魔法陣を描いたら転生~龍の森出身の規格外魔術師~

黒眼鏡 洸

12 火魔法

 よし、ここら辺でいいだろう。

 今日は基礎魔法を試すべく、集落を少し出たところの森の中にいる。少し開けていて丁度いい。

 誰にも気付かれずにここまで来るのは苦労したけど、そのかわり存分に魔法の検証ができる。ヤバイ、テンション上がってきた。

 ふぅー、落ち着け俺。本にも書いてあったじゃないか。魔法は集中力が大切だって。

 心を落ち着かせるために数分かかってしまったが、ようやく魔法の検証を始める。

 ――『魔法』 魔力をもとに様々な現象を起こす力。

 今、俺が試そうとしている魔法は、基礎魔法の一つ『火魔法』。

 火を創り出し、火を操る魔法だ。

 そして、魔法には階級というものが存在する。下から、初級、下級、中級、上級、絶級、神級の6つだ。

 まずは、初級から始めることにする。

「もとめるはひ。ひよおこれ!」『ふぁいあー』

 よかったー。何とか言えたー。

 これは詠唱と呼ばれるもので、イメージの補助や魔力の流れを調整しやすくする。魔法は魔力の流れによって、その力の性質が決まる。

 魔力があれば良いというわけではないらしい。魔力の流れをつかんで、初めて魔法へと一歩進める。

 俺は魔力の流れに意識を向ける。流れ方が少し変化したように見えた。しかし、魔法は発動していない。

 うーん。火魔法<初級>の『ファイアー』は、ライター程度の火を創り出せるはずなんだけどなぁ。魔力の流れに変化はあったし、もう一度試してみよう。

 こんなところで諦めるような俺ではない!

「もとめるはひ。ひをおこれ!」『ふぁいあー』

 すると、体から魔力が流れ出ていく感覚に襲われる。流れ出ていった魔力は、一本の線となって宙に何かを描き始める。

 蒼い線は決められた道を迷いなく走っている。全体図が見えてくると、何が描かれているのかがわかった。

 ――魔法陣だ。

 蒼い線が走りを止めると、宙には直径30センチ程の幾何学模様をした魔法陣が浮かび上がっていた。

 魔法陣の輝きが少し増すと、ボォッと魔法陣から直接、火がでる。

 よっしゃー! 成功した。本当に火が出てきた。魔法なんだ……。魔法だー!!

 魔法が成功し、つい感極まってしまったため、魔法の維持がおろそかになる。当然、魔力の流れが安定していないわけで、惜しくも火は消えてしまう。

 あ……。ちゃんと集中しなくちゃダメだね。よし、もう一度だ!





 ***





 あれから1時間ほど経過した。

 ふぅー、『ファイアー』は安定して維持できるようになってきたかな? それにしても、3分の2くらいは魔力を使っちゃったかー。具現化の特訓もしたいし、魔法の特訓はここまでか……。

 むー、魔力の量を増やしたい。魔法もっと特訓したいよー。ぬあー、モ・ド・カ・シ・イぃぃぃ!!





 夢にまで見た魔法がすぐそこにあるのに、使うことのできないモドカシさに葛藤しながら、俺は魔力の具現化を始めるのであった……。





「魔法陣を描いたら転生~龍の森出身の規格外魔術師~」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く