魔法陣を描いたら転生~龍の森出身の規格外魔術師~

黒眼鏡 洸

24 森で特訓

 




「よし、今日の稽古はここまでだ」

「は、は、はぁ……ふぅー、つかれたぁ」

 俺は数々のトレーニングとお母さんとの模擬戦の疲労により訓練場の床に寝っ転がってしまう。

 やっぱり、武術の稽古はハードだ。でも、楽しい!

「ふふ。その程度でへばっていたら、まだまだだぞユーリ!」

「うぅー、おかあさんよりもっとつよくなるもん!」

「そうだな。楽しみにしているぞ」

 お母さんはニコニコして嬉しそうに言う。そこには、成長を楽しみにしている親の顔と自分を超える強い存在になりうる者へ期待する、龍の顔が見えた気がした。





 ***





 俺に対するお母さんの評価は10段階でいうと、魔法は9、武術は7とのことだ。魔法は言わずと知れていて、武術は才はあるがまだまだ、これから鍛える必要があると言っていた。

 稽古は早朝と夕食前の一日2回だ。俺は早朝の稽古を終え、朝食を済ませると外へ出ることにする。目的地は森。実は自主特訓はまだ続けていて、今日もそのつもりだ。

「ついた」

 今日はいつもの特訓場所ではなく、少し奥に進んだ所に来ている。

 理由としては森の中での移動練習も兼ねているからだ。木々を飛び移ったり、草むらに素早く身を潜めたりなど、できることは沢山ある。

 移動しながらの魔法の行使は難しい。魔力に意識を向けすぎると周りへの注意がおろそかになり、逆に周りを気にしていると魔力が思うように扱えなくなってしまう。

 これを解決するには無意識とまではいかないが、魔力を体の一部のように扱うことができればいい。

 そんな簡単な話じゃないけどなー。

 俺は昔から魔力で遊んできたのが功を奏したのか、魔力はほぼ手足のように扱える。

 よっと……はっと……うん、いい感じ。転生前ならありえない動きだけど。

 俺は軽快に森の中を駆け抜ける。ときには木の枝を鉄棒のようにクルクル回ったり、石を跳び箱のように飛んだりしているので、まさに自然のアスレチックだ。

 よし、魔法も使っていこう。火魔法は危ないし、風、水あたりかなー。

 俺は近くの木に向かって走り出す。そのまま激突とはいかず、魔力を手のように具現化させると、太めの枝へと伸ばし掴む。伸ばしている魔力の手を収縮させて自分の体を引き上げ、その反動で枝に乗る。

 枝がミシミシと鳴っているが気にしない。俺は深くしゃがみこみ、反動をつけて次に高い枝に飛び乗る。それを繰り返し木の上の方まで、約10メートルほどの所まで来ることができた。

 俺は呼吸を整え、覚悟を決める。そして、俺はそこから飛び降りた。

 アイキャンフラーイっ!

 もちろん、自殺願望なんてない。

「かぜよ!」

 俺は風魔法を使い落下速度を落とすと、魔力の翼を具現化させ羽ばたく。そのまま地面スレスレで低空飛行をしてから上体を起こし、着地する。

 その場で振り返り、近くにある1本の木に手をかざす。

「みずよ!」

 俺の手の先に魔法陣が現れると、三日月型の水の刃が木に向かって飛び出した。水の刃は木を斜めにスパンッと切り倒す。

 木は俺に向かって倒れる。そう仕向けたのは俺だが、もちろん自殺願望はない。本当にない。

「もとめるはかぜ。かぜよかべとなれ」 『ウィンドウォール』

 俺はあえて詠唱する。危ない状況でも詠唱をできるようにするためだ。目の前には、俺の身長と同じ程度の魔法陣が現れる。魔法陣からは風が激しく吹き出し木を押し返す。

「きょうか!」

 俺は風魔法を解き、強化魔法を使う。全身を強化することで体が軽い。

 強化された脚で俺は軽く飛び、宙に浮いた木に回し蹴りをくらわす。子供の蹴りだとは思えないほどの威力がでる。ちょうど真ん中に蹴りがあたった木はメシッという音を立てて真っ二つに折れる。

 俺は空中でバランスをとり、そのまま着地した。丸太となった木を見る。

 稽古してから蹴りの威力上がったかも! これ、楽しい!





 それから思いつく限りの特訓を試し、俺は満足すると家に帰るのであった。





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