初心者がVRMMOをやります(仮)
不思議なガレージと、キッチン
イッセンよりも一足先に到着していたカナリアとリリアーヌは、セバスチャンの淹れた紅茶でまったりしていた。
「……ここって?」
やけにくつろぐカナリアを目の前に、リリアーヌは首を傾げた。何せ、カナリアは人見知りが激しい。知らないところであれば、ただでさえ大人しいのに、その状態から借りてきた猫になる。最悪、気配すら消してしまう子だ。
「ジャッジさんの不思議なガレージ」
「……美玖ちゃん」
「だってジャッジさんが言ってたんだもん」
「……あっそ」
惚気が聞けるようになるとは思っても見なかったりする。
「問題の場所に行くには、ここを拠点とするのが一番かと思われます」
お代わりの茶を注ぎつつ、セバスチャンが言う。
「ミ・レディはジャッジ様と何度かこちらに足を運んでいらっしゃるので、慣れた場所なんです」
「だよね~~。あたしもいっくんともう一か所拠点作ろっかな」
「リリアーヌ様方の拠点は動かさないでくださると、助かります」
「ジャッジさん、そこまで節操ない?」
「ジャッジ様だけなら、クィーン様で事足ります。正直、『十二宮』『七つの森』も同様です。問題はリリアーヌ様方が最近飼われましたスパーダ―シルクです」
「……あーー」
セバスチャンの言葉に、リリアーヌは何も言えなくなった。
素材は欲しいが、虫が苦手なカナリア。びくびくしながら毎回リリアーヌたちからおこぼれに預かっている。
「しばらくはそのままいるよ。場所も決まらないし」
「え!? りりちゃんといっくん、場所移動するの!?」
「たまにそんな話が出てるの。間借りだしさ。でも、どこか移動するにしても、ジャッジさんみたいに、美玖ちゃんの傍にいるよ」
「ほんと!? 嬉しい」
一緒にいる、そう言っただけでカナリアの顔がほころんだ。毎度のことながら癒される。これがあるから、場所の移動が出来ないのだ。
つくづく、自分もカナリアには甘いと実感した。
今回の拠点がジャッジのガレージになる、それが判明した時から、カナリアはガレージの改造を着々と進めていた。
まず、キッチンを作ること。セバスチャンと二人で作業できるようにする、というのを前提にした。それから、大事な「家族」が付いてきたり、メルや翼竜が来ても大丈夫なようにすることに重点を置いた。
キッチン以外は外側に付け足したので、ガレージ内はほとんど変わることがなかった。大事な拠点を変にいじっちゃだめだよね、そう思ってキッチンすら作る予定がなかったのだが。
逆にジャッジが欲しがった。「カナリアの作り立て手料理はどこでも食べたい」と。
「カナリアって謙虚すぎるよな」
「ジャッジさん、どうした?」
「いや、このガレージ、カナリア好みにしちまおうかと思ったんだが、キッチン入れて終わった」
「元々物欲ない上に、大事なものを荒らされる痛みは誰よりも知ってるだろうしさ」
そんな話を、ジャッジとイッセンがしているとも知らずに。
「さて、そろそろ行くぞーー」
ディッチの言葉で、集まったメンバーが動いた。
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