魔法陣を描いたら転生~龍の森出身の規格外魔術師~
2 修羅場
みんなにはまた今度話をすると約束して今日は解散してもらった。
近くのベンチに座りセレーナが落ち着くのを待つ。
いつの間にか握られていた手は決して離さないと言うように固く繋がれている。
逃げるつもりなど微塵もないが、そんなところが可愛いと思ってしまうのは仕方ないと思う。
「遅くなってごめん」
「うん。無事に帰って来てくれてよかった」
セレーナは涙でボロボロだった顔をひまわりのような笑顔に変えてそう言った。
「元気だった?」
「何度か危ない時もあったけど、元気だったよ」
「何かあったの!?」
「い、いや……魔獣と戦ったり、迷宮を攻略したり?」
「目を逸らさないで!」
笑顔だった顔は一瞬にして不安いっぱいの表情に変わり俺に迫る。
あまりの気迫に俺は目を逸らしながら答えてしまう。
セレーナは「もうっ!」と言ってベンチに座り直すが「だから心配なんだよ……」と消えそうな声で呟く。
「もう二度とセレーナの側を離れたりしない――――約束する」
「うんっ」
気がつけば俺とセレーナは見つめ合い、ずっと見てきたはずなのに見惚れてしまう愛らしい顔がすぐそこにある。
小さく艶やかな唇が俺の思考を停止させ、胸の鼓動はうるさいほどに鳴り響く。
セレーナはギュッと目を閉じてその時を待っている。
優しくセレーナの肩を掴み俺は――――
「ユーリ?」
「「うわぁあああ!!!」」
俺とセレーナは声を揃え集落全体に木霊すほど驚いて叫ぶ。
俺の名を呼んだ正体はアカネだった。
心臓が止まるかと思った。本気で。
そして、俺は状況を理解していくほどに変な汗がダラダラと湧き流れる。
そう、アカネには集落に入ってから紹介するまでの間、俺の影の中に隠れているように言っていたのだ。
「あ、アカネさん……怒ってる?」
「べつに」
「マジですみませんでしたっ!!」
俺は全力で土下座をした。
この場で使い魔と主人の関係などありはしない。
「ゆ、ユーリくん? この女の子は誰なの?」
「私はユーリの家族」
「家族!? どういうことなのユーリくん!」
「いや、これには深い事情が……」
アカネさん、仰ってることは間違ってないよ。でもね、このタイミングで言うのはセレーナを混乱させてしま……
「ずっと一緒にいるって約束した」
強烈な追い撃ちが決まったね!
魔法を使ったわけでもなくアカネの一言でこの場が凍りつく。
「わたし……信じてたのに」
セレーナは俯き黙り込む。
アカネは全く気にする素振りもなくのびのびと背を伸ばしていた。
これが修羅場ってやつなのか!?
下手に弁解できないこの状況に俺も喋るに喋れなくなっていた。
沈黙が続く。
この拘束魔法のように縛り付ける空気を破ったのはアカネだった。そもそもアカネは気不味さなど感じていないかもしれないが。
「ユーリ、長って人に会わなくていいの?」
「あぁ、そう言えば……」
「その必要はないわい」
「長っ!」
「久しぶりじゃのぉ、ユーリ」
長は変わらない姿で俺たちのもとまでやって来る。
懐かしさとこの状況を変えてくれるだろうという希望が重なり合い長が救世主か何かに見えた。
「どうもお取り込み中だったかのぉ?」
「ははははー…………それよりもどうして長がここに?」
「うむ、ユーリの声が聞こえてな。ユーリも儂に話があったのではないのか?」
明るい声から一転、この集落を治める長としての声音で俺に問う。
「はい」
***
長の家に移動した俺たちは未だ気不味さを残したままでいた。
しかしまたもや俺を驚かせる人がいた。
「母さんっ!」
「ゆ、ゆ゛ぅ〜り゛ぃ〜」
母さんは会う前からフルスロットルで泣いていた。
涙が滝のように流れ、まともな言葉を発せられていない。
それでも俺を心配してくれて泣いてくれていると思うとじんわり心が温かくなる。
「心配かけてごめん……」
母さんは黙って俺を抱きしめた。
やっぱりあったかいな……。
今だけは子どもらしく甘えてもいいよね。
俺は気付かぬうちに張り詰めていた糸をゆっくりと緩めていった。
母さんも落ち着き、武龍団長でセレーナのお父さんであるシュタルクさん――お義父さんも長の家に来たところで会議場に移動する。
長の家にある会議場は主に集落会議や武龍団会議に使われていて、ざっと30人は余裕に座れるほどの広さがある。
会議場の1番奥にある茣蓙に長が座ると、長から見て左側にお義父さんと母さんが並んで座り、反対側にセレーナ、俺、アカネの順に座った。
読んで頂きありがとうございます!!
毎度ながら更新が遅くて申し訳ないです……。
段階的に更新間隔を短くしていきたいと思います!
目指せ2日毎更新!(遠い目)
近くのベンチに座りセレーナが落ち着くのを待つ。
いつの間にか握られていた手は決して離さないと言うように固く繋がれている。
逃げるつもりなど微塵もないが、そんなところが可愛いと思ってしまうのは仕方ないと思う。
「遅くなってごめん」
「うん。無事に帰って来てくれてよかった」
セレーナは涙でボロボロだった顔をひまわりのような笑顔に変えてそう言った。
「元気だった?」
「何度か危ない時もあったけど、元気だったよ」
「何かあったの!?」
「い、いや……魔獣と戦ったり、迷宮を攻略したり?」
「目を逸らさないで!」
笑顔だった顔は一瞬にして不安いっぱいの表情に変わり俺に迫る。
あまりの気迫に俺は目を逸らしながら答えてしまう。
セレーナは「もうっ!」と言ってベンチに座り直すが「だから心配なんだよ……」と消えそうな声で呟く。
「もう二度とセレーナの側を離れたりしない――――約束する」
「うんっ」
気がつけば俺とセレーナは見つめ合い、ずっと見てきたはずなのに見惚れてしまう愛らしい顔がすぐそこにある。
小さく艶やかな唇が俺の思考を停止させ、胸の鼓動はうるさいほどに鳴り響く。
セレーナはギュッと目を閉じてその時を待っている。
優しくセレーナの肩を掴み俺は――――
「ユーリ?」
「「うわぁあああ!!!」」
俺とセレーナは声を揃え集落全体に木霊すほど驚いて叫ぶ。
俺の名を呼んだ正体はアカネだった。
心臓が止まるかと思った。本気で。
そして、俺は状況を理解していくほどに変な汗がダラダラと湧き流れる。
そう、アカネには集落に入ってから紹介するまでの間、俺の影の中に隠れているように言っていたのだ。
「あ、アカネさん……怒ってる?」
「べつに」
「マジですみませんでしたっ!!」
俺は全力で土下座をした。
この場で使い魔と主人の関係などありはしない。
「ゆ、ユーリくん? この女の子は誰なの?」
「私はユーリの家族」
「家族!? どういうことなのユーリくん!」
「いや、これには深い事情が……」
アカネさん、仰ってることは間違ってないよ。でもね、このタイミングで言うのはセレーナを混乱させてしま……
「ずっと一緒にいるって約束した」
強烈な追い撃ちが決まったね!
魔法を使ったわけでもなくアカネの一言でこの場が凍りつく。
「わたし……信じてたのに」
セレーナは俯き黙り込む。
アカネは全く気にする素振りもなくのびのびと背を伸ばしていた。
これが修羅場ってやつなのか!?
下手に弁解できないこの状況に俺も喋るに喋れなくなっていた。
沈黙が続く。
この拘束魔法のように縛り付ける空気を破ったのはアカネだった。そもそもアカネは気不味さなど感じていないかもしれないが。
「ユーリ、長って人に会わなくていいの?」
「あぁ、そう言えば……」
「その必要はないわい」
「長っ!」
「久しぶりじゃのぉ、ユーリ」
長は変わらない姿で俺たちのもとまでやって来る。
懐かしさとこの状況を変えてくれるだろうという希望が重なり合い長が救世主か何かに見えた。
「どうもお取り込み中だったかのぉ?」
「ははははー…………それよりもどうして長がここに?」
「うむ、ユーリの声が聞こえてな。ユーリも儂に話があったのではないのか?」
明るい声から一転、この集落を治める長としての声音で俺に問う。
「はい」
***
長の家に移動した俺たちは未だ気不味さを残したままでいた。
しかしまたもや俺を驚かせる人がいた。
「母さんっ!」
「ゆ、ゆ゛ぅ〜り゛ぃ〜」
母さんは会う前からフルスロットルで泣いていた。
涙が滝のように流れ、まともな言葉を発せられていない。
それでも俺を心配してくれて泣いてくれていると思うとじんわり心が温かくなる。
「心配かけてごめん……」
母さんは黙って俺を抱きしめた。
やっぱりあったかいな……。
今だけは子どもらしく甘えてもいいよね。
俺は気付かぬうちに張り詰めていた糸をゆっくりと緩めていった。
母さんも落ち着き、武龍団長でセレーナのお父さんであるシュタルクさん――お義父さんも長の家に来たところで会議場に移動する。
長の家にある会議場は主に集落会議や武龍団会議に使われていて、ざっと30人は余裕に座れるほどの広さがある。
会議場の1番奥にある茣蓙に長が座ると、長から見て左側にお義父さんと母さんが並んで座り、反対側にセレーナ、俺、アカネの順に座った。
読んで頂きありがとうございます!!
毎度ながら更新が遅くて申し訳ないです……。
段階的に更新間隔を短くしていきたいと思います!
目指せ2日毎更新!(遠い目)
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コメント
黒眼鏡 洸
たく様
コメントありがとうございます!!
が、頑張ります!
なるべくお待たせしないように勤しんでいきますので、これからもお付き合い下さいっ。
たく
もっと書いてください!!
黒眼鏡 洸
A・L・I・C・E様
コメントありがとうございます!!
もっともな意見ですし、心配して下さり本当にありがとうございますっ!
無理のない範囲で更新間隔を短くしていきたいと思います!
A・L・I・C・E
更新間隔無理して短くして体調崩して長期休暇ってなったら意味ないので無理せずにやったほうが(でもできるだけ短いほうが)いいと思いますよ
黒眼鏡 洸
immortal様
コメントありがとうございます!!
応援して頂けて本当に嬉しいですっ!
頑張ります!