「初心者VRMMO(仮)」小話部屋

神無乃愛

クリスマスパーティ その1

 クリスマスイベント真っ盛りの「TabTapS!」内で、カナリアは浮いていた。

 そりゃ、いくら家で一度もクリスマスをしたことがないとはいえど、サンタクロースやモミの木、その他諸々のことは知っている。

 ……が、いくら何でも赤い服と赤いミニスカートを穿いたギルドカウンターの女性とか、トナカイ姿の男性とか……。ここまでお祭り騒ぎになっているとは知らなかったのだ。

 そんなカナリアにジャッジが箱を手渡した。
「? 何ですか、これ」
「ケーキ」
 三角形のケーキがどれくらい入っているのだろう。そう思うくらい大きな箱が三つあった。
「ブッシュ・ド・ノエルとクリスマスプディング、それからシュトレンだ」
「……ふぇ?」
 どれも聞いたことがない。とりあえず三点の特徴を事細かにジャッジが教えてきた。
「ケーキってロールケーキ以外は三角形じゃないんですか?」
「はぁ!?」
 カナリアの言葉にジャッジが驚いた顔をしていた。

 カナリアにとってケーキは給食で食べた三角形のもの、もしくはロールケーキか小さめの丸いケーキのみだ。つまり、ノエルのような形のケーキなど知らないし、当然海外のクリスマスケーキどころか、ホール型の生クリームケーキも知らないのである。
 それを話すなり、ジャッジはどこかに電話をかけていた。
「もう一つあとで来るから。プディングに関してはカーティスさんのほうが詳しいだろうから、来たら聞くといい」
「はいっ」
 たくさんの人とケーキを食べると知ったカナリアは、それだけで舞い上がっていた。


「おや、クリスマスプディングですか。中身は?」
 来て早々にカーティスは口を開いた。ちなみに、カーティスたちは練りきりもどきで作られたケーキを持参している。
「これは?」
「創作和菓子といったところでしょうか。マリル諸島で修業中の和菓子職人が作ったものです」
 余談ではあるが、その人物の現実での職業はパティシエだ。
「日本にはこれの本物があるそうですね! 是非食してみたいものです」
「甘いな。練りきり以外にもおはぎはまんじゅうを使ったケーキだってあるんだぞ」
「なんと素晴らしい! 是が非でも日本に行って食せねば!」
 カーティスに油を注ぐかの如くジャッジが言う。それを見てたエリはため息をついていた。
「ギルマスがこうなるから、言わなかったんだよね~。マモルが練りきりのことを話したときもこんな感じだったからさぁ」
 そんな光景をカナリアは少し離れたところで見ていた。

 そして、「神社仏閣を愛する会」と「カエルム」の合同でクリスマスパーティが開かれた。

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