魔法陣を描いたら転生~龍の森出身の規格外魔術師~

黒眼鏡 洸

17 いたずらごころ

「いくよ! せれーなちゃん」

「キュウー!」 (いいよー!)

「もとめるはかぜ。かぜよふけ」 『うぃんど!』

 セレーナちゃんに向けている俺の手の先に魔法陣が現れ、顔を撫でる程度のそよ風が生まれる。その風はセレーナちゃんに向かっていく。

「キュウー、キュウ!」 (わぁー、もういっかい!)

「またやるのー、しょうがないなぁー」

 セレーナちゃんは魔法を見せてあげると、とても喜ぶ。

 俺も楽しいからいいけどねー。

「キュウ、キュウキュウー」 (ありがとう、ゆーりくんすきー)

 どふっ!? なんて強烈な可愛さストレートなんだ。……強い。負けてたまるかー!

「もとめるはかぜ。かぜよふけ!」 『うぃんど!』

 先ほどよりも、少しだけ強い風を創り出す。っと言っても、もちろん安全を考慮している。

「キュウキュウ!」 (わぁーい、すごーい!)

 ふふふ、セレーナちゃん甘いよ。本番はここからだ! 日々の特訓による成果、お見せしましょう!

 セレーナちゃんの耳元に直径10センチほどの小さな魔法陣が現れる。

 さきの風が吹き止むと同時に、俺は小さい魔法陣を発動させる。

 今だっ!

「かぜよ!」

 ……フュー。

「キュウっ」 (きゃっ)

「はははー」

 セレーナちゃんは一度、ビクンっと体を震わせると、抗議したそうな表情で俺を見る。

「キュー、キュウキュウ」 (もー、ゆーりくんきらい)

 がーん……。そ、そんなつもりじゃ……。

「せ、せれーなちゃん」

「キュウ!」 (ふんっ!)

 怒ってしまったセレーナちゃんは翼をパタパタとさせ、飛んで行ってしまう。

「せれーなちゃん、まってよー」

 俺は弁解の言葉を必死に探しながら、どんどん遠くへ行ってしまうセレーナちゃんを追いかけるのであった。





 ***





 あれー、どこ行っちゃったんだろうセレーナちゃん。……つい、出来心だったんだよ。……本当に。

 俺は浮気をしてしまった彼氏のようなセリフを考えながら、セレーナちゃんが飛んで行ったであろう道を進む。

「せれーなちゃーん!!」

 俺が叫んだそのとき。

「キューっ!」 (いやーっ!)

 セレーナちゃんの声!? ……あっちの方か!

 俺はセレーナ・・・・の声を耳にし、すぐさま走り出す。それと同時に、先日覚えた新しい魔法を使う。

「もとめるはきょうか! きゃくりょくよ、あがれ!」 『ぶーすと!』

 俺の足裏に魔法陣が現れると、スキャンをするように俺の体を下から上へと上昇する。頭の先を通過し終えると魔法陣は消え、俺の脚に変化が起きる。

 踏み込む足にいつも以上の力が入り、地をつかむような感覚を得る。それでいて、脚は雲のように軽い。

 すごい。これが強化魔法か。





 ――今行くから……セレーナ待っていてくれっ!





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