死神始めました

田中 凪

第90話 忘れ去られていた者達のエピソード

ユーリナム
うーん。このごろ定時連絡をしてもあまり返信がこないな。具体的な指示がなければ作業ができないな。ユーリナムはそう思っていた。一度オルドリッジ公国に戻るとしよう。機密文書が手元にあるしな。これは、この帝国を揺るがす内容が書かれていたしな。この、すまぁとふぉんでめーるなどだけで済ませることのできない内容だ。久々に同胞達に会いたいし、具体的な内容の仕事も来ないしいいだろう。
そう思い彼はキャンピングゴーレムに乗り込む。これはもちろん浩太が開発したもの(ゴーレム)だ。目的地を設定すれば自動ではしる。水や食料、衣類などをいくら積んでも浩太のもつ『アイテムボックス』が付与されているので食料不足になるといった心配はほとんどしなくていい。さらに、任意で周囲に溶け込むことのできる光学迷彩付きだ。見つからないので移動も楽々で、寝ていても大丈夫な優れものだ。
しかし、浩太様はすごいな。これだけのものをつくり、さらに別のものも開発している。浩太様って一体何者なのだろうか?知りたいな。
その後彼は、思わぬところで浩太の正体を知ることとなる。のだがこれはまた別の機会に


元帝国兵兵長サバル=バルスコフィン
ここはいい。彼はそう思っていた。軽めの仕事に、朝、昼、晩、と三度の食事がしっかりあり、なおかつ兵士達は皆一人一部屋(10畳ほど)が与えられている。
ただ、慣れないのがお風呂だ。なぜ湯で体や頭を洗わねばならんのだろうか?今でもかなり不思議に思っている。だが、辛いこともある。週に一回訓練を行うことだ。なぜならただひたすらに戦車や戦闘機、戦艦と、呼ばれるものに乗り魔物を殺していく。それを1時間以上も繰り返すのだ。俺はそれでも帝国にいた時よりもマシだと思っている。向こうでは1日一食で厳しい訓練そして、街の見回り時間が長い。といったところだ。それに比べればかなり楽だ。帝国にいなくてよかった。彼はそう日記に書き記していた。そしてついに実戦が初めて行われた。相手は魔物の軍勢だ。
「こ、これ程とは」
彼は報告を受けて驚愕する。十万を優に超える、軍勢なのだから。だが、彼らの新たな主は変わらず余裕の表情だった。
数時間後戦闘が終わった時には誰もが勝てないと思っていたのに勝ったので、大いに喜んだのだった。

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