魔法陣を描いたら転生~龍の森出身の規格外魔術師~
28 迷宮
迷宮。
それは世界中に十数ほど存在する魔法の建造物。迷宮そのものが魔法だと言われている。
神の魔法によって創られ、その最深部には必ず強力な魔道具が隠されている。
しかし、迷宮に一度入ったら迷宮の主を倒すまで外に出ることはできない。それが迷宮のルールだ。
神は何の目的で迷宮を創ったのかは、それこそ神のみぞ知るところだが、迷宮に秘められた謎は今もなお人々を魅了し続けている。
周りを見渡すと、半円状に並ぶ壁に囲まれていた。壁に手を当て魔力感知を使うと、壁が厚く壊して出ることは難しそうだとわかる。
つまり、迷宮を攻略することでしか脱出は不可能だと推測できる。
「ごめんなさい……」
「何で?」
「私が魔方陣に触れたから」
アカネは悔しそうに、そして拳を強く握り込んでいた。
俺はアカネのことを一切咎めるつもりはなかった。逆に、迷宮に出会えてワクワクしていることが申し訳なく感じる。
「アカネには悪いんだけど、俺は今すっごくワクワクしてる」
「え?」
「だって、迷宮だぞ! 世界の不思議、神の魔法、永久の謎だぞ!」
「うん?」
熱く語る俺の言葉がイマイチわからない、といった様子のアカネ。
俺はそのままの調子で言葉を続ける。
「憶測だけど、迷宮を攻略しない限り外には出られない」
案の定、責任を感じているのかアカネの表情に陰りが見える。
俺が言うことは決まっていた。
「でも大丈夫だ。俺とアカネなら攻略できる」
アカネの表情が、変わっているのは一目瞭然だった。
それは励ましではなく、アカネとなら攻略できると確信に近い思いだ。
俺は未知への好奇心を、初めて魔法を見たときのような心が浮き立つ思いを感じていた。
「行こう、アカネ」
一度アカネの顔を見てから、俺は扉へと視線を移す。
「んっ!」
そこには、先ほどまでとは別人のような頼もしい相棒がいた。
***
扉を押し開くと、真っ直ぐに伸びた薄暗い通路が俺たちを待ち構えていた。
灯りは壁にある等間隔に並べられた光る鉱石のみで、かろうじて足下が見える程度だ。
どこまで道が続いているのかは分からない。
ひとまず十分な明るさを確保するべく、俺は光魔法で光源を創り出す。
「光よ」
よし、ある程度の視界は確保できた。
明るくなったことで、壁や天井によくわからない幾何学模様が刻まれていることがわかる。
俺が前、アカネは後ろを警戒しながら、慎重に道を進む。
しばらく進むと2つの分かれ道に遭遇する。
「右か、左か」
「どうする?」
魔力感知などを使って限界まで調べたが、どちらの道も続いている。
「仕方ない。手当たり次第行くしかないか」
「うん」
俺たちは左の道へと進む。
幸い魔獣と遭遇することはなく進めていた俺たちだが、少し進んでは分かれ道が現れて右や左へとそれの繰り返しが続いていた。
進んでも、進んでも変わらない風景はますます俺たちを混乱させる。
一度立ち止まり、何かしらヒントはないか考える。
「アカネ、音や匂いとか変わったことはないか?」
「ない」
ちなみに、進んでいる間でアカネは魔獣の姿と、人の姿を自由に変えられることがわかった。
魔獣の姿の方が、嗅覚や聴覚が優れていて、魔力の操作もしやすいらしい。
「うーん、どうしたものかなぁ」
俺は腕を組み下を向くと、自らの手に嵌めている指輪が目に入った。
あ! あぁーっ! 何で今まで気がつかなかったんだ。
「アカネ、もしかしたらこの状況を打破できるかも」
「え?」
「魔書よ」
俺の呼び声に応えて、右手に嵌めている指輪が眩い光を出しながら、書の形へと変わる。
記録の魔書は俺の魔書で、その力は所有者にかかわる魔力、魔法について全ての情報を記録するというものだ。
ここは迷宮。迷宮は神の魔法と言われている。
つまり、魔法による阻害なら記録の魔書の効果対象になり得る。魔書を使ってマッピングをすれば、正しい道が見つけ出せるかもしれない。
「魔書よ、道を記録してくれ」
魔書はひとりでに空白のページを開くと、そこに2つの矢印と、地図らしき線が浮き上がる。
俺のイメージが魔書に大きく反映されるため、想像通りに再現されている。矢印が俺たちを表し、地図は通ってきた道を記しているはずだ。
所々に、道の線がぼやけている箇所がある。
おそらく、その道が魔法によって阻害されている道のはずだ。
「よし、これで間違った道を繰り返し通る心配はなくなったな」
魔書に記録できるのは一度通った道だけだが、それでも攻略がしやすくなることは確かだ。
「気づくの遅い」
「えー」
手厳しいアカネさんの一言が、グサリと俺の胸を突き刺す。
めげない、めげない。
ユーリはできる子。
「き、気を取り直して、攻略再開だ。おー!」
「ん」
はい、真面目にやります。だから、その目をお止めになってください……。
迷宮の緊張感よりも、後ろから感じる無言の圧力に冷や汗が出ているという事実。
使い魔との関係性は様々だと感じた俺だった。
それは世界中に十数ほど存在する魔法の建造物。迷宮そのものが魔法だと言われている。
神の魔法によって創られ、その最深部には必ず強力な魔道具が隠されている。
しかし、迷宮に一度入ったら迷宮の主を倒すまで外に出ることはできない。それが迷宮のルールだ。
神は何の目的で迷宮を創ったのかは、それこそ神のみぞ知るところだが、迷宮に秘められた謎は今もなお人々を魅了し続けている。
周りを見渡すと、半円状に並ぶ壁に囲まれていた。壁に手を当て魔力感知を使うと、壁が厚く壊して出ることは難しそうだとわかる。
つまり、迷宮を攻略することでしか脱出は不可能だと推測できる。
「ごめんなさい……」
「何で?」
「私が魔方陣に触れたから」
アカネは悔しそうに、そして拳を強く握り込んでいた。
俺はアカネのことを一切咎めるつもりはなかった。逆に、迷宮に出会えてワクワクしていることが申し訳なく感じる。
「アカネには悪いんだけど、俺は今すっごくワクワクしてる」
「え?」
「だって、迷宮だぞ! 世界の不思議、神の魔法、永久の謎だぞ!」
「うん?」
熱く語る俺の言葉がイマイチわからない、といった様子のアカネ。
俺はそのままの調子で言葉を続ける。
「憶測だけど、迷宮を攻略しない限り外には出られない」
案の定、責任を感じているのかアカネの表情に陰りが見える。
俺が言うことは決まっていた。
「でも大丈夫だ。俺とアカネなら攻略できる」
アカネの表情が、変わっているのは一目瞭然だった。
それは励ましではなく、アカネとなら攻略できると確信に近い思いだ。
俺は未知への好奇心を、初めて魔法を見たときのような心が浮き立つ思いを感じていた。
「行こう、アカネ」
一度アカネの顔を見てから、俺は扉へと視線を移す。
「んっ!」
そこには、先ほどまでとは別人のような頼もしい相棒がいた。
***
扉を押し開くと、真っ直ぐに伸びた薄暗い通路が俺たちを待ち構えていた。
灯りは壁にある等間隔に並べられた光る鉱石のみで、かろうじて足下が見える程度だ。
どこまで道が続いているのかは分からない。
ひとまず十分な明るさを確保するべく、俺は光魔法で光源を創り出す。
「光よ」
よし、ある程度の視界は確保できた。
明るくなったことで、壁や天井によくわからない幾何学模様が刻まれていることがわかる。
俺が前、アカネは後ろを警戒しながら、慎重に道を進む。
しばらく進むと2つの分かれ道に遭遇する。
「右か、左か」
「どうする?」
魔力感知などを使って限界まで調べたが、どちらの道も続いている。
「仕方ない。手当たり次第行くしかないか」
「うん」
俺たちは左の道へと進む。
幸い魔獣と遭遇することはなく進めていた俺たちだが、少し進んでは分かれ道が現れて右や左へとそれの繰り返しが続いていた。
進んでも、進んでも変わらない風景はますます俺たちを混乱させる。
一度立ち止まり、何かしらヒントはないか考える。
「アカネ、音や匂いとか変わったことはないか?」
「ない」
ちなみに、進んでいる間でアカネは魔獣の姿と、人の姿を自由に変えられることがわかった。
魔獣の姿の方が、嗅覚や聴覚が優れていて、魔力の操作もしやすいらしい。
「うーん、どうしたものかなぁ」
俺は腕を組み下を向くと、自らの手に嵌めている指輪が目に入った。
あ! あぁーっ! 何で今まで気がつかなかったんだ。
「アカネ、もしかしたらこの状況を打破できるかも」
「え?」
「魔書よ」
俺の呼び声に応えて、右手に嵌めている指輪が眩い光を出しながら、書の形へと変わる。
記録の魔書は俺の魔書で、その力は所有者にかかわる魔力、魔法について全ての情報を記録するというものだ。
ここは迷宮。迷宮は神の魔法と言われている。
つまり、魔法による阻害なら記録の魔書の効果対象になり得る。魔書を使ってマッピングをすれば、正しい道が見つけ出せるかもしれない。
「魔書よ、道を記録してくれ」
魔書はひとりでに空白のページを開くと、そこに2つの矢印と、地図らしき線が浮き上がる。
俺のイメージが魔書に大きく反映されるため、想像通りに再現されている。矢印が俺たちを表し、地図は通ってきた道を記しているはずだ。
所々に、道の線がぼやけている箇所がある。
おそらく、その道が魔法によって阻害されている道のはずだ。
「よし、これで間違った道を繰り返し通る心配はなくなったな」
魔書に記録できるのは一度通った道だけだが、それでも攻略がしやすくなることは確かだ。
「気づくの遅い」
「えー」
手厳しいアカネさんの一言が、グサリと俺の胸を突き刺す。
めげない、めげない。
ユーリはできる子。
「き、気を取り直して、攻略再開だ。おー!」
「ん」
はい、真面目にやります。だから、その目をお止めになってください……。
迷宮の緊張感よりも、後ろから感じる無言の圧力に冷や汗が出ているという事実。
使い魔との関係性は様々だと感じた俺だった。
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