魔法陣を描いたら転生~龍の森出身の規格外魔術師~
47 馬車
青い空、白い雲、窓から見える緑の群畑。
爽やかな景色がどこまでも続く。
少女はこの景色が大好きだった。
都市キャロットへ向かう一本道を馬車に乗って進む。
キャロットには今日中に着く予定だ。
「今年もいいお野菜が採れそうだわ」
「はい、姫様」
「スチュワード。やっぱり少し畑に寄って行かない?」
「お気持ちはわかりますが、キャロットではリコピン市長が姫様のことをお待ちしています」
お付きの男、スチュワードは諭すようにそう伝える。
「そうね……また帰るときに寄ることにするわ」
「ご理解いただきありがとうございます」
姫と呼ばれた少女は、明らかに不服そうな顔で再び馬車の窓から群畑を眺める。
スチュワードはそんな姫の姿を見て苦笑するしかなかった。
しばらく走っていた馬車が急停止する。
馬車の中にいた姫とスチュワードは、止まった勢いで体勢を崩す。
「キャッ」
「姫っ!」
スチュワードがとっさに姫を抱える。
「くッ」
「スチュワード!」
姫を庇ってスチュワードが馬車の壁にぶつかる。
「……私は大丈夫です。姫様こそ、お怪我はありませんでしたか?」
「えぇ、スチュワードが庇ってくれたから」
「お怪我がなくてよかったです」
「ありがとう」
スチュワードは姫に軽く微笑むと、顔を真剣なものに変えて御者に向かって叫ぶ。
「何事だ!」
「ぞ、賊に囲まれました!」
スチュワードは警戒しつつ、窓から状況を伺う。
御者の言う通り、馬車の周りには20人程度の賊が囲うように立っていた。
護衛は?
スチュワードは馬車の前後に配置していた兵士たちがいないことに気がつく。
しかし、その理由はすぐに判明する。
賊の後ろに護衛を任されていた兵士たちが倒れていた。
鍛えられた王国兵が一度に全員やられた?
スチュワードは困惑した。
その動揺が伝わってしまったのか、姫は不安な表情へと変わる。
姫を不安にさせてはいけない。
スチュワードは王から姫のことを任された身として、姫だけでも守ることを決意する。
それには、賊を姫から遠ざける必要があった。
まずは賊の戦力がどれほどかスチュワードは観察する。
全体の4分の3が剣や鈍器を持ち、残りがローブを着て杖を持っていた。
魔術師?
賊の中に魔術師がいることは滅多にない。
まず魔術師ならわざわざ賊にならなくとも収入を得られるし、魔術師は学があるものがほとんどだ。
それほど魔術師という存在は希少であり、誰でもなれるものではない。
リスクとリターンで考えれば一目瞭然と言えるほど賊になる理由が見つからない。
つまり賊にならなければならない理由、もしくは賊と偽っている理由が何かあると、スチュワードは考えていた。
魔術師がいるなら、確かに王国兵がやられてしまうのも仕方がない。それほど魔術師とは他よりもアドバンテージがある。
「さて、どうしましょうか……」
スチュワードが策をいくつかシュミレーションしていたその時――――。
「ウギャッ!?」
「ナニッ!?」
「ウヘッ」
続々と賊が何者かによって、黒い鎖で縛られていく。
もちろん、魔術師たちも縛られていた。
「何が……」
スチュワードは、馬車の窓から外の様子を覗くが状況を掴めずにいた。
「スチュワード……」
「姫様はここでお待ちください」
姫を馬車に残し、警戒しながらスチュワードは外に出る。
馬車の外では、黒い鎖に縛られた賊たちが呻き声を上げていた。
「この鎖……魔法」
その見事なまでに魔力の乱れがない魔法の鎖をみてスチュワードは驚く。
どんなに優れた魔術師でも、魔法に乱れというものが生まれる。
それは仕方のないことであり、それをどれだけ最小限にできるかが魔術師としての力量に関わってくるのだ。
しかし、この鎖の魔法には乱れというものがない。言ってしまえば、完璧な魔法ということだ。
これほどの魔法が使える魔術師。
スチュワードは賊が出たときよりも、正直困っていた。
「あのぉ……大丈夫ですか?」
スチュワードは後ろを振り向いた。
そこには東洋の服を着た成人(15歳)くらいの少年と、青髪の少女。白と黒のドレスを着た幼い少女、さらに黒いローブ姿の金髪の子供がいた。
読んで頂きありがとうございます!!
少し短いです……。
プロローグの姫様がやっと本編登場です。
忘れてしまった方もいるかも……。
爽やかな景色がどこまでも続く。
少女はこの景色が大好きだった。
都市キャロットへ向かう一本道を馬車に乗って進む。
キャロットには今日中に着く予定だ。
「今年もいいお野菜が採れそうだわ」
「はい、姫様」
「スチュワード。やっぱり少し畑に寄って行かない?」
「お気持ちはわかりますが、キャロットではリコピン市長が姫様のことをお待ちしています」
お付きの男、スチュワードは諭すようにそう伝える。
「そうね……また帰るときに寄ることにするわ」
「ご理解いただきありがとうございます」
姫と呼ばれた少女は、明らかに不服そうな顔で再び馬車の窓から群畑を眺める。
スチュワードはそんな姫の姿を見て苦笑するしかなかった。
しばらく走っていた馬車が急停止する。
馬車の中にいた姫とスチュワードは、止まった勢いで体勢を崩す。
「キャッ」
「姫っ!」
スチュワードがとっさに姫を抱える。
「くッ」
「スチュワード!」
姫を庇ってスチュワードが馬車の壁にぶつかる。
「……私は大丈夫です。姫様こそ、お怪我はありませんでしたか?」
「えぇ、スチュワードが庇ってくれたから」
「お怪我がなくてよかったです」
「ありがとう」
スチュワードは姫に軽く微笑むと、顔を真剣なものに変えて御者に向かって叫ぶ。
「何事だ!」
「ぞ、賊に囲まれました!」
スチュワードは警戒しつつ、窓から状況を伺う。
御者の言う通り、馬車の周りには20人程度の賊が囲うように立っていた。
護衛は?
スチュワードは馬車の前後に配置していた兵士たちがいないことに気がつく。
しかし、その理由はすぐに判明する。
賊の後ろに護衛を任されていた兵士たちが倒れていた。
鍛えられた王国兵が一度に全員やられた?
スチュワードは困惑した。
その動揺が伝わってしまったのか、姫は不安な表情へと変わる。
姫を不安にさせてはいけない。
スチュワードは王から姫のことを任された身として、姫だけでも守ることを決意する。
それには、賊を姫から遠ざける必要があった。
まずは賊の戦力がどれほどかスチュワードは観察する。
全体の4分の3が剣や鈍器を持ち、残りがローブを着て杖を持っていた。
魔術師?
賊の中に魔術師がいることは滅多にない。
まず魔術師ならわざわざ賊にならなくとも収入を得られるし、魔術師は学があるものがほとんどだ。
それほど魔術師という存在は希少であり、誰でもなれるものではない。
リスクとリターンで考えれば一目瞭然と言えるほど賊になる理由が見つからない。
つまり賊にならなければならない理由、もしくは賊と偽っている理由が何かあると、スチュワードは考えていた。
魔術師がいるなら、確かに王国兵がやられてしまうのも仕方がない。それほど魔術師とは他よりもアドバンテージがある。
「さて、どうしましょうか……」
スチュワードが策をいくつかシュミレーションしていたその時――――。
「ウギャッ!?」
「ナニッ!?」
「ウヘッ」
続々と賊が何者かによって、黒い鎖で縛られていく。
もちろん、魔術師たちも縛られていた。
「何が……」
スチュワードは、馬車の窓から外の様子を覗くが状況を掴めずにいた。
「スチュワード……」
「姫様はここでお待ちください」
姫を馬車に残し、警戒しながらスチュワードは外に出る。
馬車の外では、黒い鎖に縛られた賊たちが呻き声を上げていた。
「この鎖……魔法」
その見事なまでに魔力の乱れがない魔法の鎖をみてスチュワードは驚く。
どんなに優れた魔術師でも、魔法に乱れというものが生まれる。
それは仕方のないことであり、それをどれだけ最小限にできるかが魔術師としての力量に関わってくるのだ。
しかし、この鎖の魔法には乱れというものがない。言ってしまえば、完璧な魔法ということだ。
これほどの魔法が使える魔術師。
スチュワードは賊が出たときよりも、正直困っていた。
「あのぉ……大丈夫ですか?」
スチュワードは後ろを振り向いた。
そこには東洋の服を着た成人(15歳)くらいの少年と、青髪の少女。白と黒のドレスを着た幼い少女、さらに黒いローブ姿の金髪の子供がいた。
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