魔法陣を描いたら転生~龍の森出身の規格外魔術師~
51 依頼板
俺たちはギルドのノルマを達成するために依頼を探していた。
受付の隣の壁には大きな板がある。そこには様々な依頼の案内書が掲示されていて、冒険者はここから自分の条件にあった依頼を選び仕事をする。この板を通称「依頼板」と呼ぶ。
依頼板の周りにはたくさんの冒険者が集まっていた。良い条件の依頼はすぐに取られてしまい、微妙な依頼ばかりが依頼板に残る。
「ユーリくん、あれは?」
「うーん」
「ユーリ様、これはどうですか?」
「うーん」
ノルマをクリアするだけなら、手持ちのお金が十分ある今は簡単なものでも良いのだろうけど……。
それではつまらないと思ってしまう俺がいる。
「ユーリ様」
「面白そうな依頼見つかった?」
「いえ、そうではないですが、どうやら受付で自分に合った依頼を見つけてもらえるらしいですよ」
視線をリリーから受付に移すと、そこには長蛇の列ができていた。
「あれに並ぶの?」
「そうみたいです……」
2人合わせて微妙な顔になる。
「まぁ、このまま依頼板で探しても時間がかかりそうだし並んで待つとするか」
「そうですね!」
「ねぇねぇ! ユーリくん、これは……って置いてかないでよぉ〜」
列の最後尾に向かう俺とリリーの後を慌ててセレーナが追いかける。
追いついたセレーナは頬を膨らませて、俺の腕に抱きつく。
「置いてくなんてひどいよっ」
「ごめんね、ついて来てると思ってたからさ」
「それなら、わたしが一緒だってわかるように手を繋いで」
そう言ってセレーナは俺に右手を差し出す。
照れくさい気持ちを感じつつ、俺はセレーナの手をぎゅっと握る。
「ユーリくん、顔が赤いよ? どうしたの?」
「な、何でもないよ」
俺は正直にドキドキしているなんてことは言えず、セレーナの顔もまともに見れないでいる。
手を繋いでいるだけなのに……こんなに心臓が爆発しそうで、嬉しくもあり、恥ずかしくもあるのは何でだ!?
「そう? でも、手を繋いだの久しぶりだね」
セレーナの顔を見ると、少し耳が赤くなっていた。
そんなセレーナを見て、俺はクスッと笑ってしまう。
「何で笑ったの! わたし変なこと言ってないよね?」
「いや、セレーナが可愛いなって」
セレーナの顔が一気に赤くなる。
自分だって照れてるのに、手を繋ぎたがるなんてセレーナは本当に可愛いな。
「……ユーリ様、セレーナさん、前進んでます」
リリーに言われて、俺とセレーナは慌てて列を詰める。
(あ、それでも手は離さないんですね)
「ん? どうした?」
「いえ、何でもありません。僕は十分に幸せオーラを分けて頂いているので……」
幸せ……オーラ?
よくわからないが、リリーが神妙な面持ちになっているため、あえて触れないことにする。
それからしばらくして、俺たちの順番が回ってきた。
「お待たせしました。ギルド証の提示をお願いします」
かなりの件数を対応していても、それを感じさせない笑顔で受付をするギルド職員のお姉さんに、俺は感心しつつギルド証を見せる。
プロってこういう人を言うんだろうな……。
ついマジマジと受付のお姉さんを見ていると、お姉さんと目が合う。
お姉さんはニコッと笑って再び処理を続ける。
「……ユーリくん、ジロジロ見過ぎ」
セレーナが小さな声で言う。その目は少し怖かった。
心なしか握る手の力が強くなっている。
うん、セレーナが怒ってる。
俺はどう宥めるか、助けを求めてリリーを見る。
しかし、リリーは微笑んでいた。
(セレーナさん、怒っていても手は離さないんですね)
ダメだ……あの表情は諦めろという意味なのか? リリー……。
それにしても驚くくらい優しい表情だったな。
そんなことを考えていると、受付のお姉さんからギルド証を返される。
「ユーリ様、ありがとうございました。ギルド証をお返しします」
ギルド証を受け取ると、お姉さんが「少々お待ちください」と言って席を離れてしまった。
俺たちは顔を見合わせて「?」を浮かべる。
何か問題でもあったのかな。
あ、そう言えばキャロットの中に入る前に、門のところで盗賊を引き渡したけど、そのことか?
しばらくして受付のお姉さんが戻ってくるが、その後ろには明らかに上司であろう男性職員(お兄さんとは言い難い)が笑顔でいた。
「お待たせしました。この後は係長のゴードンがご案内を引き継ぎます」
「初めまして、特例初級冒険者のユーリ様と、そのお仲間である皆様。私は冒険者ギルド・キャロット支部受付業務係長のゴードンと申します」
「ユーリです。よろしく、お願いします……」
「妻のセレーナです。よろしくお願いしますっ」
「リリーです。よろしくお願いします!」
ゴードンさんは笑顔を崩さず、「よろしくお願いいたします」と返す。
見た目と喋り方が合っていないような気がするんだけど……。
その巨漢に似つかわしい丁寧な喋り方がギャップを感じさせるのであった。
読んで頂きありがとうございます!!
もっとイチャイチャさせたいけど、これ以上は作者も恥ずかしくなってくるという謎現象……。
更新頑張ります!
受付の隣の壁には大きな板がある。そこには様々な依頼の案内書が掲示されていて、冒険者はここから自分の条件にあった依頼を選び仕事をする。この板を通称「依頼板」と呼ぶ。
依頼板の周りにはたくさんの冒険者が集まっていた。良い条件の依頼はすぐに取られてしまい、微妙な依頼ばかりが依頼板に残る。
「ユーリくん、あれは?」
「うーん」
「ユーリ様、これはどうですか?」
「うーん」
ノルマをクリアするだけなら、手持ちのお金が十分ある今は簡単なものでも良いのだろうけど……。
それではつまらないと思ってしまう俺がいる。
「ユーリ様」
「面白そうな依頼見つかった?」
「いえ、そうではないですが、どうやら受付で自分に合った依頼を見つけてもらえるらしいですよ」
視線をリリーから受付に移すと、そこには長蛇の列ができていた。
「あれに並ぶの?」
「そうみたいです……」
2人合わせて微妙な顔になる。
「まぁ、このまま依頼板で探しても時間がかかりそうだし並んで待つとするか」
「そうですね!」
「ねぇねぇ! ユーリくん、これは……って置いてかないでよぉ〜」
列の最後尾に向かう俺とリリーの後を慌ててセレーナが追いかける。
追いついたセレーナは頬を膨らませて、俺の腕に抱きつく。
「置いてくなんてひどいよっ」
「ごめんね、ついて来てると思ってたからさ」
「それなら、わたしが一緒だってわかるように手を繋いで」
そう言ってセレーナは俺に右手を差し出す。
照れくさい気持ちを感じつつ、俺はセレーナの手をぎゅっと握る。
「ユーリくん、顔が赤いよ? どうしたの?」
「な、何でもないよ」
俺は正直にドキドキしているなんてことは言えず、セレーナの顔もまともに見れないでいる。
手を繋いでいるだけなのに……こんなに心臓が爆発しそうで、嬉しくもあり、恥ずかしくもあるのは何でだ!?
「そう? でも、手を繋いだの久しぶりだね」
セレーナの顔を見ると、少し耳が赤くなっていた。
そんなセレーナを見て、俺はクスッと笑ってしまう。
「何で笑ったの! わたし変なこと言ってないよね?」
「いや、セレーナが可愛いなって」
セレーナの顔が一気に赤くなる。
自分だって照れてるのに、手を繋ぎたがるなんてセレーナは本当に可愛いな。
「……ユーリ様、セレーナさん、前進んでます」
リリーに言われて、俺とセレーナは慌てて列を詰める。
(あ、それでも手は離さないんですね)
「ん? どうした?」
「いえ、何でもありません。僕は十分に幸せオーラを分けて頂いているので……」
幸せ……オーラ?
よくわからないが、リリーが神妙な面持ちになっているため、あえて触れないことにする。
それからしばらくして、俺たちの順番が回ってきた。
「お待たせしました。ギルド証の提示をお願いします」
かなりの件数を対応していても、それを感じさせない笑顔で受付をするギルド職員のお姉さんに、俺は感心しつつギルド証を見せる。
プロってこういう人を言うんだろうな……。
ついマジマジと受付のお姉さんを見ていると、お姉さんと目が合う。
お姉さんはニコッと笑って再び処理を続ける。
「……ユーリくん、ジロジロ見過ぎ」
セレーナが小さな声で言う。その目は少し怖かった。
心なしか握る手の力が強くなっている。
うん、セレーナが怒ってる。
俺はどう宥めるか、助けを求めてリリーを見る。
しかし、リリーは微笑んでいた。
(セレーナさん、怒っていても手は離さないんですね)
ダメだ……あの表情は諦めろという意味なのか? リリー……。
それにしても驚くくらい優しい表情だったな。
そんなことを考えていると、受付のお姉さんからギルド証を返される。
「ユーリ様、ありがとうございました。ギルド証をお返しします」
ギルド証を受け取ると、お姉さんが「少々お待ちください」と言って席を離れてしまった。
俺たちは顔を見合わせて「?」を浮かべる。
何か問題でもあったのかな。
あ、そう言えばキャロットの中に入る前に、門のところで盗賊を引き渡したけど、そのことか?
しばらくして受付のお姉さんが戻ってくるが、その後ろには明らかに上司であろう男性職員(お兄さんとは言い難い)が笑顔でいた。
「お待たせしました。この後は係長のゴードンがご案内を引き継ぎます」
「初めまして、特例初級冒険者のユーリ様と、そのお仲間である皆様。私は冒険者ギルド・キャロット支部受付業務係長のゴードンと申します」
「ユーリです。よろしく、お願いします……」
「妻のセレーナです。よろしくお願いしますっ」
「リリーです。よろしくお願いします!」
ゴードンさんは笑顔を崩さず、「よろしくお願いいたします」と返す。
見た目と喋り方が合っていないような気がするんだけど……。
その巨漢に似つかわしい丁寧な喋り方がギャップを感じさせるのであった。
読んで頂きありがとうございます!!
もっとイチャイチャさせたいけど、これ以上は作者も恥ずかしくなってくるという謎現象……。
更新頑張ります!
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