レジス儚記Ⅰ ~究極の代償《サクリファイス》~
第五章 第五話「友」
魔女と別れた陽太は、夜になるのを待ち、街へと侵入する機会を伺う。
入り口には門番。
ごつい竜族だ。
――千歩というと約五百メートルぐらいか。
ハリルのいる城までは到底たどり着けないが、門番の目をすり抜けて侵入するぐらいなら問題なさそう。
なるようになれとばかりに飛び出す陽太。
「っしゃあ!」
あくびをしている門番には気付かれず、町へと侵入成功。
初めて訪れた時は街並みをゆっくり見物するような時間も余裕も与えられなかったが、石畳の路面に平屋が立ち並び、どこか古風な街並み。
夜でも賑やかだった帝都に比べ、静まり返っている竜族の王都ロキア。
物陰に隠れながら息をひそめ、城のほうへと向かう。
城門は固く閉ざされている。
入る隙はないかと外周をぐるり探ってみる。
しかし城の周囲は水路になっており、簡単には侵入できない。
泳げない陽太は尚更である。
――困ったな。
草むらの陰で途方に暮れていると、背後に人の気配を感じる陽太。
そこには月明かりに照らされ、青い髪が更に蒼く神秘的なオーラを纏っているように見える少女の姿。
「陽たん……?」
「ルナか!」
「陽たん!!」
駆け寄り、陽太の首に飛び付くルナディ。
すると城の上から見張りの兵が叫ぶ。
「誰だ!」
「シー! 見つかっちまうぞ!」
ルナの頭を押し付け、草むらへ隠れる二人。
「こっち」
ルナに手を引かれ、街のとある建物へと逃げ込む。
この町では珍しい二階建ての大きな建物だ。
中に入るとウツラウツラしているおじさんがカウンターに一人。
気づかれないように二階へあがり、角の一室へと誘導される。
「ルナ、今ここに泊めてもらってるの」
「ここは……旅館か?」
「うん」
話によると、魔女が現れた一件から警備も厳しくなり、夜は城壁の中に入るのすら難しいだろうとのこと。
陽太のことを良く思っていない城の連中に囲まれているのは辛いからと、ルナディは城の外にある旅館に住まわせてもらっていたらしい。
「ハリルは元気か?」
「うん、でも王様とは険悪なまま」
ハリルたちと抜け出したあの日、秘密基地で友情の証をもらった。
初めて親友と呼べる相手に出会えたことに胸が熱かった。
真っ直ぐで器の大きい尊敬できる友。
しかしその後、陽太は竜族に殺されかけた。
魔女に救われ、そのまま拉致られたが、ハリルはそんな陽太を今でも擁護してくれているよう。
陽太も改めてハリルの友情を感じる。
少しでも疑った自分が恥ずかしい。
首から下げたペンダントを握りしめる。
「朝になったら、ルナがハリルを呼んでくる」
「すまんな」
「じゃ、寝るの」
もぞもぞと陽太の隣に潜り込むルナディ。
「って、一緒のベットで!?」
幼女には興味ないが、体は同い年、小四ともなるとさすがに照れる。
「お母さん……」
ルナディの独り言にハッとなる陽太。
――そうだ、この子は家族が消えてからずっと一人で頑張ってきたんだな。
こんな十やそこらの子供が、なんて強い子なんだろう。
ポンポンと心音のリズムで頭を撫でてやる陽太。
安心したのか穏やかな寝息をたてるルナディだった。
入り口には門番。
ごつい竜族だ。
――千歩というと約五百メートルぐらいか。
ハリルのいる城までは到底たどり着けないが、門番の目をすり抜けて侵入するぐらいなら問題なさそう。
なるようになれとばかりに飛び出す陽太。
「っしゃあ!」
あくびをしている門番には気付かれず、町へと侵入成功。
初めて訪れた時は街並みをゆっくり見物するような時間も余裕も与えられなかったが、石畳の路面に平屋が立ち並び、どこか古風な街並み。
夜でも賑やかだった帝都に比べ、静まり返っている竜族の王都ロキア。
物陰に隠れながら息をひそめ、城のほうへと向かう。
城門は固く閉ざされている。
入る隙はないかと外周をぐるり探ってみる。
しかし城の周囲は水路になっており、簡単には侵入できない。
泳げない陽太は尚更である。
――困ったな。
草むらの陰で途方に暮れていると、背後に人の気配を感じる陽太。
そこには月明かりに照らされ、青い髪が更に蒼く神秘的なオーラを纏っているように見える少女の姿。
「陽たん……?」
「ルナか!」
「陽たん!!」
駆け寄り、陽太の首に飛び付くルナディ。
すると城の上から見張りの兵が叫ぶ。
「誰だ!」
「シー! 見つかっちまうぞ!」
ルナの頭を押し付け、草むらへ隠れる二人。
「こっち」
ルナに手を引かれ、街のとある建物へと逃げ込む。
この町では珍しい二階建ての大きな建物だ。
中に入るとウツラウツラしているおじさんがカウンターに一人。
気づかれないように二階へあがり、角の一室へと誘導される。
「ルナ、今ここに泊めてもらってるの」
「ここは……旅館か?」
「うん」
話によると、魔女が現れた一件から警備も厳しくなり、夜は城壁の中に入るのすら難しいだろうとのこと。
陽太のことを良く思っていない城の連中に囲まれているのは辛いからと、ルナディは城の外にある旅館に住まわせてもらっていたらしい。
「ハリルは元気か?」
「うん、でも王様とは険悪なまま」
ハリルたちと抜け出したあの日、秘密基地で友情の証をもらった。
初めて親友と呼べる相手に出会えたことに胸が熱かった。
真っ直ぐで器の大きい尊敬できる友。
しかしその後、陽太は竜族に殺されかけた。
魔女に救われ、そのまま拉致られたが、ハリルはそんな陽太を今でも擁護してくれているよう。
陽太も改めてハリルの友情を感じる。
少しでも疑った自分が恥ずかしい。
首から下げたペンダントを握りしめる。
「朝になったら、ルナがハリルを呼んでくる」
「すまんな」
「じゃ、寝るの」
もぞもぞと陽太の隣に潜り込むルナディ。
「って、一緒のベットで!?」
幼女には興味ないが、体は同い年、小四ともなるとさすがに照れる。
「お母さん……」
ルナディの独り言にハッとなる陽太。
――そうだ、この子は家族が消えてからずっと一人で頑張ってきたんだな。
こんな十やそこらの子供が、なんて強い子なんだろう。
ポンポンと心音のリズムで頭を撫でてやる陽太。
安心したのか穏やかな寝息をたてるルナディだった。
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