「初心者VRMMO(仮)」小話部屋
ブクマ1500件突破お礼小話~マープルさんのとある一日 その2~
着々と下ごしらえをしていれば、今度は娘がやって来た。
「あら、ご飯の準備は?」
「お母さん、まだ現実時間の三時ですよ? 終わらせるもの終わらせてから来たの。四時半にはログアウトするけどね。それまで下ごしらえ付き合うよ」
「ありがとう」
孫が戻ってこれば、三人がかりで下ごしらえをしていく。
開店すると、冒険者がぽつぽつと入ってくる。
「マープルさん。今日はテイクアウトある?」
「あるわよ。おにぎりとサンドイッチ」
「じゃあ、サンドイッチとこれにコーヒーお願い」
「私はおにぎりとお茶で」
期間限定のクエストが現実世界の夕方五時に配信されるため、その直前が忙しくなるはずだ。これからクエストに行く冒険者はここで色々と買っていく。そして帰りにも寄るのだ。
持ち帰りの食べ物を用意するようになったのは、ここ十年ちょっと位だ。
提案してくれたパーティの一人は今でもこのゲームを続けているが、他はぱたりとやめてしまった。
理由はネームバリューだ。有名になればなるほど、寄って来る馬鹿も多い。それゆえ、それが嫌で止めるプレイヤーも多いのが現状だ。
「お母さん。味噌と醤油が切れそう」
「じゃあ買ってきて」
娘の言葉に、マープルは明るく返した。
全てを作る必要はない。仕入れを行えるものは行う。それがマープルの考えだ。
「こんにちは。パン持って来ましたよ」
「ありがとう」
次々に持って来る。それを娘がより分けまた作っていく。
娘がログアウトすると、それと入れ替わりでイッセンがログインしてくる。
「ばあちゃん! 今日別サーバーからお客が来るって!?」
慌てたように店に来るイッセンをリリアーヌが呆れてみていた。
「……あのねぇ。挨拶よりもそっち?」
「リリ来てたのか! ここんとこ顔合わせてなかったな!」
「じゃないでしょ!? いっくんの馬鹿!」
「ほら、もうすぐ来るからね。喧嘩しないの」
いつもこの二人がぎゃいぎゃい言っているが、大半はイッセンのせいだ。現実世界ですらそうなのだから、どうしていいものか分からなくなる。
「Hello!」
「コンニチハ」
日本時間にしてジャスト五時。二人の男が入ってきた。
『ルーファス、ロイ、久しぶり!』
すぐにイッセンが英語で二人に話しかけた。それに対してリリアーヌはすぐさまカウンターの奥へ逃げようとしていた。
「逃ゲナイデ、欲シイデス」
「わざとらしく片言で離してんじゃないわよ! ロイド!!」
「やっとリリアが僕の名前を覚えてくれたよ!! すばらしいことだと思わないか!」
イギリスサーバーからわざわざ来た男は、ルーファスという名前の聖騎士だ。そして、ブラジルサーバーからの来客はロイドという名前の暗黒騎士で、特殊クエストがなくてもリリアーヌに会いにしょっちゅうきている男である。
「煩いと営業妨害よ。さっさとPT組んでクエストに行ってらっしゃい」
「ミセス・マープルは相変わらずです。イッセンもいることだし、クエ主をイッセンにして四人で行かないかい?」
ロイドの提案にルーファスとイッセンがすぐに了承して、リリアーヌに視線を向けていた。
「あ、あたしはこれからログアウトだもん!!」
本当はイッセンと一緒にクエストに行きたかっただろうに。猛アタックをかけてくるロイドが大の苦手な孫娘はさっさとログアウトした。
「う~~ん。残念。ミセス・マープルは?」
「あたしもログアウト。一度ご飯を食べてから戻ってくるつもりよ。その時間内で終わって、もう一回行けそうだったら誘って頂戴」
店をNPCに任せてログアウトしようとした時、また店のドアが開いた。
「あら、ジャッジ君」
「いつもより賑やかだな。……そういや限定クエスト配信日か」
他者とは違うオーラ漂わせる男、ジャッジだ。寡黙で近寄りがたいとされる雰囲気をわざと出している。昔は人懐っこい子供だった。
「はいっ。今からいく予定でPT組む予定だったんですけど、ジャッジさんもいかがですか?」
魔法騎士という特殊職業でありながら、使う武器は剣でなく二振りの日本刀というスタイルが独特で、誰もが憧れると言われている。
「……行かねぇ。ってか、婆さんの生存確認さえ出来ればそれでいいんだし」
「ふふふ。まだくたばらないわよ」
「そうしてくれ。で、コーヒーとサンドイッチ」
「ちょっと待ってね」
ジャッジの分を用意して、一度ログアウトした。
「あら、ご飯の準備は?」
「お母さん、まだ現実時間の三時ですよ? 終わらせるもの終わらせてから来たの。四時半にはログアウトするけどね。それまで下ごしらえ付き合うよ」
「ありがとう」
孫が戻ってこれば、三人がかりで下ごしらえをしていく。
開店すると、冒険者がぽつぽつと入ってくる。
「マープルさん。今日はテイクアウトある?」
「あるわよ。おにぎりとサンドイッチ」
「じゃあ、サンドイッチとこれにコーヒーお願い」
「私はおにぎりとお茶で」
期間限定のクエストが現実世界の夕方五時に配信されるため、その直前が忙しくなるはずだ。これからクエストに行く冒険者はここで色々と買っていく。そして帰りにも寄るのだ。
持ち帰りの食べ物を用意するようになったのは、ここ十年ちょっと位だ。
提案してくれたパーティの一人は今でもこのゲームを続けているが、他はぱたりとやめてしまった。
理由はネームバリューだ。有名になればなるほど、寄って来る馬鹿も多い。それゆえ、それが嫌で止めるプレイヤーも多いのが現状だ。
「お母さん。味噌と醤油が切れそう」
「じゃあ買ってきて」
娘の言葉に、マープルは明るく返した。
全てを作る必要はない。仕入れを行えるものは行う。それがマープルの考えだ。
「こんにちは。パン持って来ましたよ」
「ありがとう」
次々に持って来る。それを娘がより分けまた作っていく。
娘がログアウトすると、それと入れ替わりでイッセンがログインしてくる。
「ばあちゃん! 今日別サーバーからお客が来るって!?」
慌てたように店に来るイッセンをリリアーヌが呆れてみていた。
「……あのねぇ。挨拶よりもそっち?」
「リリ来てたのか! ここんとこ顔合わせてなかったな!」
「じゃないでしょ!? いっくんの馬鹿!」
「ほら、もうすぐ来るからね。喧嘩しないの」
いつもこの二人がぎゃいぎゃい言っているが、大半はイッセンのせいだ。現実世界ですらそうなのだから、どうしていいものか分からなくなる。
「Hello!」
「コンニチハ」
日本時間にしてジャスト五時。二人の男が入ってきた。
『ルーファス、ロイ、久しぶり!』
すぐにイッセンが英語で二人に話しかけた。それに対してリリアーヌはすぐさまカウンターの奥へ逃げようとしていた。
「逃ゲナイデ、欲シイデス」
「わざとらしく片言で離してんじゃないわよ! ロイド!!」
「やっとリリアが僕の名前を覚えてくれたよ!! すばらしいことだと思わないか!」
イギリスサーバーからわざわざ来た男は、ルーファスという名前の聖騎士だ。そして、ブラジルサーバーからの来客はロイドという名前の暗黒騎士で、特殊クエストがなくてもリリアーヌに会いにしょっちゅうきている男である。
「煩いと営業妨害よ。さっさとPT組んでクエストに行ってらっしゃい」
「ミセス・マープルは相変わらずです。イッセンもいることだし、クエ主をイッセンにして四人で行かないかい?」
ロイドの提案にルーファスとイッセンがすぐに了承して、リリアーヌに視線を向けていた。
「あ、あたしはこれからログアウトだもん!!」
本当はイッセンと一緒にクエストに行きたかっただろうに。猛アタックをかけてくるロイドが大の苦手な孫娘はさっさとログアウトした。
「う~~ん。残念。ミセス・マープルは?」
「あたしもログアウト。一度ご飯を食べてから戻ってくるつもりよ。その時間内で終わって、もう一回行けそうだったら誘って頂戴」
店をNPCに任せてログアウトしようとした時、また店のドアが開いた。
「あら、ジャッジ君」
「いつもより賑やかだな。……そういや限定クエスト配信日か」
他者とは違うオーラ漂わせる男、ジャッジだ。寡黙で近寄りがたいとされる雰囲気をわざと出している。昔は人懐っこい子供だった。
「はいっ。今からいく予定でPT組む予定だったんですけど、ジャッジさんもいかがですか?」
魔法騎士という特殊職業でありながら、使う武器は剣でなく二振りの日本刀というスタイルが独特で、誰もが憧れると言われている。
「……行かねぇ。ってか、婆さんの生存確認さえ出来ればそれでいいんだし」
「ふふふ。まだくたばらないわよ」
「そうしてくれ。で、コーヒーとサンドイッチ」
「ちょっと待ってね」
ジャッジの分を用意して、一度ログアウトした。
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