日本円でダンジョン運営

sterl

陣地設営 カースキング(アドゥル)

 本日は陣地設営の日だ。アドゥルとオレイノス、両者ともに陣地を造るらしい。
 アドゥルの様子を見に行こうと思う。

 アドゥルは夜側を選んだ。もちろんジョセフィーヌは連れて行く。ある程度歩くと辺りが霧に包まれ始めた。

 まあ、前アドゥルの階層を訪れた時にも同じようなことがあったので気にせず進む。

 霧が晴れると、そこに広がっていたのは広大な墓地だ。多種多様のアンデットが徘徊している。……というよりアドゥルの階層の墓地と違いが解らない。

 アドゥルを探しながらアンデットに混じって墓地を徘徊すると、不意に遠くから何かが飛んでくるのが見えた。あれは……カラスか?そういえばアドゥルの配下の悪魔にカラスの姿のやつがいたよな。名前は確か……強欲。

「クァーッ、クァーッ」

 強欲のカラスが紙を落として、元の方向に飛び去っていった。

 この紙は……手紙か。書いてある内容は『すぐにそこから離れてください』と。ふむふむなるほど。

「ジョセフィーヌ、ちょっと離れた場所に運んでくれ」

「ワンッ!」

 ジョセフィーヌの背に乗り、その場から離れた。そしてもといた場所の様子を見守る。すると、霧が一ヶ所に集まり始めた。

「グルォォォッ」

 霧の中から、巨大なドラゴンが飛び出す。あのドラゴンは大きさは違うが、確か憤怒の悪魔だったはずだ。なぜ5倍近く大きくなっているのだろうか。しかもよく見ると、負傷しているようである。地面に倒れ、ぐったりとしている。

「メェェエエェ」

  続いて霧から悠々と歩み出たのは……、巨大なヤギだ。ドラゴンの更に3倍程大きなヤギだ。バルトと同じくらいの大きさだ。
 ヤギ……そうか。こいつは色欲の悪魔か。なぜこんなにも大きくなっている。しかも憤怒を倒したのか?ヤギなのに?

「そこまでです。憤怒、色欲。二人ともよく頑張りました」

「グルァ」
「メェエ」

 そして、どこからともなくアドゥルが表れ悪魔に呼び掛ける。憤怒と色欲は、元の最初に見た大きさに戻るとどこかへ歩いて去っていった。

「マスター様、ご迷惑をおかけしました」

「あ、いや、事前に強欲が教えてくれたから大丈夫。それより何をしていたんだ?」

「配下の実力把握です。正しい命令を下すには実力を細かく知っておかなければいけないので。ちなみに現在一番強いのが冥土です」

「そうなのか」

 冥土が一番、あのドラゴンとかヤギとかよりも強いと。……納得がいかない。

「とりあえず、様子は見れたから私は戻るよ」

「はい。お気を付けてお帰りください。マスター様」

 陣地設営なのにいきなり戦闘を見るとは思わなかったな。アドゥルはどうやらかなり気合をいれているらしい。

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品