魔法陣を描いたら転生~龍の森出身の規格外魔術師~

黒眼鏡 洸

2 誘いの灯り

 俺は母さん、長、そしてセレーナに別れを告げてから、成龍の儀へと続く道を進んでいた。木に覆われた道は、進むごとにその暗さを深めていく。

 道幅はひと2人程度が歩ける広さになっていて、まだ儀式の場までは遠いようだ。俺は一歩ずつ着実に足を進めていく。

 しばらく進んでいると、目の前に分かれ道が現れる。

 右と左……確か右に進めって言ってたよね。

 俺は長の話を思い出し、右に進むことにする。俺が歩き出したそのとき、左の道に人影を一瞬捉える。

 誰だろう?

 俺は気になって足を止める。そして追うか、追わないか逡巡してから一度確認だけでもと思い、左の道へと足を変える。

 左の道を進んでいると、少し先に小さな灯りが見えてくる。暗い森の道だ。たとえ小さな灯りだと言えど、不自然に感じる。

「そこに誰かいるんですか?」

 俺は問いかける。しかし、返答はない。

 すると、小さな灯りは道の奥へと進んで行ってしまう。俺は慌ててその灯りを追いかける。

 何で逃げるんだろう? まさか魔獣? でも、魔獣の気配じゃないよな……。

 灯りは俺との距離を一定に保つように逃げる。何らかの意図があるようにしか考えられない。俺はこれ以上踏み込むのは危険だと思い、仕方なく魔法を使うことにする。

「自然よ」

 使うのは自然魔法。こういった草木が多い場所は自然魔法との相性がよく、適していると言える。

 イメージは蔓を伸ばし、相手を捕捉する感じだ。手荒にならないように、細心の注意を払う。

 あれ?

 魔法は発動したが捕まえた気がしない。さらに、あの小さな灯りも消えてしまった。手掛かりがなければ、これ以上追うことは不可能だ。

 何だったんだろう?

 俺はもやもやとした気持ちが残るものの、成龍の儀を受けるために来た道を戻ることにする。

 だが、それは叶わない。何故なら――

 道が消えた?

 先ほどまで歩いて来た道が、まるでなかったかのように木々によって遮られていた。

 いや、俺は迷い込んでしまったのだ。

 この未知の森に――

 どうする?

 俺はひとまず、消えた道のことは保留にして次に取るべき行動を考える。

 一つは、<上級>魔法を使って強引に道をひらく。

 もう一つは前に進み、出口を探す。

 この二択か……。

 集落から助けが来ることはまずないだろう。あるとしても1ヶ月以上経ってからだ。それではここまで来た意味がない。

 俺は強くなるためにここまで来たのだから、止まっている場合じゃない。最初っから決まってたか。

 俺は前に進む。

 もし、間違っていたらそのときはそのときだ!

 魔法は使える。なら、何とかできる。そう、俺には魔法がある!

 よし、進もう。





 俺はまだ知らなかった。この先に何が待っているのかを。





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