初心者がVRMMOをやります(仮)

神無乃愛

捕獲完了!!


「りりちゃん!?」
「りり!?」
 のんびりしていた二人は一瞬にして取り乱した。
「い……いっくん、どうしよう」
 あまりにも慌てふためくカナリアに、逆に冷静になれたイッセンは今の位置からリリアーヌがいた場所に向けて索敵を始めた。
 敵らしきものは存在しない。おそらく索敵はカナリアの方が上だろうということで、頼んでみたが、そちらにも反応が無いようである。

 それから数分後、リリアーヌからメールが届いた。「気づいたら綺麗に切り刻まれていた。何度も戻った先で死に戻り。何とかそのスパイラルから抜けてメール出来た」と。
「……多分、例の蜘蛛の巣だ」
 イッセンの呟きに、カナリアも頷いた。訳も分からず死に戻りするのは、トラップか例の蜘蛛の糸だけ。そして、戻った先で何度も死に戻りするということは、蜘蛛の巣以外ありえないのだ。
「おかしいと思ったんだよね。『モンス・バタス』の羽根が散らばっていたんだもん」
「その時点で一度戻ろうよ、りり」
「だってぇ。他の人も捕獲しようとして失敗しただけだと思ったんだもん」
 それはあり得るかもしれない。カナリアはそう思った。何せ、討伐して羽根から鱗粉だけを採取するというクエストは初期からある。そして、その鱗粉は錬金術によく使われるらしい。
 ついでに、防具の強化にも使うらしく、ジャスティスも時折討伐、もしくは採取している。
「で、りりがおかしいと思ったところはどこだったの?」
「ん? 本体が一切なかった。あったのは羽根だけ」
 それを聞いたイッセンが慌ててディッチにメールを入れていた。


 このメールを受け取った時、ディッチたちはこれから捕獲という段階に入っていた。
「……餌、分かったかも」
「はぁ!?」
 さすがに全員が驚き声をあげた。
「まず、俺らがすべきなのは囮! イッセン君にお願いして、対策は練った」
 とりあえず捕獲した「モンス・バタス」はすべてディッチが買い取る、ということで話はつけた。

 そして、バーサク化したスパイダーにより死に戻りすると、当初よりも金額に色目を付けてリリアーヌから買い取った。


 イッセンの予想通りというべきか、そのスパイダーは「モンス・バタス」の本体を食らい、そして羽根についた鱗粉を吸収していく。
「……鱗粉吸収するんだ」
「そこは気づかんかったか」
「羽根だけが落ちていたってしか、俺聞いてませんし」
「だよな~~。さすがに俺も驚いてる」
 そう、スパイダーは「モンス・バタス」の本体を食らい糸を出し、その羽根についた鱗粉で糸をあの強化した糸へと変えていたのだ。
「うわぁぁぁ! 予想以上にえげつない!」
 ディッチたちに依頼してきた他のギルドメンバーそれを見てドン引きしていた。

 ……気持ちは、分かる。

 そして無事捕獲からのテイムに成功したギルドが願ったのは、このスパイダーの命名権と、簡単にテイム出来る仕様へと変えることだった。

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