初心者がVRMMOをやります(仮)

神無乃愛

現実世界にて<セラフィムの苦労(?)>

 そんな一弥従兄の心、美玖知らず。
 国外に出ることなどまったく考えていなかった。

 そして、それ以前の問題としてパスポートなど持っていないということに、誰一人気づいていなかった。

 そのことに最初に気づいたのは、クリストファーだったりする。

 何ということはない。美玖を餌に保も再度渡米させるつもりだったのだ。

「TabTapS!」内でその旨話したところ、「パスポート持ってませんけど」という返事が来たのだ。

「……困ったね」
「マイ・マスター。いかがなさいました?」
 セラフィムがうなっているクリストファーに声をかけてきた。
「Little ladyとMy dear sonをアメリカに呼ぼうと思ったのだけどね、Little ladyはパスポートを持っていないらしいんだよね」
「何もアドナキエルだけ呼べばよいかと」
「My dear sonは今、Little ladyのそばを離れたくないらしくてね。一緒じゃないとこちらに来ないそうだ」
 取得は現状では難しいことをセラフィムにのみ伝えてきた。
「犯罪者か何かですか?」
 見かけによらない、セラフィムは言外にそう含ませた。
「Little ladyは犯罪者じゃないよ。逆に被害者だ。保護プログラムの庇護下にいる」
「そんな人物を呼ぼうと思わないでください!」
「え~~? My dear sonをアメリカこっちに呼びたいし、Little ladyと話をしたい、、、、、んだもん」
 この言葉でセラフィムは悟った。話をしたいだけではなく、セラフィムたちともきちんと顔合わせをさせたいのだと。
 それでもなお、「困ったねぇ」と呟くクリストファーを見つめた。
「……マイ・マスター」
 セラフィムのこめかみあたりに青筋が浮かび始めていた。
「そんなことぐらいで保護プログラム庇護下の人物を呼ばないでください! どうしても我々とそのお嬢さんを直に会わせたいのなら、我々が日本に出向きます!」
 その言葉にクリストファーの瞳が怪しく輝いた。
「セラフィム、言質は取ったよ! では来週に主要メンバーの半数を渡日させる! 残りの半数は来月だ!!」
 はめられた! 毎度この手に引っかかってしまうセラフィムだった。

「……セラフィムお前もいい加減慣れろよ」
 渡日してアドナキエルと顔合わせをしたときに、同情を込めて呟かれた。

 ちなみに。Little ladyという美玖の愛称はセラフィムたちにも浸透し、ゲーム内外問わず美玖を指すことばになった。

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