俺にエンジョイもチートも全否定!~仕方ない、最弱で最強の俺が行ってやろう~

なぁ~やん♡

十七日目~約三十五日目(第十一回) 何故ですか……?

「どうして、また……?」
「わかりま、せん……」

ここは救急医療室。
彼らにとって、二回目であろう場所だ。
暗い顔をしているサテラに、シアノンは唇を噛んだ。

「何か知ってる!リオン様は絶対に、なにか、しっているわ……お願い。彼を、たすけてあげて……」
「っ…つ!……ごめんなさ、い」

シアノンは「助けてあげて」とサテラの耳元で小さく囁き、髪を揺らして、後ろを向いてから苦く悲しい笑みを浮かべてその場を去った。
残されたサテラはその場に崩れ落ち、ひたすら涙をこらえた。
そして、それを壁に隠れてみていた人物がいた。

「サテラちゃん。すまないよ……まだ計画は、続いているんだ…」
「何私情入れてんだよ!任せたって準隊長サンに言われただろうがよぉ!なぁ、レスナァ?」
「っ………はい、準査隊長。すみませんでした。」

――――――――――――――――――――――――――――――☆

「くっ!」

起きたら、そこは知った天井だった。
だいぶ最近に来たところ、救急医療室……。
そして少しだけ不思議な思い出が残った場所だ。

「ケッ!もうここには来たくねぇや……」

そう言って俺はベッドから降りようとした。
ふと、思ったことがある。
――――――――――――計画、フラグ、襲撃、スパイ、組織……。
嫌な予感しかしない単語だが、何かがつながる。
もしもその計画が俺に対するものならば。
もしも今までで数えきれないほどのフラグが発生しているのならば。
襲撃も、スパイも、組織も、どこかの計画だ。
そして。それは無限ループになるだろう。
まだ少し難しく、ごちゃごちゃしているが、少しこの世界がわかった気がする。
俺が特別だってことだけは。

「くっそ。この点滴地味に邪魔だな……」

腕に針が刺さっている。点滴っすね。
これを外したら命の危機……ってことはないと思う。
外しても良いとは思うが、固い、痛い、外せん。
――――――――――――仕方がない。このまま行こう。

俺は点滴が刺さったまま移動することにした。
サテラに用がある。もっといいろいろ、聞きたいんだ。

「うわっ……俺体力ねぇな。」

長い間寝ていたからだろうか、体がなまっているようだ。俺はベッドにゆっくりすわって少し考えた。

レスナのステータスとか、非常に興味がある。なんせサテラの上官なんだ。興味がありすぎる。
何処で知ったのか。
多分この前だろう。そういえば……。
『さすがにニンゲンが魔物の技を受けて、異常がないはずがなかったか…?』
『えぇ、私の不注意ですね。———————————隊長』
レスナがサテラの上官だと思う理由は3つのある。
その一は敬語で話していたから。でもそれはサテラの癖だ。まだそれで特定はできない。だがそれにプラス、「隊長」と言っていたからだ。そしてもうひとつ。サテラの雰囲気が違う。

聞きたいことなら山々だ。
だから、サテラとレスナを探しに行く……。

「うわぁ……」

余りに体力の無い自分にため息をつく。
この時間帯で俺は何をされたのか……また分析してみよう。

もし、レスナの方が上官なのなら、彼の言うことには従わなければならない。
そしてもしもサテラが本当に優しい性格なのならば……陰で魔法を使ってくれたのではないか。
けどよ……俺の身体能力を落として何の意味があるんだよ?

分析した。
何にもわからなかった。まず基本の事すら何も知らない。
俺……何も知らなかったんだろうなぁ…。
生きてた頃とは大違いになった俺の手を、じっと見つめた。
ヤンキー、怖い、近づきたくない、不良。
そんなイメージだった俺。心の中で否定し続けたんだ。やっと少し、変われたと思ったんだがなあ……。

「だが、こんなんじゃ動けねぇぞ?」

俺は考え込んだ。此処から動くには、どうすればよいのか、全く考えつかなかった。
――――――――――――僕が力を貸してあげようか?
――――――――――――あんだってぇ?
あいつだ。フラグが何とか言ってきたやつの声が、また俺の頭の中に響く。
その感触は気持ちの良いものではなかった。
――――――――――――いつもサテラに貸してもらっているから、魔法の貸し借りは慣れているよね?
――――――――――――……貸したことなんざぁないがな。
――――――――――――はは。そうだったね。じゃぁ、めんどくさいから始めちゃうよ。
――――――――――――……ショージキ不安。
――――――――――――……僕を信じて。僕は、、君なんだから。
彼はまた意味の分からない言葉をつぶやく。
――――――――――――さっさと始めてくれ。
――――――――――――『身体能力増強!』……あれ、軽いロックがかかってた。
――――――――――――はぁ?
――――――――――――あ、ううん。何でもない。いってらっしゃい。
そう、彼は言って、脳内に声は聞こえなくなった。

「うぉ」

妙に体が軽い。恐らくさっきの魔法が効いたのだろう。
サテラより、レスナより、彼は強いことが確信された。
魔法の流れ、個人的に合わさった魔法の強さや度合い……俺はサテラとレスナの魔力オーラを見たことがある。
それに比べてみると恐らくそれをはるかに上回るだろう。

さて、考えるのはおしまいだ。行かなければ。

「ふぁ!?」

ドアを開けると、サテラとレスナがそこにいた。
二人とも暗い表情をしている。

「な、なぁ、リオン。あのさ、聞きたいことが、あるん……だけ……」
「すまない」

閉じる瞼に逆らって、何とか俺はレスナを見上げた。
彼は人指し指をあげて、俺に向かって魔法を放っていた。

「オレの特別スキル「催眠魔法」だよ……準人君。本当にすまない…………」
「……」

俺はゆがんだ表情をしながら倒れていく。
残された気力で俺は言った。

「何故……ですか……?」

それは今まで俺が聞きたかったことと、
今の行動についての質問でもあった。
そして俺はまた深く眠る――――――――――――――――――――——————————。

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