魔法陣を描いたら転生~龍の森出身の規格外魔術師~

黒眼鏡 洸

38 クッキング

 




『ユーリとお母さんの3分クッキング!』

(BGMが流れてる)





 ***





 というおふざけはいいとして、今日は俺が夕食を作ります。





 ほぼ毎日と言っていいほど、お母さんは朝、昼、晩と食事を作って――朝は俺が作ったりもする――くれている。日頃の感謝の気持ちを込めて、今日は俺が夕食を作る。

「ユーリ、今日の夕食はなんだ?」

 お母さんは興味津々といった様子で俺に聞く。普段は作る側なので、作られることに慣れていないお母さんは、待っていることがつまらないようだ。

「今日はね……その名も『カレーライス』だよ!」

 正確には、のようなもの。だが……。

「かれーらいす? それはユーリの創作料理か何かか?」

「うーん、俺のオリジナルではないけど……遠くの国の料理だよ」

 まぁ、間違ってはないはずだ。

「なるほど……そんな料理があったんだな。ユーリは本当に物知りだ」

 いえいえ、それほどでも……あるかな? なんちゃってね。

「それじゃぁ、クッキングスタートっ!」

「お、おぉー?」





 まず最初に用意するのはこれ。

 トッキャロ、ハコネギ、ポテイモ――ニンジンのようなもの、タマネギのようなもの、ポテトのようなもの――だ!

「それぞれ、一口大に切りまして……」

「ふむふむ」

 ここで、時間短縮のために魔法を使います!

「風よ」

 俺は宙に投げ上げた野菜に向かって、風魔法を使う。

 スト、ト、ト、ト、トンッ! ゴトンッ!

「器用だな……」

 見事、一口大に切れた野菜をボールでキャッチする。次に、肉の用意だ。今日、使うのはロックボアの肉で、食べ応えのある肉なのが特徴。

 よーし、肉も切るけど、ここで一工夫! ロックボアの肉は少し硬いので、一口大に切った肉に更に切り込みを入れます。

「風よ」

 シュパ、パ、パ、パッ!

「お、お見事……」

 宙から降ってくる、一口大に切ったロックボアの肉を鍋でキャッチする。そして、コンロに火魔法を使い点火すると、そのまま強火で肉を炒める。

「うん、いい感じ!」

 焼けてきた頃、そこに先ほど切った野菜を加える。肉に焼き色がついてきたら、水魔法で水を注ぐ。

「水よ」

 ひとまず、弱火で数十分煮込むとする。あと、香りづけにハーブ系の葉を入れておく。





 ***





「手際がいいな、ユーリ」

「そうかな?」

 まぁ、前の世界では国民的料理だしね。レシピは頭の中にバッチリ入ってるよー。

「そろそろかなー」

 煮えてきたようなので、ここでこの料理の肝となるモノを投入する。もちろん、カレーのルーはこの世界には存在しないだろう。しかし、それに代わるものを俺は見つけた。

 テッテレテッテッテー『カレイルの実ぃー』。

 俺は猫型ロボットではないのでご安心を! ネズミも怖くないよー!

 はいっ、それはいいとして……なんとこの『カレイルの実』は煮込んで溶かすと、あら不思議! カレーの味になるのだっ! 他のスパイスは必要ないときた。素晴らしいね!

「(ポチョン)……うん、カレーの匂いだ」

「ん! 独特な香りだが、これは食欲をそそるな」

 よし、仕上げにすりおろしたゴリンの実を加えて、煮込んだら完成だ。





 ***





「「いただきます」」

 木彫りのスプーンでカレーライスを一口すくう。ミルキー米はとろみのあるカレーをまとい、今か今かと待ちわびているように見える。

 待たせるのは悪いので、口の中へとご案内する。

 パクッ

 まず始めに来るのは、スパイシーな香り。そして、程良い辛味。最後に残るほのかな甘み。

 あぁ、カレーだ。これは、正真正銘カレーライスだっ!

 俺は懐かしい味を噛みしめ、呑み込む。

「うまい!」

「あぁ、本当においしい」

 お母さんも気に入ってくれたようで何よりだ。

「ユーリ、今度私にもカレーライスの作り方を教えてくれ」

「うんっ、いいよ!」

 それから、俺たちはスプーンを止めることなく、カレーライスを思い思いに堪能するのであった。





コメント

  • 黒眼鏡 洸

    イキリト万歳!様
     コメントありがとうございます!!
     そう言って頂けると大変嬉しいですっ!

    0
  • 閲覧履歴間違えて削除してしまった

    なんか皆が知ってるネタ?が所々に入ってるのが面白い

    2
コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品