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神無乃愛

非常識親子の戦い 4~クリスの回想と非常識さの度合い~


 ジャッジあの子ときちんと向き合うのはどれくらいしていないのか。クリスはそんなことを思ってしまった。

 ジャッジを捨てたのはクリスクリストファーだ。残忍に壊れた子供をないものとして扱った。
 己の父親を社会的に抹殺し、一切表情を変えなかった子供。邪魔した者は誰であろうと叩き潰す。
そうさせたのは己たちであったにも関わらず、捨てたのだ。

 気が付けば日本にいる母親を頼り、学校に通うことを決め、すぐに母親とも疎遠になっていた。
 ゲームの世界で「ジャッジ」という名前を使い、暴れまわる。チーターではないかといわれるほどに、ボーダーラインギリギリのことをし続け、悪評だけが付いて回っていた。

 悪評を聞かなくなったところで、気が付けば一緒に行動するプレイヤーがいて驚いた。

 プログラマーとしての腕前を己で見極めなくなって十年以上、どのように進化したのか知りたかった。

「My deae son、そんなことをしていると私が称号をもらうよ」
「ふざけんな!!」
 とんと話を聞かなくなったあとに、プレイヤーとしてのジャッジを見て、弱くなったのと思っていた。
――アドナキエルが暴走プログラムを組みました――
――アドナキエルが……――
――ラファエルが……――
 どうやら弱くなったわけではないらしい。
 再会して表情が豊かになっていて驚いたのは秘密だ。
「くくく。そうこなくてはね。My dear sonくらいだよ。『ペンタグラム・マジック』の弱点を突いてくるは!」
「弱点なんてあったの!?」
 すぐ近くで驚くスカーレットを見て、クリスはほくそ笑んだ。
「もちろんだとも。だからこそこうやって修正プログラムを組みながらやっているわけだし」
「うるせぇ! クリスてめぇの言う弱点なんざ、弱点でもなんでもねぇ! ただ単にMPロストを食い止めるためのプログラムを超えて魔法使ってるだけだろうが!」
「ばらすものじゃないよ、My dear son」
 やはりばれていたようだ。「ペンタグラム・マジック」のリキャストタイムは、MP使用によってキャンセルすることもできる。早い話が、MP枯渇してしまえばスキルが発動できないどころか、魔法も打てなくなるのだ。

 互いに右手でプログラムをブラインドタッチで打ちつつ戦っているのを、周囲が「そっくり」と思っていることなど知るわけもなく。
 久しぶりの戦いに高揚していた。

「……くそっ。これでどうだ!?」
「って……えぇぇぇ!? リフレクした魔法って当たり判定なかったはずでしょ!?」
「レット、お前は下がれ! 俺が受ける」
「ジャス、大丈夫なの!?」
「さっき受けたが、威力は元の半分もない。俺のMDFとDEFなら問題ない!」
 人龍化したジャスティスがあっさりと言う。自分から当たりにいくプレイヤーもそういないはずだ。
「半分以上私のスキルが封じられたも同然だから、悪いけどジャス君が壁役、レットちゃんが斬り込み役でいいかな。私は回復とリクレク出来ない魔法の開発しちゃうから」
「出来るんですか!?」
「やってみなきゃわからない」
 クリスの言葉に二人がすこんとこけていたが、あえて無視する。

 新たなる挑戦に、高揚感がクリスを包み込んでいた。

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