魔法陣を描いたら転生~龍の森出身の規格外魔術師~

黒眼鏡 洸

28 朝食

 リリーを弟子にしてから数日。

 俺たちはリリーの家(ちょっと増築しました)を拠点に、周辺の村や町を調査することにした。

 リリーの家から北西に少し歩いたところに村が1つあり、そこから更に1時間くらい歩いたところに町が1つある。

 村は昨日、覗く程度だが見たため今日は町へ行くことにした。

 でも、その前に朝食をとる。朝ご飯はしっかり食べないとね。

「はいっ、できました!」

 セレーナの明るい声と共に最後の料理が食卓に並ぶ。

「す、すごいです! 毎日、毎食、こんな豪華な料理が……僕なんかが本当に頂いてもいいのでしょうか?」

「何度も言ってるけど、遠慮しなくていいよ。うん、これも修行だ。たくさん食べて体を強くするんだリリー。師匠の言い付けなら守れるだろ?」

「はいっ! ユーリ様! 僕、たくさん食べます。セレーナさん、いただきますっ」

「はーい、召し上がれ」

 リリーは夢中になって朝食を食べる。

 子供がご飯を食べる姿って微笑ましくなるよね。俺とセレーナもいつか……。

 俺はセレーナを見る。

 セレーナも俺を見ていた。

 お互いの顔が赤くなっていくのがわかる。

 セレーナも同じことを考えているとわかってしまい、耐えきれず俺は朝食を勢いよく食べ始めた。

 まだ、そういうのは早いよね。魂的な年齢は置いといて、俺たちはまだ12歳なんだ。

 人族の成人は15歳って言うし、それを考えるとまだまだ未成年ってことだ。

 あぁー成長を早める魔法でも習得するか? 見た目だけなら変身魔法で変えられるんだけどな……ってそういうことじゃない。

 馬鹿な考え(でもちょっと魅力的な考え)を振り払い、美味しい朝食に集中する。

 アカネさんは何をしているかって?

 ちゃんと一緒に朝食を食べてますよ。ただ、さっきからテーブルの下で俺のスネを何度も蹴ってくるのをやめてほしいな、なんて。

「ユーリ様。今更ですけど、どうやって増築をされたんですか? 自分で言うのも何ですが、ボロ小屋だったはずですよね……それが今はちょっとした豪邸です」

 リリーが何気なく聞く。

 最初は補強程度のつもりで始めたんだけど、気がついたら大改造ならぬ超改造ビフォーアフターになってたよ。

 まぁ、結果的にリリーは喜んでくれたから問題なし。

「自然魔法とか切断魔法とか、色々魔法を使ってね」

 建設業って魔術師にもってこいだよね。

「ゆ、ユーリ様! 今、何と!」

 リリーが勢いよく立ち上がる。

「えっ、色々魔法を使って……」

「その前です」

「自然魔法とかせつ――――」

「それです! ユーリ様は自然魔法をお使いになられるんですか?」

 リリーが食い気味に問う。

 俺はあまりの迫りように何度も頷く。

「すぅ…………大変、失礼致しましたっ!」

 リリーは俺に向かってすごい速さで土下座をした。

「え、何で」

「ユーリ様が王族の方だとは知らず、数々のご無礼を……命をもって償う所存でございます」

「いやいやいや、俺、王族じゃないし! それに簡単に命を差し出すな!」

「え?」

「とりあえず、席に戻って」

 リリーは頭に“?”を浮かべながらも席に戻る。

 セレーナとアカネは今のやりとりを見てポカーンとしていた。

「何で俺が王族だと思ったの?」

「この国で自然魔法を使える魔術師は王族の方々のみなのです。それで僕はてっきりユーリ様が王族の方だと……」

 自然魔法を使えるのが王族だけ……そんなことがあるのか?

 確かに使える魔法には適性や血筋などが影響してくることはあるけど、自然魔法はそれほど習得が難しいわけじゃない。

 もちろん基礎魔法より扱いは難しいけど、適性があれば初級くらい使えるようになると思うんだけどな。

「改めて言っておくけど、俺はどこの国の王族でもない。ただの……旅人、そう、旅人だ」

「ユーリ様。お言葉ですが、ただの旅人が転移魔法などという伝説の魔法を使えるわけがありません。嘘をつくにしても、もう少しマシな嘘をお願いします」

 リリーがジト目を向ける。

 そう、俺の過ちのその2。

 無詠唱をして怪しまれたっていうのに、バカな俺はリリーの家まで移動するのに転移魔法を使ってしまったのだ。

 転移魔法を使った時のリリーの反応ときたら、それはもう大変だったよ。落ち着くのに小一時間くらいかかったと思う。

「何かご事情があるのは理解しております。命の恩人であるユーリ様から無理に聞き出そうなどとは思っていません。ですが、もし弟子として僕を信用して頂けた時にはお話して頂けますか?」

 リリーの真剣な目。それを見たら、誤魔化すのは良くないと思った。

「うん。リリーの言う通り俺には重要な役目がある。人には簡単に言えないようなね。でも、いつかリリーにも話す時が来るかもしれない。その時は俺の話を聞いてくれ」

「はいっ」

 リリーの頭を軽く撫でると、リリーは嬉しそうに笑った。

 弟子っていいな。

「て、痛ッ! 本気でスネを蹴るなよ、アカネ!」

「ねね! わたしも! わたしも撫でてユーリくん!」

「え? いいけど…………また後で」

「何でよぉー、リリーちゃんだけずるいっ」

 何でって、アカネさんのお顔を見てよ。怖いってレベルじゃないんだよ。

 これでセレーナの頭を撫でてみようものなら、たぶん次は魔法を撃ち込んでくると思う。

 当の本人は相変わらずスネを蹴ってくるし……。

 顔を赤く染めるリリーと、頬を膨らませるセレーナ、鬼の形相のアカネを見て俺はため息をついた。

 アミナス様、こんな時に使える便利な魔法を教えて下さい。

 そんなこんなで、騒がしい朝食を終えた俺たちは町へ行く準備をするのであった。



 読んで頂きありがとうございます!!

 一拍おいて次は町へ!
 アカネが怒りっぽいキャラに落ち着いてきてしまってる……。

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