「初心者VRMMO(仮)」小話部屋

神無乃愛

素朴な疑問~ブクマ2400件突破&300万PV突破御礼~


 毎度のことだが、カナリアは疑問に思うことがある。

 当人たちは「じゃれあい」などと称しているが、似たような例で「PK」扱いされ、「イエローカード」や「レッドカード」を食らっている実例を目にしているからだ。

 特に、前回のジャッジに対するジャスティスの対応や、その前のオークゴブリン戦のときのディッチに対する周囲の反応……。全てとってもおかしくない。

「何で『PK』扱いにならないかって? そりゃうちらが同じギルメンなのが一つ」
 スカーレットがけたけたと笑いながら説明し始めた。
「あとは、うちらの恒例行事だからねぇ。だって、前の運営会社のときからやってたし。大体が前の会話に問題ありで突っ込みを入れてるだけだし」
 その突っ込みが過激なだけよ。そう言ってきたスカーレットに少しばかり尊敬してしまう。
「昔、一回食らいそうになったよ。……あん時初めて大砲訓練入れたときだったけど」
 傍から見れば、大砲でPKをしているようにも見えるという。
「食らって速攻苦情言って、『そこまで文句あるなら、レイド戦の戦果を見てからいえ』ってジャスが言い放って、それでおしまい」
 結局、ジャスティスのステータスはかなりアップしてるわ、大砲の命中精度が上がってるわで、運営側も何もいえなかったという。
 ただし、その訓練をする時は運営側に一報入れること、それから目立たないところですること、この二つが盛り込まれた。

 突っ込みは言わずもがな。
「記録を少し前から見やがれ」とスカーレットが言い放ち、見た運営側が絶句したというものだ。「失礼しました。今後は話の内容も加味させていただきます」と言っていたが、それがトールの横暴に繋がるとは思いもしなかったと説明された。
「うちらはね、そういうことはオープンにしてるの。だから今の運営会社も、『PK』の基準として、『いきなりの攻撃』『アイテムを奪うこと』に加えて『前後の会話が重要』『その内容の公開』にしてるわけ」
 ある意味、ガイドラインを作ってる人たちなのだとカナリアは感激していた。
「凄いです! さすが皆さんです!」
「ふふふ。カナリアちゃん可愛い。このまま連れ去りたい……」
「……レット」
 強くスカーレットに抱擁されている後ろから、凄まじい殺気が流れてきた。
「やぁねぇ。器の狭い男は嫌われるわよ」
おとこらしすぎて、婚期逃し続けてるやつに言われたくない」
「いいの~。あたしはアルブスにユーリさんとカナリアちゃんを愛でていれば幸せ~~。軟弱な男はごめん被るわ」
 ナンダカモノスゴクコワインデスガ。
 二人のかもし出す雰囲気がカナリアを怯えさせていく。

 そして、怯えるあまりとんでもないことを言ってしまったのだ。
「お……お二人とも仲良しですね!!」

 PvPに入ろうとしていた二人はその言葉に、切々と違うとカナリアに説明する羽目になっていた。


 それを見ていたディッチとディスカスは……。
「仲良きことは美しきかな」
「……全くだな」
 とのんびりいいながら、セバスチャンの淹れたコーヒーもどきを飲んでいた。

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