魔法陣を描いたら転生~龍の森出身の規格外魔術師~
41 弟子の選択
「らっしゃい! らっしゃい! そこの兄ちゃん、ちょっと見ていかねぇか?」
「ダメよ、ダメダメ! そこのお兄さんは私のお店に来るのよ! ね、そうよね!」
「ははは……ごめんなさーい!」
「「ちょっと待ってぇ!」」
俺は道の両サイドから声かけをしてくる商人のおっちゃんとマダムから走って逃れる。
逃れた先でも続々と現れる商人たちに喜ばしいことなのかもしれないが、素直に喜べない。
騒動から1週間が経った。
町の復興は予定よりも大幅に早まり、かつての活気を取り戻しつつある。
復興が予定より早く終わりそうなのは、夜中に俺が魔法で工事を進めているというのが一要因だったりするんだけど、それを知っているのはサンサイ支部長だけだ。
そのため、朝になると工事が終わっているという事件が連日続いて、パンプキンの住民は最初こそ喜んでいたが次第に不気味がる者が増えていった。
誰もいないのに夜中に木材が勝手に動き出したり、突然道が綺麗に整備されたりしたという目撃情報がより不気味さを増長させている。
人に見られないように変身魔法で透明化したのが裏目に出てしまった……。悲しい。
俺は適当な路地に入り込み、転移魔法で上空へ一瞬で転移する。
下を見ると、まだ色がついていない屋根や建設途中の建物もあるが、概ね復興は完了したと言える。これでサンサイ支部長の『お願い』も果たせた。
そろそろ次の町を目指すか。
***
「うん……その調子……もう少し強く……そう、いい感じ」
町を見て回った後、俺はリリーの修行を見ていた。
魔力の知覚ができるようになったため、次は魔力コントロールを習得しようといった感じだ。
最初は「今、一瞬動いた?」というレベルだったが、段々と自分の思った通りに動かせるようになってきている。
リリーの成長が自分のことのように嬉しい。
セレーナやアカネに教えている時とはまた違う楽しさや面白さがある。
これはリリーを弟子にしなければわからなかったことだな。
「そろそろ休憩にしようか」
「はいっ!」
俺は鉱石魔法を使い椅子を2つ創り出す。
リリーを見ると、目を輝かせて俺を見ていた。
「ユーリ様! これはどんな魔法何ですかっ?」
抱きついて来るんではないかと思ってしまうほど勢いよく近づき質問するリリー。
俺はその勢いのあまり、数歩下がって落ち着けという仕草をしてしまう。
「説明するから、とりあえず座って話そう」
「あ、そ、そうですね。失礼します」
リリーがこれまたすごい勢いで後ろに下がる。
顔を赤くしたリリーに苦笑しながら俺はひとつひとつ魔法についての説明をしていった。
***
「というわけで、魔法はイメージと魔力の流れがとても重要になる。どちらも日々の鍛錬が大切になるから、サボらずしっかり取り組むようにね」
「はい!」
すっかり話が長くなってしまったかも。
この手の話を始めると、セレーナやアカネは途中で聞き流してる時があるけど、リリーは最後までちゃんと聞いてくれるから話し込んでしまった。
いい弟子だ。
「リリー」
俺の話を聞いて、早速魔力コントロールの練習をしていたリリーを呼ぶ。
「はい!」
今日はもう一つ話しておかなければならないことがある。
「俺たちはもうすぐこの町を出る」
「はい」
「俺たちはやらなければならないことがある。きっと岩龍の時のように危険なこともあると思う。リリー、それでもついて行くと言うなら、俺は拒まない」
リリーを弟子にしたからには、師匠として責任を果たさなければならない。
これからの旅は危険なことがたくさんある。
「だけど、しっかりと考えるんだ。魔術は俺から教わらなくても、この町なら他の魔術師がいる。リリーは魔力の知覚も、コントロールもできるようになった。あと少しで魔法を使えるようになる」
そう、俺から教わらなきゃならない、なんてことはない。
魔術、魔法なら負けるつもりはないけど、他にも魔術師はいる。
それにリリーの成長を見るに、魔法を使えるようになるのは本当にあと少しといったところだ。
リリーの成長を見ていたいという気持ちは確かにあるけど、それは俺のわがままな気がする。
だからこそリリーには選択してほしい。
「自分が納得できる道を選ぶんだ、リリー」
「そんなの決まってます」
「え?」
俺の言葉に被せ気味でリリーが決まっていると言ったので、俺は呆気にとられてしまう。
「僕は“ユーリ様の”弟子です! ユーリ様が師匠じゃなきゃダメなんですっ!」
迷いなくリリーは言い切る。
その目は憧憬と希望で輝いていた。
リリーと昔の自分が重なる。
純粋に魔法を学びたい、知りたいという想いがわかる。
それにリリーは俺じゃなきゃダメだと言った。
弟子にそこまで言わせたのら、俺がやるべきことは決まってる。
リリーを一人前の魔術師にする。
「俺の修行は厳しいぞ?」
「頑張りますっ!」
「それじゃ、今から魔力の流れを100段階に分けられるようになるまで特訓だ」
「はい! ……はい?」
「俺もちゃんと付き合うから」
(ユーリ様の笑顔が怖い!?)
もちろん、今日中に魔力の流れを100段階に分けられるようになんてできるわけなかった。
魔力が少なくなっても魔力を回復させ、特訓を続行するユーリに耐えきれなくなったリリーが逃げ出して、その日の特訓は終わりを迎えた。
読んで頂きありがとうございます!!
第3章の中編に入った感じです!
(まだまだ道のりは長い……)
これからもお付き合い頂けたら幸いです!
「ダメよ、ダメダメ! そこのお兄さんは私のお店に来るのよ! ね、そうよね!」
「ははは……ごめんなさーい!」
「「ちょっと待ってぇ!」」
俺は道の両サイドから声かけをしてくる商人のおっちゃんとマダムから走って逃れる。
逃れた先でも続々と現れる商人たちに喜ばしいことなのかもしれないが、素直に喜べない。
騒動から1週間が経った。
町の復興は予定よりも大幅に早まり、かつての活気を取り戻しつつある。
復興が予定より早く終わりそうなのは、夜中に俺が魔法で工事を進めているというのが一要因だったりするんだけど、それを知っているのはサンサイ支部長だけだ。
そのため、朝になると工事が終わっているという事件が連日続いて、パンプキンの住民は最初こそ喜んでいたが次第に不気味がる者が増えていった。
誰もいないのに夜中に木材が勝手に動き出したり、突然道が綺麗に整備されたりしたという目撃情報がより不気味さを増長させている。
人に見られないように変身魔法で透明化したのが裏目に出てしまった……。悲しい。
俺は適当な路地に入り込み、転移魔法で上空へ一瞬で転移する。
下を見ると、まだ色がついていない屋根や建設途中の建物もあるが、概ね復興は完了したと言える。これでサンサイ支部長の『お願い』も果たせた。
そろそろ次の町を目指すか。
***
「うん……その調子……もう少し強く……そう、いい感じ」
町を見て回った後、俺はリリーの修行を見ていた。
魔力の知覚ができるようになったため、次は魔力コントロールを習得しようといった感じだ。
最初は「今、一瞬動いた?」というレベルだったが、段々と自分の思った通りに動かせるようになってきている。
リリーの成長が自分のことのように嬉しい。
セレーナやアカネに教えている時とはまた違う楽しさや面白さがある。
これはリリーを弟子にしなければわからなかったことだな。
「そろそろ休憩にしようか」
「はいっ!」
俺は鉱石魔法を使い椅子を2つ創り出す。
リリーを見ると、目を輝かせて俺を見ていた。
「ユーリ様! これはどんな魔法何ですかっ?」
抱きついて来るんではないかと思ってしまうほど勢いよく近づき質問するリリー。
俺はその勢いのあまり、数歩下がって落ち着けという仕草をしてしまう。
「説明するから、とりあえず座って話そう」
「あ、そ、そうですね。失礼します」
リリーがこれまたすごい勢いで後ろに下がる。
顔を赤くしたリリーに苦笑しながら俺はひとつひとつ魔法についての説明をしていった。
***
「というわけで、魔法はイメージと魔力の流れがとても重要になる。どちらも日々の鍛錬が大切になるから、サボらずしっかり取り組むようにね」
「はい!」
すっかり話が長くなってしまったかも。
この手の話を始めると、セレーナやアカネは途中で聞き流してる時があるけど、リリーは最後までちゃんと聞いてくれるから話し込んでしまった。
いい弟子だ。
「リリー」
俺の話を聞いて、早速魔力コントロールの練習をしていたリリーを呼ぶ。
「はい!」
今日はもう一つ話しておかなければならないことがある。
「俺たちはもうすぐこの町を出る」
「はい」
「俺たちはやらなければならないことがある。きっと岩龍の時のように危険なこともあると思う。リリー、それでもついて行くと言うなら、俺は拒まない」
リリーを弟子にしたからには、師匠として責任を果たさなければならない。
これからの旅は危険なことがたくさんある。
「だけど、しっかりと考えるんだ。魔術は俺から教わらなくても、この町なら他の魔術師がいる。リリーは魔力の知覚も、コントロールもできるようになった。あと少しで魔法を使えるようになる」
そう、俺から教わらなきゃならない、なんてことはない。
魔術、魔法なら負けるつもりはないけど、他にも魔術師はいる。
それにリリーの成長を見るに、魔法を使えるようになるのは本当にあと少しといったところだ。
リリーの成長を見ていたいという気持ちは確かにあるけど、それは俺のわがままな気がする。
だからこそリリーには選択してほしい。
「自分が納得できる道を選ぶんだ、リリー」
「そんなの決まってます」
「え?」
俺の言葉に被せ気味でリリーが決まっていると言ったので、俺は呆気にとられてしまう。
「僕は“ユーリ様の”弟子です! ユーリ様が師匠じゃなきゃダメなんですっ!」
迷いなくリリーは言い切る。
その目は憧憬と希望で輝いていた。
リリーと昔の自分が重なる。
純粋に魔法を学びたい、知りたいという想いがわかる。
それにリリーは俺じゃなきゃダメだと言った。
弟子にそこまで言わせたのら、俺がやるべきことは決まってる。
リリーを一人前の魔術師にする。
「俺の修行は厳しいぞ?」
「頑張りますっ!」
「それじゃ、今から魔力の流れを100段階に分けられるようになるまで特訓だ」
「はい! ……はい?」
「俺もちゃんと付き合うから」
(ユーリ様の笑顔が怖い!?)
もちろん、今日中に魔力の流れを100段階に分けられるようになんてできるわけなかった。
魔力が少なくなっても魔力を回復させ、特訓を続行するユーリに耐えきれなくなったリリーが逃げ出して、その日の特訓は終わりを迎えた。
読んで頂きありがとうございます!!
第3章の中編に入った感じです!
(まだまだ道のりは長い……)
これからもお付き合い頂けたら幸いです!
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