魔法陣を描いたら転生~龍の森出身の規格外魔術師~

黒眼鏡 洸

39 台座の魔法陣

 その後、俺たちは少し休憩をして再びこの部屋の探索を続けることにした。

 不死アンデッド化した黒龍王が守っていた部屋だ。何かしら……いや、ここに隠された魔道具があるはず。

 特に怪しいのは部屋の中央にある台座だ。

 壁や床が半壊している中、あの台座だけは全くの無傷。

 魔力は半分以上も回復した。短時間でこの回復量は普通だったらありえないが、これも龍神様から授かった器の影響か?

 まぁそれはいいとして、慎重に調べよう。

 俺たちは足場の悪い床を避けながら台座に近づいて行く。

 周囲に魔力の気配は感じないが、念のため魔眼も使い抜かりなく観察する。

「ユーリ……これ」

「あぁ……」

 辿り着いた台座には魔法陣が刻まれていた。

 恐らく巨樹の転移魔法陣と同じように触れることで魔力を感知して魔法が発動する仕組みだろう。

 この台座に魔道具が隠されていると考える方が自然だよな。

「アカネ、この魔法陣を発動しようと思う。万が一のことも考えて獣化しといてくれ」

「うん」

 アカネは淡い光に包まれて、その姿を白狼へと変える。

 気のせいかもしれないが少し大きくなったか? 魔力の量も増えてるような……。

「ガウガウ……」(力が湧いてくる……)

「体に異常はないか?」

「ガウ……ガウガウ」(うん……魔力が増えたみたい)

 まぁ異常がないなら後でゆっくり調べよう。

 急に魔力が増えたのは少し気になるが、今は魔道具を見つけ出したい。

 魔道具を見つけることで次の攻略につながる気がする。

「よし、いくぞ」

「ガウ」(うん)

 俺は強化魔法と結界魔法を施してから、恐る恐る右手を魔法陣の中央にのせる。

 予想通り台座の魔法陣は俺の魔力に反応して、中央から蒼い光が刻まれた道を辿っていく。

 魔法陣が発動する。

 突如、俺の意識を何かが吸い込むように奪っていく。

 なんだ!?

 抵抗しようにも魔力が言うことを聞かない。

 むしろ魔力が意識を吸い込む方へと導いているようにも思える。

「ガウッ!」(ユーリッ!)

 俺の名前を叫び呼んでいるアカネの声が遠くに聞こえる。

 いつもそうだ。

 俺はアカネを心配させる。

 それじゃダメなんだ!

 無理矢理に魔力を自身に引き戻していく。

 魔力は素直に従おうとせず抵抗してくる。

 重い綱を引くように魔力を少しずつ引き戻す。

 俺の魔力だろうがッ! 俺に従え!

 魔力はズルズルと器に引き戻されていく。

 本来、魔力の流れに逆らうことは魔術を否定することに近い。

 しかし俺は今、全力で魔力の流れに逆らっている。

 半分ほどの魔力が器に戻ってきている。あと少しだ。

 負けてたまるかぁぁああアアアーーッ!!

「はぁ……はぁ……」

「ガウッ」(ユーリッ)

「……うん……大丈夫だ」

 俺は膝をつきアカネの肩を借りる。

 かなり強引だったが全ての魔力が戻ってきた。

 何とかなったな……。

 意識もはっきりしてる。

『お主は末恐ろしいな』

 突然女の人の声が思念魔法を使っているように頭の中に直接届く。

 この声……どこかで聞いたことがあるような。

『ふむ、せっかく妾を倒したのじゃ。こちらから出向くとするか』

 女の人の声はどこか嬉々としているように感じる。

 妾……わらわ……あっ!

 その時、台座の魔法陣が再び光を放つ。

 そしてそこには黒を基調とした特徴的な着物ドレスを着て、黄金こがね色の髪をなびかせた女性が仁王立ちでこちらを見下ろしていた。

「久方ぶりじゃな」

「あなたはあの時の・・・・!」

「……誰?」

 いつの間にか人化したアカネが俺の腕をがっしりと抱き込み、不機嫌極まりない顔で目の前の金髪美女さんを睨みつけている。

 どうしてか、俺の腕を掴む手がどんどん強くなっているような……。

「若いのぅ! 主人をよく慕っている。いい使い魔をもったものじゃ」

「……ありがとうございます」

 アカネを褒められ素直に嬉しくなる。

 どうやらアカネも悪い気持ちではないらしい。腕を掴む力も弱まっているようにも思える。……よかった。

「その……あなたは誰なんですか?」

 俺は気持ちを切り替え、真っ先に確認したいことを訪ねる。

「妾は初代龍王――黒龍王ノワールロワじゃ!」

「えッ」

「ん?」

 俺は呆気にとられ、アカネは頭の上にハテナが浮かんでいる。

 黒龍王? 黒龍王は俺がさっき倒したばかりだよな? どういうことだ?

 俺が倒した黒龍王は偽物で、目の前の金髪美女さんが本物? あぁーさっぱりわからない。

 謎が深まるばかりで答えが見えてこない。

「お主の疑問は最もじゃ。さて、何から話したらいいのやら……」

 黒龍王(?)は額に指を当てて悩む素振りを見せる。

 そして何度か頷き再び話し始める。

「これは昔の話じゃ」

 黒龍王が確認するように俺たちを見る。

 俺は頷き、黒龍王は話を続けた。

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