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side ライオス・アリア・ヴォルドー part 12

 迫る魚人の群れを殴り散らしながら、海底遺跡へと進む。1体、1体、また1体。際限なく溢れでる魚人は、総じて何かを守ろうと動いているように見える。

 そんな終わりが無いかと思われた魚人の猛攻は、突然終わりを告げた。魚人の群れがサーッと退いていく。代わりに襲い来るのは、全てを平伏す重圧。殺気。一般人では狂気に陥ってしまいそうなその気配は、のそりと起き上がったその者から発せられているのだと思うと、自然と納得できた。

 タコのような頭をもたげ、その触手をうならせる。人型の体は、その頭を乗せる置物だと思えるほどずんぐりとしている。一瞬見えた背中には、その巨体に似つかわしくない小さなコウモリの翼が生えている。爛々とその黄色い眼を輝かせ、尻尾を水流になびかせ、その化物は気だるげに立ち上がった。

 大きい。巨大過ぎる。クラーケンやリヴァイアサンは比にならない。伝承にある守護者と同等の大きさだ。

 ……逃げ出せと、アレに挑んだら死ぬと、本能が警鐘を鳴らす。しかし、それではダメだ。アレを乗り越えなければ、我の獣神への道は無い。
 化物の睨み合う。魚人どもは遠巻きにこちらを見てくるのみだ。

 ッ、先手必勝!

 最初から全開で水を蹴る。我の通常ではありえない異常な高速移動の影響で、我の通過した後の水温が急上昇する。直後、爆発。その爆発をも推進力へと変え、巨大な化物に突撃する。狙うは心臓部。一撃で仕留めるっ!

 拳が化物の胸に突き刺さり、我の体が急停止する。直後、化物の胸が爆ぜた。発生した水流に流され、化物から離れる。化物の胸を見ると、大きく抉れている。

 やったか。異様な気配を持つモンスターだった。しかし、これだけ打撃を与えれば生きることはまず不可能だろう。

 そろそろ息が苦しくなってきた。空気を探さなければ。それに長居していてはあの魚人どもも襲ってくるだろう。

 さて、行くとしよ……う?

 なん、だこれは。触手……なのか?我の腹を、貫いてい、る?一体、どこから?……ああ。化物の、眼が、輝いておる。胸を、抉っても、生き、ていたの、か。
 はは。化物め。再生、しておる。我、程度では、殺せぬという、ことか。

「ぐはぁっ」

 ああ。視界、が、霞む。どう、やら、ここま、で、の、ようだ。すま、ぬ。おじ、さん。我が、友、よ。

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