゃいました」

ケリアンはそろったものを抜いていくと、残ったものは二枚と、ジョーカー。
サテラは後二枚になった。

「それ!そろいましたよ!」
「…えぇ。」

ハートの六が二つ。そろったものは地面に出す。

「そr……ジョーカーでした……」
「ふふふ」

サテラはがっかりしたようにジョーカーを眺める。

「それっ!そろいました、わたくしの勝ちです!」
「ケリアンは初めてなのに……」

ケリアンが勝った。
初めてというのが一番慎重であるため、勝ちやすい。
というのは異世界でも変わらなかった。

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