召しませ後宮遊戯~軍師と女官・華仙界種子婚姻譚~
◆召しませ後宮遊戯2~小羊女官と皇帝陛下・華仙界への種は遙か~ ⑧ー⑤
もう抵抗も出来ない光蘭帝に遥媛公主が歩み寄る。
「さあ、僕の種を受け取り、人を手放せ。そしておまえは永遠の栄華と、穏やかな時間を手に入れることが出来る。天帝は寿命代わりに生きる躯をお探しだ。永久に生きるには」
―――――ぷつん。
(ぷつん?)
蝶華を抱きしめた白龍公主が奇妙な音に気が付く。ラップ音にしては、小さい。
ごごごごごごご……そんな地震の前触れのような音に遥媛公主もしばし会話を止めた。
明琳は背中を向けたままだ。それでもゴゴゴゴゴは大きくなる。
「もしや…そなたの怒りか」
遠く離れた小羊がぶるぶると震えている。小柄な身体がどんどん震えの幅を大きくして。
人を玩具にする華仙人が。
愛して生まれてくる子供まで、遊戯にしちゃう悪い仙人たちが苛めるんです。
―――――おばあちゃん、わたし、もう限界、で、す!
ぐるんと明琳が向き直った。
「そうです! わたし、怒ってます!皇帝さまを無理やり連れてくなら、わたしは怒ります! 光蘭帝さまが行きたいって言うなら止めません! そして、貴方ですか? 光蘭帝さまの眠る時間を奪ったの! どっちですか! 人はゆっくり寝て、元気になるんです。それで優しい気持ちが生まれて、明日を楽しみに眠る。美味しいものも、楽しい事も、休まなければ何も分からない。まして一生懸命愛そうとした命まで玩具のように貴方は言った。わたしはあなたを怒ってます。精一杯怒ります!」
「何を小羊がきゃんきゃんと」
明琳の眼に優しかった公主が浮かんだ。だけれど、大切なものを二度とこの手で壊したくはないから。そんなものは捨てなきゃいけない。逆に、苛められて怖がらせた白龍公主は信じなきゃ……
何を信じて、何を捨てるか。
(それはわたしが決めます!だって、みんなみんな神様になれるのだもの!)
「相手にしているのも勿体ない。さっさと種を選べ」
白龍公主が顔を背けた目の前で、遥媛公主は光蘭帝の頭を掴み、手の中に現れた宝玉を口元に近づけた。
「元より選ばせるつもりはない!…何故なら、白龍公主!貴様、もう種はないだろう!」
白龍公主が動揺した。何度も手を開いては、視線を逸らし、やがて笑った。
「全く…明琳も、遥媛公主も…蝶華妃も。女って怖いものよな…どこで蝶華に掠め取られたんだか。元々俺は勝つつもりもない。欲しいものは手に入った…今更だが…」
「白龍公主…」
では異存ないな?と遥媛公主は光蘭帝の髪を掴みあげ、その指が光蘭帝の口元をこじ開けた。その時、びゅんと何かが通り過ぎて、遥媛公主は手を見やる。
「種が」
明琳が素早く種をかっさらっていた。
「この小羊!お返し!」
明琳は怒りで涙目になったまま、胸元に手を突っ込んだ。
―――――あんたはあんたの思った通りに行動しなさい、明琳。夢の中で、蝶華さまが教えてくれた。種の扱い方。体内に入れると、溶ける。そうすれば、悪い仙人は二度と種を生み出せない。こんな事は二度とない。
食べちゃえ!
―――――明琳、ここに置いておいたお饅頭、食べちゃったの?
―――――だって美味しそうだったから!
仕方が無い子ね・・・そんな母と遥媛をどうして被せたのだろう。遥媛公主は一度も、自分のお饅頭を食べてくれなかった。
「こんなもの、こうしてやる!」
出てきたのは饅頭だ。その饅頭に素早く遥媛公主の宝玉を突っ込み、埋めると、ばくんと口に放り込む。
「あ!」
もしゃもしゃもしゃ。
ごくん。
「食った」
「明琳!おまえなんてことを!」
「この小娘!…わ、私の最期の種を喰っただと!」
「さあ、僕の種を受け取り、人を手放せ。そしておまえは永遠の栄華と、穏やかな時間を手に入れることが出来る。天帝は寿命代わりに生きる躯をお探しだ。永久に生きるには」
―――――ぷつん。
(ぷつん?)
蝶華を抱きしめた白龍公主が奇妙な音に気が付く。ラップ音にしては、小さい。
ごごごごごごご……そんな地震の前触れのような音に遥媛公主もしばし会話を止めた。
明琳は背中を向けたままだ。それでもゴゴゴゴゴは大きくなる。
「もしや…そなたの怒りか」
遠く離れた小羊がぶるぶると震えている。小柄な身体がどんどん震えの幅を大きくして。
人を玩具にする華仙人が。
愛して生まれてくる子供まで、遊戯にしちゃう悪い仙人たちが苛めるんです。
―――――おばあちゃん、わたし、もう限界、で、す!
ぐるんと明琳が向き直った。
「そうです! わたし、怒ってます!皇帝さまを無理やり連れてくなら、わたしは怒ります! 光蘭帝さまが行きたいって言うなら止めません! そして、貴方ですか? 光蘭帝さまの眠る時間を奪ったの! どっちですか! 人はゆっくり寝て、元気になるんです。それで優しい気持ちが生まれて、明日を楽しみに眠る。美味しいものも、楽しい事も、休まなければ何も分からない。まして一生懸命愛そうとした命まで玩具のように貴方は言った。わたしはあなたを怒ってます。精一杯怒ります!」
「何を小羊がきゃんきゃんと」
明琳の眼に優しかった公主が浮かんだ。だけれど、大切なものを二度とこの手で壊したくはないから。そんなものは捨てなきゃいけない。逆に、苛められて怖がらせた白龍公主は信じなきゃ……
何を信じて、何を捨てるか。
(それはわたしが決めます!だって、みんなみんな神様になれるのだもの!)
「相手にしているのも勿体ない。さっさと種を選べ」
白龍公主が顔を背けた目の前で、遥媛公主は光蘭帝の頭を掴み、手の中に現れた宝玉を口元に近づけた。
「元より選ばせるつもりはない!…何故なら、白龍公主!貴様、もう種はないだろう!」
白龍公主が動揺した。何度も手を開いては、視線を逸らし、やがて笑った。
「全く…明琳も、遥媛公主も…蝶華妃も。女って怖いものよな…どこで蝶華に掠め取られたんだか。元々俺は勝つつもりもない。欲しいものは手に入った…今更だが…」
「白龍公主…」
では異存ないな?と遥媛公主は光蘭帝の髪を掴みあげ、その指が光蘭帝の口元をこじ開けた。その時、びゅんと何かが通り過ぎて、遥媛公主は手を見やる。
「種が」
明琳が素早く種をかっさらっていた。
「この小羊!お返し!」
明琳は怒りで涙目になったまま、胸元に手を突っ込んだ。
―――――あんたはあんたの思った通りに行動しなさい、明琳。夢の中で、蝶華さまが教えてくれた。種の扱い方。体内に入れると、溶ける。そうすれば、悪い仙人は二度と種を生み出せない。こんな事は二度とない。
食べちゃえ!
―――――明琳、ここに置いておいたお饅頭、食べちゃったの?
―――――だって美味しそうだったから!
仕方が無い子ね・・・そんな母と遥媛をどうして被せたのだろう。遥媛公主は一度も、自分のお饅頭を食べてくれなかった。
「こんなもの、こうしてやる!」
出てきたのは饅頭だ。その饅頭に素早く遥媛公主の宝玉を突っ込み、埋めると、ばくんと口に放り込む。
「あ!」
もしゃもしゃもしゃ。
ごくん。
「食った」
「明琳!おまえなんてことを!」
「この小娘!…わ、私の最期の種を喰っただと!」
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