気分屋文庫

有賀尋

The human story that got rid of feelings


『あなたが生きるのを保証する代わり、私にあなたの感情を全てください』

そう言った。

生きていたくもないがまぁ命がある限りならと、感情をなくした。
そうするとこの世界はなんだかつまらないものに見えた。
いつも忙しくしている人、その箱に何に夢中になることがあるのか。あぁ、この世界はつまらない。

つまらないと思うのも感情か。
でもこれは俺の生きる対価として、あいつに支払われる。

生きるためなら、ただの人形でもいいか。
その方がいっそ楽だろう。
抗う事もせずただただ感情を対価として生きていくだけ。これにどんな価値があるのかは知らないが、価値があるのならば。

悲しいと思う事も、涙を流すことも笑うことも何も無い。
あぁ、なんて楽なんだ。

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