魔法陣を描いたら転生~龍の森出身の規格外魔術師~

黒眼鏡 洸

32 記録の魔書

 本をめくる音が長の家に響く。読んでいるのは俺だ。今、読んでいるのは魔道具についての本なのだが、これがまた面白い。

 魔道具は魔力を保有していたり、魔法的力をもっていたりする道具の総称だ。その力は様々である。魔道具の中でも有名なのは魔書と呼ばれるものだ。

 『魔書グリモア』は一言でいえば、魔法的力をもった本だ。ただ、その力は一言では表せられない。魔力を強化する力、未来を記す力、魔法を無効化する力など千差万別だと言われている。

 ただし、魔書は使い手を選ぶ。資格のない者にはその存在を現すことはなく、ましてや読むことすら許されない。魔書の所有者のみがその記されている意味を読み解くことができ、魔書に宿る力を行使することができる。

「魔書ね……」

 ぜひとも欲しいですっ!!

 まぁ、俺の前に現れることなんてないと思うけど……。

 俺は手にしていた本を閉じると、もとあった場所に戻す。

 ん? なんだこの本。

 俺が戻した本のすぐ隣にあった本を取り出す。背表紙にタイトルがないのだから不思議に感じてもしょうがない。

 俺は本の表を見る。そこには『ログ』とだけ記されていた。

 ログ? どういう意味だろう。とりあえず、本の中身を読んでみるか。

 俺は表紙をめくった。そのとき……

「うわっ!?」

 光るはずのない本が、開かれたページから光を放ったのだ。その光量は、薄暗いこの部屋の屋根を取り外して、部屋全体に天の光をあてているようだった。

 光が弱くなり次第に消える。部屋の明るさはもとに戻ったが、まだ少し頭がクラクラする。落ち着いてきたところで、俺は再び先ほどまで開いていたページに目を移す。

 ――記録ログ魔書グリモアの資格者として、記されし名の者を認める。その名は『ユーリ』

 って俺!? 魔書グリモア!? 本当にそうなの? え、まじ。うぉおー!! 魔書ゲットだぜ!

 俺は深呼吸をして一旦、落ち着くことにする。

 これが魔書……こいつはどんな力をもっているのかな?

 俺が疑問に思い考えていると、ページが勝手にめくれていく。開かれたページが先ほどとは違った淡い光を一瞬放った。そこには俺の疑問の答えとなることが記されていた。

 ――記録ログ魔書グリモアの能力……『記録』 所有者の会得した魔法、戦闘で行使した魔法など所有者にかかわる魔力、魔法について全ての情報を記録する。

 すげぇー! 親切に説明してくれるし、かなり役立つ能力だよね!

 俺は魔書の性能に興奮しながらも、次はどんなことを調べるか考える。

 俺にかかわる魔力、魔法についてなら全ての情報がわかるんだよね。じゃあ……

「魔書よ、俺の会得している魔法を教えてくれ」

 魔書は俺の言葉に応えるようにページがペラペラとめくれ、光りだす。先ほどと同じように光が消え去ると、文字が浮かび上がり俺の知りたいことを教えてくれる。

 ――――

 会得魔法

 <初級>治癒、自然、鉱石、生活(限定)

 <下級>光、闇、雷、氷、強化(限定)

 <中級>火、水、風、土

 *『(限定)』とはその階級のみでしか存在しない魔法。

 ――――

 おぉーっ! すごいっ、あってるよ。記録ログ魔書グリモアかぁ……ふふふ。俺の魔書。これは色々調べないといけないな!





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