魔法陣を描いたら転生~龍の森出身の規格外魔術師~

黒眼鏡 洸

12 雷撃と白狼

 「お前は!」

 この前の魔獣……だよな。

 茜眼の白狼は俺を見つめている。その表情は鋭いものの、今までの魔獣とは何か違う気がした。

 一瞬の静寂が過ぎ去り、俺と白狼の周りには100近くのグールアントで埋め尽くされる。

 グールアントが鳴らす、カチカチという音が重なり合って妙な威圧感を感じる。

 くそっ……どんだけいるんだよ。

 俺は隣にいる白狼を横目で見る。

 白狼はグールアントを見渡しながら、何かを探しているように見える。

「ガウッ!」

 まるで俺に何かを訴えるているように、白狼が一方を向いて吠える。

 俺は白狼の吠えた方向をよく見ると、そこには微かにだがグールアントたちとは違う魔力を感じる。

 もしかして、グールアントクイーンか?

「お前……」

 この茜眼の白狼はあの数のグールアントの中から、グールアントクイーンの魔力だけを見分けたって言うのか。

「ガァァウ!」

 白狼が戦うぞと、言っているように感じる。俺は白狼の能力と行動に少し戸惑うが、今は敵を倒すことを優先する。

「目標はグールアントクイーンだ」

「ガウッ!!」

 白狼の返事を合図に俺たちは走り出す。

 よく見ればグールアントクイーンへの道を阻むように、異様にグールアントの数が多い。

「雷撃よ唸れ!」

 魔法陣から放たれた雷撃は大蛇のように次々と、道を阻むグールアントたちに襲いかかる。

「ガァウッ!」

 白狼のひと吠えで複数の魔法陣が展開される。展開された魔法陣からは俺と同じように雷撃が放たれ、次々とグールアントを殲滅していく。

 え、強くない? この白狼、俺のオリジナル魔法を直ぐにマネしちゃったよ?

 俺は困惑しつつも、負けじと雷撃を放っていく。

 気がつくと、グールアントはその数を数えられるまでに減らしている。少し先にはグールアントより少し大きい個体が、俺たちを待ち構えていた。

「グールアントクイーンだ! 俺が動きを止めるから、お前は魔法を放てるようにしといてくれ!」

「ガウッ!!」

 俺の指示に白狼が頷く。俺はそれを確認すると、すぐさまグールアントクイーンへと対峙する。

 グールアントクイーンは一歩も動かず俺を待ち構えている。その不動の佇まいから、女王としての品格を感じさせられる。

『キュキィィィイ!!』

「悪いが俺は負けない!!」

 俺は魔法をイメージしていく。

「土よ、掴め!」

 俺の言葉に従い、地面はグールアントクイーンの脚を掴む。グールアントクイーンは脚を抜き出そうとするが、更に土がまとわりついて逃げることは出来ない。

「自然よ、縛りつけろ!」

 次に使ったのは自然魔法だ。地面に現れた魔法陣から太い木の根のようなものが、グールアントクイーンを縛りつける。

 グールアントクイーンの動きを封じた。

「今だ!」

 俺が叫ぶと、それに応えるように白狼は特大の魔法陣を3つグールアントクイーンの周りに展開させる。

 あれは上級レベルの魔法陣だ。それを3つも同時に、それもあの大きさで……とんでもないやつだ。

「ガァウゥゥゥ!!」

 白狼の遠吠えが響き渡ると、魔法陣から先ほどとは比べ物にならない雷撃が放たれる。三方向から放たれた雷撃がグールアントクイーンを襲う。

『キュキィィイ!!!』

 グールアントクイーンはその身を黒くして力尽きた。

 今回はあの白狼に助けられたな。

「ガウッ!」

 白狼が俺のもとまで来る。

「なんだ?」

 白狼が俺の手をペロッとひと舐めしてから、カプッと噛んだ。





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