気分屋文庫

有賀尋

The human story that there is when I intended to die

人はどれだけ何も食わずにいたら死ねるだろう。


そう考えたことがある。

生きているだけで金がかかる。
どれだけ働いても手元に残る金なんてありはしない。
自分のやりたいことも出来ずにただ朽ち果てていく。 

この国はそんな国だ。

どうしてこうも生きずらいんだろう。

どうしてこうも嫌になるんだろう。

いっそ死ねたらどれだけ楽になれるだろう。

金がかからない世界の方がよっぽど美しいのかもしれない。
死のう死のうと考える日々は、遠い昔にあったはずなのに、どうしてこうもまた芽生えてくるのだろう。

...あぁ、いっそ死ねたら。

悲しむ人間はいないだろう。
憐れむ人間もいないだろう。
残るのは「そこに生きていた人間がいた」
ただそれだけ。

息をするだけで金がかかる。
息苦しい。
やりたいこともやれない。
夢を馬鹿にされる。

この国は、人間はこうも冷たいものだっただろうか。

弱者に対する救済は存在しない。
あるのは強者に対する媚びと、弱者に対する圧力だ。
金と権力に溺れて力でねじ伏せようとする。

あぁ、思い出した。
人間はこんな生き物だったな。

忌々しく流れるこの血に抗えはしないのか。

ならもういっその事この身を投げてしまおうか。

誰も居ない場所で全てを断ち切ってしまえばこの思いは晴れるだろうか。
迷惑をかけない生き方なんてあるのだろうか。

生まれて来なければよかったのだろうか。

あぁ、でも。

愛する人を見つけたからその人を置いては死ねないか。
その人だけはこんな人間のためにきっと悲しんだり泣いたりしてくれるんだろう。

後にも先にも、夢を話してちゃんと聞いてくれたのはあの人だけだったな。

「...夢は所詮夢...か...」

このまま朝が来なければいいのに。
このままこの夜が続けばいいのに。
このまま目が覚めなければいいのに。

そう思いながらまた目を閉じる。
朝を迎えたくないと思いながら。

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