魔法陣を描いたら転生~龍の森出身の規格外魔術師~
17 長との話
調査班の話を聞いた次の日。
俺は再び長に会うため、広場の巨樹へと向かっていた。
比喩ではなく人生を変えるような話を聞いたわけだけど、意外にも次の朝はすんなりやってきた。
広場ではせっせと店の準備をしている人や、大きな声で呼び込みをしている人がいる。あ、ブリオおじさんか。
まぁブリオおじさんはいいとして、変わらないなぁ……本当に。
歩く速度は自然と緩やかになっていく。
そんな働くみんなの姿を視界に収めながら、よく知る日常を再記憶していく。
1日で世界が変わるようなことは起きない。
いや、それは嘘か。
一瞬で世界が変わることだってある。
俺は何度も経験してきた。
だけど、今ある日常を変えたくないとそう思う。
世界は大小様々でも変わる。
それでも変えたくないと、足掻くのは自由で勝手なことのはずだ。
少なくとも龍帝国が暗い未来へと世界を変えることだけは阻止する。
どうしても世界が変わってしまうと言うのなら明るい未来へ俺は変えたい。
この世界は俺を変えてくれた。
そして大切な人を、大切な居場所をくれた。
正直言えば、龍帝国ことなんかどうだっていい。
俺は魔法を極めて、集落のために働いて、セレーナ、アカネ、母さん、集落のみんなと笑って暮らして生きたい。
でもそのためにはきっと龍帝国を止めることが必要なのだと思う。
漠然とした状況ではあるけど前には進んでいる。
巨樹の目の前まで辿り着く。
俺は木と同化した扉を押し開きながら一歩前に進む。
不安な気持ちもある。
調査班として未知の場所へ行くこと、そしてその役目への不安。
けれど、もう一つの感情が前に進むことを催促してくる。
この世界に来てからこの感情が消えたことがない。むしろ増え続けている気がする。
俺はワクワクしている。
こんな状況で思うことじゃないかもしれないけど、やっぱり思ってしまう。
変わらないことを望んでいるはずが、変わることにワクワクしている。
矛盾してるな、俺。
でも、しょうがないよね。
それが俺なんだから。
よくわからない結論をだして、開き直った感情で長が待つ部屋まで俺は進んだ。
***
「そうか、そんなことがのぉ……」
長は何か考え込むように呟いた。
俺は調査班の話をする前に、昨日話せなかった森での出来事、俺が転生者であることを話した。
話している途中、珍しく長は何度も驚いた顔をした。
「その話は誰か他に話したか?」
「母さんには話したよ」
「うむ……その話はしばらく他の者には話さんほうがいいかもしれん。皆、今は龍帝国に気を取られておる。混乱はなるべく避けたいんじゃ」
俺は1つ頷き、その後調査班の話に移った。
話は簡潔にまとめると『入団式は近日中に行う』『調査班の班員は俺に委任する』『初調査の日程は俺に委任するが要相談』といった感じだ。
大体のことが俺に任せられているため、本当にいいのか? と思ってしまうが、確かに俺の任務を考えるとその方が都合がいいとも思える。
ここはありがたく、よく考えて有効的に進めていこう。
調査班の話が終わり、その後少し余談が続いた。
「それにしても、ユーリの子供とは思えぬ部分の正体がやっとわかったのじゃ」
「あぁー、そうだよね。じっ様も驚いた?」
俺はついつい気が緩み、じっ様呼びをしてしまうが長は気にしていない。むしろ、じっ様も表情が緩んでいるように見えた。
「龍神の加護の件もあったからのぉ、ただの子供ではないと思ってはいたが、まさか転生者とはのぉ」
「俺も最初は驚いたけど、色々ありすぎて……もっと早く伝えるべきだったよね」
「簡単に言えることではないじゃろうて、じゃが……ユーリは元の世界に帰りたいとは思わんのか?」
元の世界に帰る。
普通だったらそう思うんだろうけど……。
「俺、転生前の世界が好きじゃなかったんだ。それでこの世界に来て、みんなと出会ってこの世界が、みんなが好きになったから……この世界で生きていきたいって思ったんだ」
転生。
それは俺の世界を一瞬で変えた。
モノクロの世界を鮮やかな色で染めていくように、この世界が、みんなが俺に色を教えてくれた。
この世界が俺のいるべき場合だと思った。
「もう集落はユーリの場所じゃ」
「うん、ありがとう」
俺は溢れそうになるものをぐっと堪えて、笑ってみせる。
じっ様の言葉で、本当にここに居ていいのだと思える。
俺に優しすぎるよ。じっ様も、みんなも……。
嬉しさを噛み締めながら俺はより一層みんなのために頑張ろうと思った。
読んで頂きありがとうございます!!
はい、毎度のことながら亀更新で本当にごめんなさいっ!
書く、書く、書く、書く……俺は書くぞ(謎の気合)
切り替えまして、2周年企画『第1回人気投票』の結果を発表します!
ご参加頂き誠にありがとうございます!!
後書きでは1〜3位のキャラの発表です。
残りのキャラは活動報告にて発表です。
1位 今作の正ヒロイン『セレーナ』
2位 魔法バカな主人公『ユーリ』
3位 第2章から登場!『黒龍王ノワールロワ』
セレーナとユーリが1位、2位を取ったことに安心といいますか、感慨深いものがあります。
意外だったのは師匠のランクインですね。今後の活躍に期待です。
個人的に嬉しかったのは他のキャラで『作者』に1票入っていたことですね。ありがとうございます!!
これからも描い転にお付き合い下さい!
俺は再び長に会うため、広場の巨樹へと向かっていた。
比喩ではなく人生を変えるような話を聞いたわけだけど、意外にも次の朝はすんなりやってきた。
広場ではせっせと店の準備をしている人や、大きな声で呼び込みをしている人がいる。あ、ブリオおじさんか。
まぁブリオおじさんはいいとして、変わらないなぁ……本当に。
歩く速度は自然と緩やかになっていく。
そんな働くみんなの姿を視界に収めながら、よく知る日常を再記憶していく。
1日で世界が変わるようなことは起きない。
いや、それは嘘か。
一瞬で世界が変わることだってある。
俺は何度も経験してきた。
だけど、今ある日常を変えたくないとそう思う。
世界は大小様々でも変わる。
それでも変えたくないと、足掻くのは自由で勝手なことのはずだ。
少なくとも龍帝国が暗い未来へと世界を変えることだけは阻止する。
どうしても世界が変わってしまうと言うのなら明るい未来へ俺は変えたい。
この世界は俺を変えてくれた。
そして大切な人を、大切な居場所をくれた。
正直言えば、龍帝国ことなんかどうだっていい。
俺は魔法を極めて、集落のために働いて、セレーナ、アカネ、母さん、集落のみんなと笑って暮らして生きたい。
でもそのためにはきっと龍帝国を止めることが必要なのだと思う。
漠然とした状況ではあるけど前には進んでいる。
巨樹の目の前まで辿り着く。
俺は木と同化した扉を押し開きながら一歩前に進む。
不安な気持ちもある。
調査班として未知の場所へ行くこと、そしてその役目への不安。
けれど、もう一つの感情が前に進むことを催促してくる。
この世界に来てからこの感情が消えたことがない。むしろ増え続けている気がする。
俺はワクワクしている。
こんな状況で思うことじゃないかもしれないけど、やっぱり思ってしまう。
変わらないことを望んでいるはずが、変わることにワクワクしている。
矛盾してるな、俺。
でも、しょうがないよね。
それが俺なんだから。
よくわからない結論をだして、開き直った感情で長が待つ部屋まで俺は進んだ。
***
「そうか、そんなことがのぉ……」
長は何か考え込むように呟いた。
俺は調査班の話をする前に、昨日話せなかった森での出来事、俺が転生者であることを話した。
話している途中、珍しく長は何度も驚いた顔をした。
「その話は誰か他に話したか?」
「母さんには話したよ」
「うむ……その話はしばらく他の者には話さんほうがいいかもしれん。皆、今は龍帝国に気を取られておる。混乱はなるべく避けたいんじゃ」
俺は1つ頷き、その後調査班の話に移った。
話は簡潔にまとめると『入団式は近日中に行う』『調査班の班員は俺に委任する』『初調査の日程は俺に委任するが要相談』といった感じだ。
大体のことが俺に任せられているため、本当にいいのか? と思ってしまうが、確かに俺の任務を考えるとその方が都合がいいとも思える。
ここはありがたく、よく考えて有効的に進めていこう。
調査班の話が終わり、その後少し余談が続いた。
「それにしても、ユーリの子供とは思えぬ部分の正体がやっとわかったのじゃ」
「あぁー、そうだよね。じっ様も驚いた?」
俺はついつい気が緩み、じっ様呼びをしてしまうが長は気にしていない。むしろ、じっ様も表情が緩んでいるように見えた。
「龍神の加護の件もあったからのぉ、ただの子供ではないと思ってはいたが、まさか転生者とはのぉ」
「俺も最初は驚いたけど、色々ありすぎて……もっと早く伝えるべきだったよね」
「簡単に言えることではないじゃろうて、じゃが……ユーリは元の世界に帰りたいとは思わんのか?」
元の世界に帰る。
普通だったらそう思うんだろうけど……。
「俺、転生前の世界が好きじゃなかったんだ。それでこの世界に来て、みんなと出会ってこの世界が、みんなが好きになったから……この世界で生きていきたいって思ったんだ」
転生。
それは俺の世界を一瞬で変えた。
モノクロの世界を鮮やかな色で染めていくように、この世界が、みんなが俺に色を教えてくれた。
この世界が俺のいるべき場合だと思った。
「もう集落はユーリの場所じゃ」
「うん、ありがとう」
俺は溢れそうになるものをぐっと堪えて、笑ってみせる。
じっ様の言葉で、本当にここに居ていいのだと思える。
俺に優しすぎるよ。じっ様も、みんなも……。
嬉しさを噛み締めながら俺はより一層みんなのために頑張ろうと思った。
読んで頂きありがとうございます!!
はい、毎度のことながら亀更新で本当にごめんなさいっ!
書く、書く、書く、書く……俺は書くぞ(謎の気合)
切り替えまして、2周年企画『第1回人気投票』の結果を発表します!
ご参加頂き誠にありがとうございます!!
後書きでは1〜3位のキャラの発表です。
残りのキャラは活動報告にて発表です。
1位 今作の正ヒロイン『セレーナ』
2位 魔法バカな主人公『ユーリ』
3位 第2章から登場!『黒龍王ノワールロワ』
セレーナとユーリが1位、2位を取ったことに安心といいますか、感慨深いものがあります。
意外だったのは師匠のランクインですね。今後の活躍に期待です。
個人的に嬉しかったのは他のキャラで『作者』に1票入っていたことですね。ありがとうございます!!
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