戦慄☆ めたるぞんび先生!
めたるなぞんび!
「ヤナセ君、こちらが、今度君が担当することになる小説家の、めたるぞんびさんだ」
と――
先輩編集者から紹介された瞬間、僕は言葉を失った。
先月、新卒の僕が入社できた先は、大手出版社のライトノベル部門、『MZ文庫』だった。MZ文庫はまだまだ新しいレーベルで、お抱え作家といえば一人しかいない。
その作家こそが、速筆多作の小説家にしてイラストレーターも兼業する、めたるぞんび先生だ。もちろん僕も大ファン! そんなすごい作家さんに、新卒早々担当に着けるだなんて!!
僕はそれを聞いた瞬間から、歓喜と緊張で記憶が飛んでいる。
先輩に手を引かれるようにして、ようやっとこの、めたぞん先生の自宅までたどり着いたんだ。売れっ子作家のご自宅訪問。僕は本当に舞い上がっていた。
つい、さっきまでは。
「めたぞん先生。交代で担当することになった、ヤナセ君をお連れしました」
「ギギ……ギィ」
先輩の声にふりむく小説家。
なにか、鉄錆くさい匂いがする――ミステリーでこの描写が入ると、そこに血まみれの死体があるのが定石だが、今回ばかりはきっぱりと鉄が錆びてる匂いであった。
めたるぞんび氏の首から、ポロポロと赤茶色の粉が落ちる。
あーあ、と先輩は呟いた。
「まいったな、またサビが浮いてきちゃった。おいヤナセ、ちょっとそこのバイク屋でオイル買ってきてくれ」
「ちょ――ちょっと――まって。待ってください」
「なんだ、もちろん経費で出すぞ。領収書を忘れるなよ」
「そういうことじゃないっ!」
僕は絶叫した。
「これは! これはどういうことなんですか! なんでめたるぞんび先生が、ファンからの愛称『めたぞん』が! MZ文庫の代表的小説家兼イラストレーターが!! ぼろぼろで腐りかけた金属製のロボットなんですかあああっ!?」
「ギギイ……」
首をかしげるボロロボット。
当然そんな所作でも、錆の粉が零れ落ちる。蛇腹ホースのような首が動くたび、臼で粉を引くように、隙間の錆があふれてくるのだ。
身長は僕の半分ほど。正方形の頭、長方形の体、蛇腹の首と手と足、『C』の形をした手指に、カマボコみたいな足先。
塗装らしいものはなく、全身がくすんだ銀色で、目と胸元にはランプが入っている。
ああ、もうまさにロボット。どこからどう見てもロボット。
あまりにもわかりやすく典型的なロボットすぎて、イマドキの子はもうロボットと認識しないじゃないかってくらいにレトロなロボットがそこにいた。
わななく僕に、先輩は笑った。にこにこしながらこともなげに。
「なに驚いてる。当たり前だろう? めたるぞんびって名乗ってるんだから、そりゃぁメタルなゾンビさ」
と――
先輩編集者から紹介された瞬間、僕は言葉を失った。
先月、新卒の僕が入社できた先は、大手出版社のライトノベル部門、『MZ文庫』だった。MZ文庫はまだまだ新しいレーベルで、お抱え作家といえば一人しかいない。
その作家こそが、速筆多作の小説家にしてイラストレーターも兼業する、めたるぞんび先生だ。もちろん僕も大ファン! そんなすごい作家さんに、新卒早々担当に着けるだなんて!!
僕はそれを聞いた瞬間から、歓喜と緊張で記憶が飛んでいる。
先輩に手を引かれるようにして、ようやっとこの、めたぞん先生の自宅までたどり着いたんだ。売れっ子作家のご自宅訪問。僕は本当に舞い上がっていた。
つい、さっきまでは。
「めたぞん先生。交代で担当することになった、ヤナセ君をお連れしました」
「ギギ……ギィ」
先輩の声にふりむく小説家。
なにか、鉄錆くさい匂いがする――ミステリーでこの描写が入ると、そこに血まみれの死体があるのが定石だが、今回ばかりはきっぱりと鉄が錆びてる匂いであった。
めたるぞんび氏の首から、ポロポロと赤茶色の粉が落ちる。
あーあ、と先輩は呟いた。
「まいったな、またサビが浮いてきちゃった。おいヤナセ、ちょっとそこのバイク屋でオイル買ってきてくれ」
「ちょ――ちょっと――まって。待ってください」
「なんだ、もちろん経費で出すぞ。領収書を忘れるなよ」
「そういうことじゃないっ!」
僕は絶叫した。
「これは! これはどういうことなんですか! なんでめたるぞんび先生が、ファンからの愛称『めたぞん』が! MZ文庫の代表的小説家兼イラストレーターが!! ぼろぼろで腐りかけた金属製のロボットなんですかあああっ!?」
「ギギイ……」
首をかしげるボロロボット。
当然そんな所作でも、錆の粉が零れ落ちる。蛇腹ホースのような首が動くたび、臼で粉を引くように、隙間の錆があふれてくるのだ。
身長は僕の半分ほど。正方形の頭、長方形の体、蛇腹の首と手と足、『C』の形をした手指に、カマボコみたいな足先。
塗装らしいものはなく、全身がくすんだ銀色で、目と胸元にはランプが入っている。
ああ、もうまさにロボット。どこからどう見てもロボット。
あまりにもわかりやすく典型的なロボットすぎて、イマドキの子はもうロボットと認識しないじゃないかってくらいにレトロなロボットがそこにいた。
わななく僕に、先輩は笑った。にこにこしながらこともなげに。
「なに驚いてる。当たり前だろう? めたるぞんびって名乗ってるんだから、そりゃぁメタルなゾンビさ」
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