初心者がVRMMOをやります(仮)

神無乃愛

クレームと狂信者?


 味がそこまで改良されていないにも関わらず、時短魔法ドリンク剤は飛ぶように売れた。

 最初のお客様は実験の話を「安楽椅子」で聞いていたとあるプレイヤーだ。
 魔法関係を捨てたパワー型スタイルで戦っていたが、とあるクエストでスロウ系魔法をかけられ四苦八苦していたという。
 味なんて二の次とばかりに、土下座して購入したのだ。

 そこからは口コミ。パワー型プレイヤーだけでなく、時間短縮魔法を使えないプレイヤーたちがこぞって買うようになった。
 レシピが公開できる状態でなかったために、独占販売状態になった。

 慌てて特許申請し、基本レシピを公開。

 ……が。
 何故か他のプレイヤーではうまく作れないらしい。おかげで「カエルム」財源の一端を担うまでになってしまった。
 それと同時に「味を何とかしてくれ」だの「もう少し効能上げてくれ」だの、我が侭な意見も相次いでいる。
「……一律販売禁止にしていい?」
 にっこりと笑ってスカーレットが呟く。美味しくするため、効能を上げるためにと必死に錬金術で頑張っているのだ。
 そんなスカーレットの愚痴に付き合っているのは、ディスカスだ。
「気持ちは分からんでもないが……さすがになぁ」
 あれを普通に飲んでいるプレイヤーたちも多いし、口直しという名目で売られ始めた飴玉も一定の市場を得ている。
「クレームでね『飴玉買うお金がもったいない。ドリンクがまずいのが悪い』ってふざけてるでしょ」
「ふざけてるな」
 こればかりは誰しもが思うだろう。ドリンクは材料が材料なだけあって高価である。飴はNPCたちがまとめ買い出来るほどに安い。

 余談だが。
 熱狂的な「うさ耳親衛隊」と呼ばれるプレイヤーは喜んでまずいまま飲んでいる……らしい。
 ディスカスも又聞きなのでよくわからないのだが、どうやら開発にカナリアがかかわったということと、カナリアがもっとまずいのを飲んだというのが伝わったからというのがあるとか。
 カナリア恐るべし、である。

「あ、それ事実みたい。治験に加わるって鼻息荒いのが来たし」
「……マジか」
「マジよ。ってか『癒しのうさ耳嬢の代わりの苦行なら喜んでっ!』って叫んでジャッジにPvP申し込まれてたし」
「あいつはどこまで独占欲を発揮するんだ」
「でも半分自業自得。どさくさに紛れてカナリアちゃんに抱きつこうとしてたし」
「お前だってやってるだろうが!」
「あたしは女だから見逃されてるみたい。あとはイッセンとリリアーヌもジャッジの中では除外ね」
「……お前は女の皮を被った男にしか見えん」
「失敬な。男にこんなに大きな胸はないでしょ」
「お前の女らしさは胸だけか!?」
 こんなふざけた会話をしつつ、本日も改良に取り組むのだった。

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