魔法陣を描いたら転生~龍の森出身の規格外魔術師~
49 野菜炒め定食
「ここが都市キャロットか」
「広くて、大きくて、人もいっぱいだね!」
セレーナは視線をキョロキョロと忙しく移しながらキャロットの街並みや人の往来を見ている。
「王国の中でも、5番目に大きな都市ですからね」
リリーの言葉を聞いて納得するとともに、これより大きな都市が後4つもあることに驚く。
キャロットで、集落の数倍の規模はあるよね。
「……食べ物の匂い」
そう言って、アカネが俺の服を引っ張る。
「ちょうどいい時間だし、どこか店に入ってお昼にしよう」
「やったー!」
「はい!」
「んっ」
3人は喜ぶと、次はどの店に入るかと探し始めた。
***
都市キャロットは5つの地区に分かれている。
その中で俺たちが入ったのはちょうど観光区だったらしく、様々な飲食店や出店が多く建ち並んでいた。
その中でも一際いい匂いを香らせていた店に俺たちは入る。
「いらっしゃいっ! こちらの席をどうぞ〜」
髪を一本に結び、ハツラツとした印象の若い女性の店員さんに案内された席へ座る。
店内は4人席が5つに、カウンター席が5つとそれほど広くはないが落ち着いた雰囲気で、居心地がいい。
メニューは店の壁に札がかけられている。
野菜炒め定食(並)、野菜炒め定食(上)、野菜炒め定食(特)の3つ。
え、野菜炒めオンリー!?
周りのテーブルを見ると、しんなりと炒められた野菜炒めが次々と置かれていく。
仕方ないので、俺は量のみ3人から希望を聞くとさっきの店員さんを呼ぶ。
「はーい! ご注文は?」
「野菜炒め定食の並が2つ、上が1つ、特が1つ、お願いします」
「並2っ! 上1っ! 特1っ! 注文入りましたー!」
「あいよっ!」
厨房の店主らしき厳ついおじさんが、予想外に高い声でオーダーを受ける。
思わず4人で厨房の方を凝視してしまった。
それから厨房でカンッ、カンッと中華鍋らしきものを振る音と、ジュー、ジューと野菜が焼ける音が店内に響く。
調理する音を聞いていたら、完成はあっという間だった。
「お待ちどうさま! キャロット名産の野菜をふんだんに使った、野菜炒め定食ですよ!」
テーブルに置かれた大盛りの米、野菜たっぷりのスープ、そして存分にタレを絡めて炒められた大盛りアツアツの野菜炒め。
これは絶対に美味いはず!
見た目、匂いからそこらの野菜炒めとは違うことを確信する。
ゴクリ。
「……食べよう」
「うんっ」
「はいっ」
「んっ」
俺たちは顔を見合わせると、一斉に頷いた。
『いただきます!』
***
「……お腹いっぱいだ」
「わたしも……」
「僕もです……」
「……まだいける」
「「「えっ?」」」
一人で特盛りを食べ切ったよね? アカネって大食いだっけ……?
アカネの意外な一面に驚きつつも、俺たちは野菜炒め定食に大満足していた。
シャキシャキと心地よい食感の野菜たちが、この店自慢の甘辛いタレで炒められたことで、野菜炒め界のゴッドとして降臨したようだった。
うん、意味がわからないよね。
つまり今まで食べた野菜炒めの中で一番美味しかった。
母さんが作る野菜炒めももちろん好きだけど、これは別枠って感じがする。
思わず店主のおじさんにグッドを送ってしまうほどには感動した。
俺たちがしばらく休憩していると、カウンターにいる二人の男性客の会話がたまたま耳に入る。
「おい、聞いたか。今、魔書持ちがこの都市に来てるらしいぞ」
「それはすげぇな! 俺も見てみてぇなー魔書!」
魔書持ち? え、俺のこと?
確かに俺は魔書を持ってるけど……いつの間にそんな有名になったんだ、俺。
「何でも、その魔書を使えば好きな場所に一瞬で行けるらしいぞ」
「それって伝説の魔法にもあったよな?」
「そうだ! その魔書を使えば伝説の魔法と同じことができるってわけだな」
「それはすげぇな! 俺も使ってみてぇなー伝説の魔法!」
ん? 好きな場所に一瞬でって……転移魔法のことだよな?
伝説の魔法って言っているし、転移魔法のことで間違いないはず。
それを魔書で?
俺の魔書は、そんな力はないはずだから……何だ、俺の勘違いか。
でも、面白い話を聞いた。
俺の記録の魔書とは別の魔書。
すごく気になる! 実際に見たい!
けど、調査があるからな……。
「ユーリくん?」
「ユーリ様、どうかしましたか?」
「ニヤついたり、落ち込んだり……変」
3人の反応から見て、俺は相当変な様子だったみたいだ……。
悪い癖がまた出た。
俺は気恥ずかしさから話題をすり替える。
「そ、それは後で説明するから、とりあえず外に出よう」
「うーん……わかった!」
「はいです」
「……ん」
会計を済ませ、外に出る。
少し高かったような気がしたが、パンプキンでの稼ぎがまだまだたくさん残っているので問題ない。
外に出ると、人の波が多くなっているような気がした。
「これからどこに行くんですか?」
ローブのシワを直しつつ、リリーが聞く。
「ひとまずはギルドに行こう」
転移魔法のある俺たちにとって宿を見つける必要はないし、装備品や日用品も魔法でどうにかなる。
たくさんの魔法を覚えると、生活が楽になる。これ、重要!
宿、装備等の旅の準備が不要の俺たちにとって、次にやる必要が出てくるのがギルドのノルマだ。
適当な依頼を見つけてノルマを達成しないと、せっかく作ったギルド証が使えなくなってしまう。
「ギルドですね!」
「ギルドってどこにあるのかな?」
セレーナの言葉で、肝心のギルドの場所を知らないことに気がつく。
さっきのお店の人に聞いてみるかな。
そんなことを考えていると、大通りが段々と騒がしくなっていく。
「転移師テーレ様だ! 本物だ!」
「え? あの一級冒険者の?」
「テーレ様ーっ! こっち向いてぇー!」
気がつくと、人の波は大通りの左右に分かれて門の方からやってくるその人物を注目していた。
読んで頂きありがとうございます!!
またしても申し訳ありません……。
ただでさえ、物語の進行が遅いのに……って反省してる暇があったら書けって話ですよね。
はい、書きます!
「広くて、大きくて、人もいっぱいだね!」
セレーナは視線をキョロキョロと忙しく移しながらキャロットの街並みや人の往来を見ている。
「王国の中でも、5番目に大きな都市ですからね」
リリーの言葉を聞いて納得するとともに、これより大きな都市が後4つもあることに驚く。
キャロットで、集落の数倍の規模はあるよね。
「……食べ物の匂い」
そう言って、アカネが俺の服を引っ張る。
「ちょうどいい時間だし、どこか店に入ってお昼にしよう」
「やったー!」
「はい!」
「んっ」
3人は喜ぶと、次はどの店に入るかと探し始めた。
***
都市キャロットは5つの地区に分かれている。
その中で俺たちが入ったのはちょうど観光区だったらしく、様々な飲食店や出店が多く建ち並んでいた。
その中でも一際いい匂いを香らせていた店に俺たちは入る。
「いらっしゃいっ! こちらの席をどうぞ〜」
髪を一本に結び、ハツラツとした印象の若い女性の店員さんに案内された席へ座る。
店内は4人席が5つに、カウンター席が5つとそれほど広くはないが落ち着いた雰囲気で、居心地がいい。
メニューは店の壁に札がかけられている。
野菜炒め定食(並)、野菜炒め定食(上)、野菜炒め定食(特)の3つ。
え、野菜炒めオンリー!?
周りのテーブルを見ると、しんなりと炒められた野菜炒めが次々と置かれていく。
仕方ないので、俺は量のみ3人から希望を聞くとさっきの店員さんを呼ぶ。
「はーい! ご注文は?」
「野菜炒め定食の並が2つ、上が1つ、特が1つ、お願いします」
「並2っ! 上1っ! 特1っ! 注文入りましたー!」
「あいよっ!」
厨房の店主らしき厳ついおじさんが、予想外に高い声でオーダーを受ける。
思わず4人で厨房の方を凝視してしまった。
それから厨房でカンッ、カンッと中華鍋らしきものを振る音と、ジュー、ジューと野菜が焼ける音が店内に響く。
調理する音を聞いていたら、完成はあっという間だった。
「お待ちどうさま! キャロット名産の野菜をふんだんに使った、野菜炒め定食ですよ!」
テーブルに置かれた大盛りの米、野菜たっぷりのスープ、そして存分にタレを絡めて炒められた大盛りアツアツの野菜炒め。
これは絶対に美味いはず!
見た目、匂いからそこらの野菜炒めとは違うことを確信する。
ゴクリ。
「……食べよう」
「うんっ」
「はいっ」
「んっ」
俺たちは顔を見合わせると、一斉に頷いた。
『いただきます!』
***
「……お腹いっぱいだ」
「わたしも……」
「僕もです……」
「……まだいける」
「「「えっ?」」」
一人で特盛りを食べ切ったよね? アカネって大食いだっけ……?
アカネの意外な一面に驚きつつも、俺たちは野菜炒め定食に大満足していた。
シャキシャキと心地よい食感の野菜たちが、この店自慢の甘辛いタレで炒められたことで、野菜炒め界のゴッドとして降臨したようだった。
うん、意味がわからないよね。
つまり今まで食べた野菜炒めの中で一番美味しかった。
母さんが作る野菜炒めももちろん好きだけど、これは別枠って感じがする。
思わず店主のおじさんにグッドを送ってしまうほどには感動した。
俺たちがしばらく休憩していると、カウンターにいる二人の男性客の会話がたまたま耳に入る。
「おい、聞いたか。今、魔書持ちがこの都市に来てるらしいぞ」
「それはすげぇな! 俺も見てみてぇなー魔書!」
魔書持ち? え、俺のこと?
確かに俺は魔書を持ってるけど……いつの間にそんな有名になったんだ、俺。
「何でも、その魔書を使えば好きな場所に一瞬で行けるらしいぞ」
「それって伝説の魔法にもあったよな?」
「そうだ! その魔書を使えば伝説の魔法と同じことができるってわけだな」
「それはすげぇな! 俺も使ってみてぇなー伝説の魔法!」
ん? 好きな場所に一瞬でって……転移魔法のことだよな?
伝説の魔法って言っているし、転移魔法のことで間違いないはず。
それを魔書で?
俺の魔書は、そんな力はないはずだから……何だ、俺の勘違いか。
でも、面白い話を聞いた。
俺の記録の魔書とは別の魔書。
すごく気になる! 実際に見たい!
けど、調査があるからな……。
「ユーリくん?」
「ユーリ様、どうかしましたか?」
「ニヤついたり、落ち込んだり……変」
3人の反応から見て、俺は相当変な様子だったみたいだ……。
悪い癖がまた出た。
俺は気恥ずかしさから話題をすり替える。
「そ、それは後で説明するから、とりあえず外に出よう」
「うーん……わかった!」
「はいです」
「……ん」
会計を済ませ、外に出る。
少し高かったような気がしたが、パンプキンでの稼ぎがまだまだたくさん残っているので問題ない。
外に出ると、人の波が多くなっているような気がした。
「これからどこに行くんですか?」
ローブのシワを直しつつ、リリーが聞く。
「ひとまずはギルドに行こう」
転移魔法のある俺たちにとって宿を見つける必要はないし、装備品や日用品も魔法でどうにかなる。
たくさんの魔法を覚えると、生活が楽になる。これ、重要!
宿、装備等の旅の準備が不要の俺たちにとって、次にやる必要が出てくるのがギルドのノルマだ。
適当な依頼を見つけてノルマを達成しないと、せっかく作ったギルド証が使えなくなってしまう。
「ギルドですね!」
「ギルドってどこにあるのかな?」
セレーナの言葉で、肝心のギルドの場所を知らないことに気がつく。
さっきのお店の人に聞いてみるかな。
そんなことを考えていると、大通りが段々と騒がしくなっていく。
「転移師テーレ様だ! 本物だ!」
「え? あの一級冒険者の?」
「テーレ様ーっ! こっち向いてぇー!」
気がつくと、人の波は大通りの左右に分かれて門の方からやってくるその人物を注目していた。
読んで頂きありがとうございます!!
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