魔法陣を描いたら転生~龍の森出身の規格外魔術師~

黒眼鏡 洸

5 アーテルさん

 俺は今、アーテルさんの家にいる。

 あ、今日から俺の家でもあるのか。

 家の作りは、部屋が分かれているという訳ではなく、大きな一つの空間という感じだ。テーブル、イス、ベッド、棚と小さな装飾品が数個ほど飾られているだけで、至極シンプルだ。

 現在、俺はベッドに寝かされている。アーテルさんというと……

「うぅー。じじ様には育てると言ってしまったが、子の育て方などわからないぞー」

 あー、凄く悩んでる。頭を両手で抱えて悩んでいらっしゃる。

 アーテルさんが俺のところまで来る。

「ユーリ、私はどうすればいいんだ?」

 悩んだ挙句、俺に聞くことにしたらしい。

 アーテルさん。俺、赤ちゃん。赤ちゃんに子供の育て方を答えられるわけないでしょ。まぁ、これから一つ屋根の下なんだし、挨拶はちゃんとしないとね。

「あーう、ああー」 (これから、お世話になります)

「っ!? ユーリが喋ったぞ。私の言葉がわかるか?」

「あー」 (うん)

「凄いぞ! ユーリは聡い子なのだな」

 いやー、照れるなぁ。ん? アーテルさんの様子が……

「いきなりここまで連れてこられて、不安もあったろう。更には、この私と2人で暮らすことになった。一人前となったら、お前はどうするのかはわからないが、ユーリ。それまで私を――母として認めてくれるか?」

 そうだよね。アーテルさんだって、血の繋がりもない子をいきなり育てることになったんだから不安だよね。

 それなのに、俺の心配をしてくれた。初めてだ、自分の事を心配してもらえるなて……。こんなにも、嬉しくて、温かい。

「あーう!」 (うん!)

 正直、まだお母さんと言えるかわからないけど……でも、この温かさは失いたくない。

 俺はアーテルさんを見てみると、目が合った。

「そうか! 認めてくれるか。ありがとうユーリ……」

 うん! これからよろしくお願いします……あれ? アーテルさんの様子がまた変に……

「そ、そのだな、ユーリ。私は今からユーリの母な訳で、母は子に触れる権利があるはずだ」

 なんか、雲行きが怪しいぞ。

「それで、だな、ほ、頬を触ってもいいか?」

 ほっぺ? まぁ別にそのくらいなら。

「あー」 (いいよー)

「ほ、本当か! よしっ! そ、それでは失礼……」

 プニっ。プニプニ。

「っ!? こ、これほどとは……。この吸い付くような肌! それでいて、サラサラで柔らかいこの質感。だ、ダメだ。やみつきに……」

 プニプニプニプニ……。

 アーテルさーん。そろそろ……。

 俺の願いは届かず、俺が疲れて寝てしまうまでプニプニは続いたのであった。





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