魔法陣を描いたら転生~龍の森出身の規格外魔術師~

黒眼鏡 洸

16 ポークバードのソテー

「ユーリ、今日はなにが食べたい?」

「んー、おかあさんつくったの、ぜんぶおいしいよ!」

「そ、そうか! 全部おいしいか! よし、今日はユーリが大好きなポークバードのソテーにしよう」

 え、本当に? あの肉厚で、噛むごとに肉汁が溢れて、鳥なのにまるで豚肉のような味わいの、あのポークバードのソテーですか。

「やったー!」

「ははは、そんなに嬉しいか。でも、野菜もちゃんと食べるんだぞ」

「はーい!」

「いい返事だ。ユーリ、悪いが今日は狩りに行っていないから、露店で買っていくぞ」

「うん」

 あー、楽しみだなぁ。ヤバイ、涎が垂れちゃいそう。





 ***





 今日は久しぶりにお母さんと買い物に出かけている。俺が一人で行動できるようになってから、お母さんは武龍団に復帰した。

 武龍団とは、成龍の儀を達成した成龍人の中から選ばれた者だけで構成され、集落を護るための警備組織だ。要は集落のつわもの集団である。

 お母さんは最年少、150歳にして入団したエリート美人武龍だ。

 ちなみに、人で言う成人は15歳らしく、龍人だと150歳~200歳が一人前になってきたという認識になっている。

 しかし龍人の場合、成龍の儀に挑戦できるのは長に認められた者だけであり、成龍人の数は少ない。

 俺のお母さんはすごいってことだね! 俺もお母さんを目指して頑張ろう。

「こんにちは、ブリオさん」

「こんにちはー!」

 露店に着いた俺たちは、おっちゃんに声をかける。

「おう! アーテルとユーリじゃねか! お、買い物か?」

 相変わらず元気で、陽気なおっちゃんであること。まぁ、俺は好きだけどね! いつも、よくしてくれてありがとう、おっちゃん!

「はい、今日はたまたま休みを貰いましたので、久しぶりにユーリと買い物に」

「おうおう、よかったじゃねぇかユーリ!」

「うん!」

 お母さんは武龍団の副団長で、かなり忙しい。買い物に行けてよかった。

「何か買っていくか? 今ならまけるぞ!」

 さすが商人。おっちゃんの陽気さと相まって、何か買いたくなっちゃうね。

「いつもありがとうございます、ブリオさん。今日はユーリの大好きなポークバードのソテーを作ろうと思ってまして」

「お、それならちょうど新鮮なポークバードの肉が仕入れてあるぞ! 85コルクでどうだ!」

 コルクとは、コルクの実を利用した集落のみで使われている通貨単位のことだ。

 ポークバードの相場は100コルクほどなので、安くなっている。そもそも、ポークバードは高級とまでは言わないが贅沢な食材だ。お得すぎておっちゃんが心配になる。

「買います!」

「まいどっ! おっしゃ、ゴリンの実もオマケだ!」

「「おぉー! ありがとう(ございます!)!」」

 おっちゃーん、大好きだー!!

「がははっ、息ピッタリじゃねぇか!」

 本当だ! うん、親子みたいだ……ううん、ちがう。俺とお母さんは親子だ。

「私とユーリは親子ですからね!」

 お母さん……。うん……うんっ! 俺はお母さんの子だ!

「うんっ!」

「そうだな! がはははは!」





 ***





「よーし、もうすぐできるぞ!」

「わーい!」

 あー、ポークバードの焼ける匂いだ。一嗅ぎしただけで、あのうまみが口いっぱいに広がるのが想像できる。

 まだかなぁー。まだかなぁー。

「うん、うまくできた」

 わぁー!!

「はい、ポークバードのソテーとゴリンのサラダだ。召し上がれ、ユーリ」

「おかあさん、いただきますっ!!」

 ソテーを食べやすいように、一口大に切る。お母さん特製の濃厚ソースにソテーを絡めたら口へ……

 レッツゴー!!

 はむっ。

「どうだ?」

 もちろん……

「おいしいー!!」

「そうか! それはよかった。たくさん食べるんだぞ!」

「(ごくんっ)はーい!」

 俺はお母さんの作るごはんが大好きだ!





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