魔法陣を描いたら転生~龍の森出身の規格外魔術師~
サイドストーリー4 黒く染まる心
「クソっ! クソォォーー!!」
何であいつばっかり! 人族の分際で!
俺様は言葉に出来ない感情が、胸の中で暴れる。酷く気分が悪い。パパから聞いた話では、あのユーリは成龍の儀を受けるらしい。
何故なんだ!
そのことばかりが俺様の頭を埋め尽くす。歳だって変わらない。育った場所だってさほど変わらない。それなのに何故?
そのときだ。最近、俺の頭の中に聞こえてくる声が話しかけてくる。
『そうよね。よくわかるわ、あなたの気持ち』
頭に響く声は女のものだ。俺様がイラついているとき程、話しかけてくる。
『あなたは正しい。龍人族はどの種族よりも高位の存在よ。人族が出過ぎた真似をするなんて、烏滸がましいにも程があるわ』
そうだ! この声の言う通りだ。この集落のやつらはおかしい。パパもママも、みんなあの人族に騙されてるんだっ!
俺様はあの人族が集落のやつらを皆、騙しているのだと結論づける。
ん? あいつらは確か、パパの部下のやつだ。
俺様は、少し先に第三班の班員を見つける。無視して通り過ぎようと思ったが、興味深い話をしているようだったので木陰に隠れ、聴くことにする。
「聞いたか?」
「ん? あぁー、暴竜の件についてか?」
「そうそう、何でも『終わりなき森』から来たとか」
『終わりなき森』は犯龍――罪を犯した龍人――を裁くための場所だって、パパから聞いたことがある。
何でも、一度入ったら二度と戻ることはできないとか、何とか。凶暴な魔獣が森の中でひしめき合っているらしい。
「『終わりなき森』ねぇ……あそこには俺たちじゃ手に負えないような化け物ばかりがいるって話だろ? はぁ、怖い怖い」
「俺が言いたいのそこじゃなくて、何で『終わりなき森』から来たのかってことだよ」
「お、確かに。今まで、あんな数の魔獣が『終わりなき森』から来たなんて話、聞いたことがなかったな」
そうなのか。まぁ、俺様には関係のない話だ。
「んー……さっぱり分からん」
「そういうことは下っ端の俺たちが考えることじゃねーよ。それより、副団長の息子さんの話だよ!」
「ん? あぁ、ユーリくんだっけ?」
「いやぁーあの歳で『成龍の儀』が受けられるなんてな。ほんとスゲェーよ」
ちっ。こいつらも、あの人族の話をするのか……胸糞が悪い。どいつも、こいつも!
俺様の中に潜む負の感情が、極限の状態を超える。そのとき、再びあの声が聞こえる。
『なら、消してしまえばいい』
消す……どうやって?
俺様は自然と答えを求める。消すこと自体に異論も疑問もない。知りたいのはどうしたら上手くあいつを消せるか、それだけだ。
『そうねぇ。これなんて如何かしら? その子が『成龍の儀』を受ける間際に、『終わりなき森』に誘うのよ』
それは……。
俺様は少し戸惑う。『終わりなき森』に誘うということは、実質的な死を意味するからだ。そもそも、消すということはそういうことではあるのだが、俺様の心は覚悟を決めきれないでいる。
『あなたは彼が恨めしくはないの? 自分より下等な分際に先を越されて、それでいいの?』
俺様を試すように、女の声は頭の中に直接語りかけてくる。
嫌だ。そんなこと許せない。俺様は、俺様は、誰よりも優れた龍人だ! 全ての者の上に立つ者だ! 邪魔なやつは全て消す。
白いキャンパスが黒く染まっていくように、俺様の中にあった何かも真っ黒に変わった、そんな気がした。
『そう! それでいいの! さぁ、お行きなさい。全てはあの方の為に……』
「ふ、ふふ。フハハハー! 目障りなあいつを消す。消してやるっ!」
俺様の頭の中にあるのは、あいつが森の中を彷徨い魔獣に喰われていく、そんなイメージだけだった……。
何であいつばっかり! 人族の分際で!
俺様は言葉に出来ない感情が、胸の中で暴れる。酷く気分が悪い。パパから聞いた話では、あのユーリは成龍の儀を受けるらしい。
何故なんだ!
そのことばかりが俺様の頭を埋め尽くす。歳だって変わらない。育った場所だってさほど変わらない。それなのに何故?
そのときだ。最近、俺の頭の中に聞こえてくる声が話しかけてくる。
『そうよね。よくわかるわ、あなたの気持ち』
頭に響く声は女のものだ。俺様がイラついているとき程、話しかけてくる。
『あなたは正しい。龍人族はどの種族よりも高位の存在よ。人族が出過ぎた真似をするなんて、烏滸がましいにも程があるわ』
そうだ! この声の言う通りだ。この集落のやつらはおかしい。パパもママも、みんなあの人族に騙されてるんだっ!
俺様はあの人族が集落のやつらを皆、騙しているのだと結論づける。
ん? あいつらは確か、パパの部下のやつだ。
俺様は、少し先に第三班の班員を見つける。無視して通り過ぎようと思ったが、興味深い話をしているようだったので木陰に隠れ、聴くことにする。
「聞いたか?」
「ん? あぁー、暴竜の件についてか?」
「そうそう、何でも『終わりなき森』から来たとか」
『終わりなき森』は犯龍――罪を犯した龍人――を裁くための場所だって、パパから聞いたことがある。
何でも、一度入ったら二度と戻ることはできないとか、何とか。凶暴な魔獣が森の中でひしめき合っているらしい。
「『終わりなき森』ねぇ……あそこには俺たちじゃ手に負えないような化け物ばかりがいるって話だろ? はぁ、怖い怖い」
「俺が言いたいのそこじゃなくて、何で『終わりなき森』から来たのかってことだよ」
「お、確かに。今まで、あんな数の魔獣が『終わりなき森』から来たなんて話、聞いたことがなかったな」
そうなのか。まぁ、俺様には関係のない話だ。
「んー……さっぱり分からん」
「そういうことは下っ端の俺たちが考えることじゃねーよ。それより、副団長の息子さんの話だよ!」
「ん? あぁ、ユーリくんだっけ?」
「いやぁーあの歳で『成龍の儀』が受けられるなんてな。ほんとスゲェーよ」
ちっ。こいつらも、あの人族の話をするのか……胸糞が悪い。どいつも、こいつも!
俺様の中に潜む負の感情が、極限の状態を超える。そのとき、再びあの声が聞こえる。
『なら、消してしまえばいい』
消す……どうやって?
俺様は自然と答えを求める。消すこと自体に異論も疑問もない。知りたいのはどうしたら上手くあいつを消せるか、それだけだ。
『そうねぇ。これなんて如何かしら? その子が『成龍の儀』を受ける間際に、『終わりなき森』に誘うのよ』
それは……。
俺様は少し戸惑う。『終わりなき森』に誘うということは、実質的な死を意味するからだ。そもそも、消すということはそういうことではあるのだが、俺様の心は覚悟を決めきれないでいる。
『あなたは彼が恨めしくはないの? 自分より下等な分際に先を越されて、それでいいの?』
俺様を試すように、女の声は頭の中に直接語りかけてくる。
嫌だ。そんなこと許せない。俺様は、俺様は、誰よりも優れた龍人だ! 全ての者の上に立つ者だ! 邪魔なやつは全て消す。
白いキャンパスが黒く染まっていくように、俺様の中にあった何かも真っ黒に変わった、そんな気がした。
『そう! それでいいの! さぁ、お行きなさい。全てはあの方の為に……』
「ふ、ふふ。フハハハー! 目障りなあいつを消す。消してやるっ!」
俺様の頭の中にあるのは、あいつが森の中を彷徨い魔獣に喰われていく、そんなイメージだけだった……。
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コメント
ノベルバユーザー438963
この雑魚さっさと退場してほしい