初心者がVRMMOをやります(仮)

神無乃愛

驚愕、激震、それから?


 四方の大砲を誰が操作するか、となるとかなり悩む。
 一人はジャッジ。これは満場一致で可決。次点、タカ。これも実演を見せたら納得された。
 問題はあと二人である。前線と砲台の行き来はスカーレットの錬金術で作った移転石を利用する。それも決定事項だ。
 基本、ジャッジもタカも前線にいてもらう。そして砲撃が必要になったときに戻ってくるように、移転石を砲台のすぐそばに置いておく。

 二人を砲撃係にしてもいいのだが、それぞれの砲台の間はかなり距離がある。ここにも移転石を置いてしまうと、混乱の元になりかねない。
 それくらいなら、あと二人砲撃係が欲しいところである。
「……どうしたもんかね」
「うちのラウも出来ますが、さすがに二人ほどの実力は無いですよ」
 そう言うのはチェンである。一応メンバーの中に入れておく。
「残り一人」
 トトは現役警察官で、ゲーム内でもDEXはそれなりに高い。しかし、実際的に当てられるかというのは別の話で、全く当たらない。そのため除外したばかりだ。
 スカーレットとゲーム内の銃器の相性の悪さは伝説となっており、こちらも除外。
 とどめとして、残りのギルドにも銃器を扱えるPCはいない。
「カナリアさんで駄目ですか? というか、話を聞く限りずっと砦から出ないで欲しいんですが」
 そう言ったのはマモルだった。

「……あーーー。うん。ただアイテム運搬係として動き回って欲しい気もするんだよな」
 素材を目の前にして暴れないためには、砦にいてもらったほうがいい。だが、間違いなくアイテムは枯渇する。その時、あの四次○ポケット倉庫と直結した鞄があるとかなり便利なのだ。
 今回フル参加はカナリアのみ。リリアーヌもログインできない時があるという。

 それを話せば、他ギルドメンバーも困った顔をしていた。

 失敗の要因に「アイテムの枯渇」というのは密接に関わっているからだ。

「……困りましたねぇ」
「困ったな」
「ジャスティスさんは無理なんですか?」
「俺は常に前線に出てた方が、他の人の被弾も少なくて済むし。毎回、こういうときは前線でフルボッコされてる」
「だと無理ですねぇ」
 今ので納得していいの!? そうディッチは思ってしまったが、あえて口に出さないで置いた。
「ディスカスさんは?」
「あいつには大砲のメンテをしてもらいたい」
「ディッチさんは?」
「俺に銃器を扱えと? STRの値が恐ろしいほどに足りないんだが」
「……あ」
 こちらに大砲を任せたいウドムの問いに真顔で返すと、周囲が驚いていた。

「ディッチさん。やっぱあんた、STRをこれから極振りすべきですよ」
 ジャスティスがからかいながら言う。
「あのね、俺はクレリックなの。大砲を支えられるようなSTRは必要ないの」
「いや、今の周囲の反応見る限り、絶対使えるほうが皆さん納得出来ますって」
「してもらう必要はないっ」
 結局、四箇所目は「保留」ということで、各自ギルドに持ち帰ることになった。

「……というわけだ。カナリア君、素材優先にしたら全滅だからね?」
「気をつけます」
 小さな声で言ってくるあたり、嫌な予感しかしない。
「じゃあ、もう一箇所の大砲はどうすんの?」
「お前がやりたいか?」
「また伝説を作れと?」
「だから省いたんだ。ユウも無理だからなぁ」

 どうしたもんかと悩んでいると、すっと扉が開いた。

「我がやろうかの」
 ……誰しもがその言葉が誰から発せられたもので、どういう意味かを理解するのに時間を要した。

「はぁぁぁぁ!?」
 その声はギルドをつきぬけ、ガレ連邦共和国首都にまで響くんじゃないかというほど大きかった。

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