「初心者VRMMO(仮)」小話部屋

神無乃愛

カナリアのイースター その4


<今ポップしているモンスターを倒せば、イースターバニーコスチューム確定だ!!>
 クエスト主であるルーファスが叫んだ。
「よっしゃぁぁぁ!! りり、ブーストよろ!」
「うんっ」
 今まで以上の速さで、ラビットモンスターは殲滅されていったのだった。

「……凄い」
 一人ついていけないカナリアは、呆然としてその様子を見ていた。
「Little Lady、回復」
「あ」
「分からなくもないが、My dear sonだってこれくらい動くだろう?」
「いっくんとりりちゃんはいつも私に合わせてくれてたので、ここまで動くの見たことなかったんです」
「あれが二人の実力だろうね」
 カナリアは必死に回復に回るだけで精一杯なのだ。いつもはある程度モンスターを討伐できるが、今回は無理なようである。
「あの二人は本気でLittle Ladyにイースターバニーコスチュームを着せたいんだろうね」
「この服もりりちゃんに貰ったのに……」
 リリアーヌとお揃いの防具に身を包んでいるカナリアはしょんぼりとした。
「まぁ、あの二人の娯楽に付き合うと思って割り切りなさい」
 クリスの言葉に、カナリアは大人しく頷いた。


 クエストが終わり、一人一人に参加記念のイースターエッグがドロップする。中身はマイルーム用の置物だったりアイテムだったり様々である。
 回復も含めたパーティの貢献力で分配されるものと、パーティ全体にドロップするものの二種類があり、まずは各々にドロップした分を見ていく。
「ウサギさんの置物可愛い」
 カナリアは花を持ったイースターバニーの置物と、エッグだった。

「よっしゃぁぁぁ!! コスゲット!」
 喜んだのはイッセンだが、そのコスチュームはそのままリリアーヌに渡された。
「これ着れない! ユーリさん案件!」
 渡されたのはバニーガールの衣装だ。
「さすがに俺から渡せない。りり、よろしく」
「そういうことなら任せて!」
「これもFraeulein案件だね」
「あたしは荷物持ちじゃありません!」
「Lady用バニー着ぐるみだ。さすがに私は要らないし、Little Ladyにはちょっとね」
「……うーーん。美玖ちゃんに似合いそうだけど」
「出来ればこちらを着せたい」
 そう言って見せたのは、アリスの衣装をモチーフにしたイースターバニーコスチュームである。そしてレア度はかなり高い。
「そっちも出たのか、さすがクリスさん」
「二着出たよ。だからLittle LadyとFraeuleinの二人で着ればいい」
「じゃあ遠慮なく」
「代わりにMy dear sonに見せびらかすためのスクショを撮らせてくれ」
「りょーかいです!」
 イッセンとリリアーヌは機嫌よく返し、あっさりとコスチュームを受け取った。


「うふふ~~。またしてもお揃いゲット!」
 誰よりもご機嫌なのは、もちろんリリアーヌである。
 スクショも大量に撮り、自宅のPCの壁紙にする予定だ。希望があればもちろんイッセンとマープルにも渡す。
「……どうせなら三人で撮りたい」
 などとカナリアが呟くものだから、イッセンもリリアーヌも機嫌の上昇は留まるところを知らない。
「なら私が撮ろうか。五人で写るのもいいだろうし」
「クリスさんは?」
「Cheerful guyの言葉は嬉しいけどね、Little Ladyと一緒に撮ったなんてMy dear sonに知られたら、ウイルス送り込まれそうででね」
「ん。りょーかい。じゃあクリスさんカメラよろ!」

 後日、カナリアは「TabTapS!」内でこう語った。
「皆さんの邪魔にならない動きを頑張ります!」
 まったく知らないメンバーと一緒にプレイするというのは、一つの成長をもたらしたようである。

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