魔法陣を描いたら転生~龍の森出身の規格外魔術師~
27 謎の女人
気がつくと、そこは青々とした草原にある小さな丘の上だった。空と雲と草原しかない、ただただ広大な場所。
俺はこの場所を知らないはずなのに、何故か懐かしさというか、心地良さのようなものを感じていた。
「アカネは?」
辺りを見渡してもアカネの姿が見えない。
こんなに何もない場所なら、アカネの姿を見つけることは容易いはずだ。
しかし、現状ではアカネの姿はない。
つまり、アカネは俺と違う場所にいる。
何故そんなことが言い切れるのかというと、アカネと俺は契約魔法を結んでいるため、契約を破棄しない限りどこにいてもお互いに魔力を感じ取れるからだ。
今もアカネの魔力は感じ取れているということは、アカネはどこかで生きている。
そして、契約魔法の派生的な魔法に召喚魔法がある。
召喚魔法とは契約を結んでいる使い魔を自分の元に呼び出す魔法だ。
使い魔との距離が離れているほど、魔力を消耗するが召喚できないということはそうない。
「召喚よ」
俺はアカネを呼び出すため、召喚魔法を使う。
おかしい。
魔法が発動しない。
俺をからかうかのように風が吹き、少し虚しさを感じる。
なんでー。
『無理じゃよ』
後ろから声がして俺はすぐさま振り返る。
そこには先ほどまでいなかったはずの女の人がいた。
黒を基調とした着物のようなドレスに身を包み、光を宿した金色の髪をなびかせている。
母さんとはまた違った美人という印象がある。
髪と似た金色の瞳が俺を見定めるように見ている。
「ここはお主の精神世界じゃ」
「精神世界?」
よく分からない人から、よく分からない単語が飛び出して少し混乱しそうになるが、俺は平常心を装って反応する。
「そうじゃ。ここはお主の心の中と言ってもいい。だから、お主の使い魔は呼び出せぬ」
「それなら、何故あなたはここに? あなたは誰ですか?」
俺は最もな疑問を謎の女人にぶつけるが、謎の女人は不敵な笑みを浮かべる。
何か変なことを言ったか?
ますます謎が深まる俺の頭の中は、あの有名な少年探偵に頼りたいと考えていた。
「それはまだ言えぬ」
謎の女人はゆっくりと自然な動きで俺に近づき、俺の体に触れる。
警戒していたはずなのに、いとも容易く謎の女人は俺の領域に侵入してみせた。
この人は只者じゃないっ!
「そんなに怖がるでない」
そう言って謎の女人は優しく微笑む。
その微笑みの裏に何かあるのか、それとも何もないのか、今の俺に読み取ることはできない。
ただ、この人が今のところ敵でないことだけはわかった。
『待っているぞ――――選ばれし者よ』
謎の女人はそう言い残すと、世界に溶け込むように消え去ってしまった。
「待って! それはどういう意味……消えた」
待っているって、どこに? 選ばれし者って、何に? わけがわからん。
謎だけを残された俺は考えることに疲れて草原に寝っ転がる。
晴れ晴れとした空と、草原を駆ける風が気持ちいい。
少し目を瞑ると、深い闇から浮かび上がるように俺は眠りから覚める。
「起きた?」
「あぁ、おはよう。アカネ」
「もう元気?」
「うん、もう大丈夫だ……ずっと膝枕してくれていたのか?」
俺は後頭部に感じる柔らかさに別れを告げ、上体を起こす。
「うん」
「ありがとな」
「私はユーリの使い魔だから、当然」
俺は健気なアカネの頭を無性に撫でたくなり、優しく頭を撫でる。
絹のようなきめ細かく、柔らかい髪は撫でている俺の方が心地良い気分になってしまうほどだ。
アカネはというと目を細め、頬を緩めている。どうやら気持ちいいのかもしれない。
リラックスムード全開の時間もいい加減のところで終わりにして、俺たちは本来の目的である地下空間の探索を始める。
「それにしても、広いな」
「うん」
集落がすっぽりと入りそうなほど広い地下空間は昼夜を問わず明るい。
森の中はずっと薄暗かったため、まだこちらの方がいいような気もする。
巨樹の周りを重点的に調べていると、アカネが何かを見つけたらしい。
「これ、魔法陣?」
「お! これは彫刻型の魔法陣だな」
彫刻型の魔法陣とは、詠唱型(声に出して魔法陣を展開する)と違って、あらかじめ魔法陣を彫刻することで発動する魔法陣だ。
魔力伝導(魔力の伝わりやすさ)が高いものに彫刻することで、詠唱型よりも早く魔法を発動できるという利点がある。
欠点としては彫刻する魔法陣の大きさが魔法の威力に関係するのと、彫刻した魔法陣の魔法しか使えないため、応用が利きにくい。
「この魔法陣は……あ、アカネ!」
「ん?」
アカネが魔法陣に触れた瞬間、彫刻された道を勢いよく蒼い光がなぞり始める。
あっという間に魔法陣は完成し発動する。
「掴まれ!」
「うん!」
俺は手を伸ばし、その手をアカネが掴む。
魔力を感じただけで発動する魔法陣がある。今回のもそういった罠系や半自動的魔法陣だ。
こういった魔法陣は一度発動してしまうと止められないものが多い。
魔法陣から目を開けられないほどの光が溢れ出す。
光が収まった頃、再び目を開けるとそこには彫刻の施された大きな扉が俺たちを待ち構えていた。
「ここは――――」
扉には六体の龍が刻まれていて、記憶が確かならそれは六柱龍の姿のはずだ。
そして、もう1つ特徴的なのは扉の両サイドにあるトーテムポールのような柱だ。
『――――迷宮』
『さぁ龍神に選ばれし者よ、妾はここじゃ』
俺はこの場所を知らないはずなのに、何故か懐かしさというか、心地良さのようなものを感じていた。
「アカネは?」
辺りを見渡してもアカネの姿が見えない。
こんなに何もない場所なら、アカネの姿を見つけることは容易いはずだ。
しかし、現状ではアカネの姿はない。
つまり、アカネは俺と違う場所にいる。
何故そんなことが言い切れるのかというと、アカネと俺は契約魔法を結んでいるため、契約を破棄しない限りどこにいてもお互いに魔力を感じ取れるからだ。
今もアカネの魔力は感じ取れているということは、アカネはどこかで生きている。
そして、契約魔法の派生的な魔法に召喚魔法がある。
召喚魔法とは契約を結んでいる使い魔を自分の元に呼び出す魔法だ。
使い魔との距離が離れているほど、魔力を消耗するが召喚できないということはそうない。
「召喚よ」
俺はアカネを呼び出すため、召喚魔法を使う。
おかしい。
魔法が発動しない。
俺をからかうかのように風が吹き、少し虚しさを感じる。
なんでー。
『無理じゃよ』
後ろから声がして俺はすぐさま振り返る。
そこには先ほどまでいなかったはずの女の人がいた。
黒を基調とした着物のようなドレスに身を包み、光を宿した金色の髪をなびかせている。
母さんとはまた違った美人という印象がある。
髪と似た金色の瞳が俺を見定めるように見ている。
「ここはお主の精神世界じゃ」
「精神世界?」
よく分からない人から、よく分からない単語が飛び出して少し混乱しそうになるが、俺は平常心を装って反応する。
「そうじゃ。ここはお主の心の中と言ってもいい。だから、お主の使い魔は呼び出せぬ」
「それなら、何故あなたはここに? あなたは誰ですか?」
俺は最もな疑問を謎の女人にぶつけるが、謎の女人は不敵な笑みを浮かべる。
何か変なことを言ったか?
ますます謎が深まる俺の頭の中は、あの有名な少年探偵に頼りたいと考えていた。
「それはまだ言えぬ」
謎の女人はゆっくりと自然な動きで俺に近づき、俺の体に触れる。
警戒していたはずなのに、いとも容易く謎の女人は俺の領域に侵入してみせた。
この人は只者じゃないっ!
「そんなに怖がるでない」
そう言って謎の女人は優しく微笑む。
その微笑みの裏に何かあるのか、それとも何もないのか、今の俺に読み取ることはできない。
ただ、この人が今のところ敵でないことだけはわかった。
『待っているぞ――――選ばれし者よ』
謎の女人はそう言い残すと、世界に溶け込むように消え去ってしまった。
「待って! それはどういう意味……消えた」
待っているって、どこに? 選ばれし者って、何に? わけがわからん。
謎だけを残された俺は考えることに疲れて草原に寝っ転がる。
晴れ晴れとした空と、草原を駆ける風が気持ちいい。
少し目を瞑ると、深い闇から浮かび上がるように俺は眠りから覚める。
「起きた?」
「あぁ、おはよう。アカネ」
「もう元気?」
「うん、もう大丈夫だ……ずっと膝枕してくれていたのか?」
俺は後頭部に感じる柔らかさに別れを告げ、上体を起こす。
「うん」
「ありがとな」
「私はユーリの使い魔だから、当然」
俺は健気なアカネの頭を無性に撫でたくなり、優しく頭を撫でる。
絹のようなきめ細かく、柔らかい髪は撫でている俺の方が心地良い気分になってしまうほどだ。
アカネはというと目を細め、頬を緩めている。どうやら気持ちいいのかもしれない。
リラックスムード全開の時間もいい加減のところで終わりにして、俺たちは本来の目的である地下空間の探索を始める。
「それにしても、広いな」
「うん」
集落がすっぽりと入りそうなほど広い地下空間は昼夜を問わず明るい。
森の中はずっと薄暗かったため、まだこちらの方がいいような気もする。
巨樹の周りを重点的に調べていると、アカネが何かを見つけたらしい。
「これ、魔法陣?」
「お! これは彫刻型の魔法陣だな」
彫刻型の魔法陣とは、詠唱型(声に出して魔法陣を展開する)と違って、あらかじめ魔法陣を彫刻することで発動する魔法陣だ。
魔力伝導(魔力の伝わりやすさ)が高いものに彫刻することで、詠唱型よりも早く魔法を発動できるという利点がある。
欠点としては彫刻する魔法陣の大きさが魔法の威力に関係するのと、彫刻した魔法陣の魔法しか使えないため、応用が利きにくい。
「この魔法陣は……あ、アカネ!」
「ん?」
アカネが魔法陣に触れた瞬間、彫刻された道を勢いよく蒼い光がなぞり始める。
あっという間に魔法陣は完成し発動する。
「掴まれ!」
「うん!」
俺は手を伸ばし、その手をアカネが掴む。
魔力を感じただけで発動する魔法陣がある。今回のもそういった罠系や半自動的魔法陣だ。
こういった魔法陣は一度発動してしまうと止められないものが多い。
魔法陣から目を開けられないほどの光が溢れ出す。
光が収まった頃、再び目を開けるとそこには彫刻の施された大きな扉が俺たちを待ち構えていた。
「ここは――――」
扉には六体の龍が刻まれていて、記憶が確かならそれは六柱龍の姿のはずだ。
そして、もう1つ特徴的なのは扉の両サイドにあるトーテムポールのような柱だ。
『――――迷宮』
『さぁ龍神に選ばれし者よ、妾はここじゃ』
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