初心者がVRMMOをやります(仮)

神無乃愛

採取道中出発!


「あれ? カナリアちゃん」
「あ、サクラさん。どうなさったんですか?」
 声をかけてきたのは、ギルドカウンターで業務をするサクラというい女性だった。仕事外では別のキャラクターを作っており、事件の前にフレンド登録もしている。
「最近は見回りが多いの。カウンター業務も残業の嵐。……上層部判断だけどさ。カナリアちゃんは?」
「私はこれから新年の飾り付けに使う布花の素材集めです」
「へぇ。……そういうのカナリアちゃん好きそうだよね。クリスマスは?」
「日本人なので関係ないって教育でしたから」
 そう言われ育ってきたカナリアは、ゲーム内で華やかなのが逆に不思議なくらいだ。
「そっか。気をつけて。……セバスチャン、ありがとう」
 いつの間にか、セバスチャンがお茶と菓子をサクラに渡していた。
「いえ。こちらこそ、ミ・レディを気にかけてくださってありがとうございます。それからカウンター業務の方に、こちらをお持ちください」
「……いいの?」
「はい。私からのお礼ですから」
 毎度のことで、ジャッジたちからも不思議がられているが、セバスチャンはカナリアの鞄を使っていることが多い。
 気がつくと素材も入っていることがあり、カナリアとしては助かるのだが。
「セバスは自立思考型AIだ。カナリアにはもってこいだろ?」
「初めて見たぞ」
「カナリアと一緒にいると、ゲーム内で面白い発見がある。おかげで飽きないな」
「そうかい。俺は既に驚いてるが」
 こそこそとジャスティスとユウが話していた。
「カナリア、そろそろ行くぞ」
「はいっ。サクラさんもお気をつけて」
「ありがとう。ご馳走様」
 サクラと別れて、採取に向かった。

 ルートとしてはメンモドキ→鉱脈→染料集め→アサミタイだ。その方が効率がいいのはカナリアもよく知っている。
 駱駝のコブを呼び出し、メンモドキのある地域まで乗っていく。

 それに対してジャスティスは豹、ユウは馬だった。
「何故に駱駝?」
「コブちゃんは砂漠だろうが山だろうが、行けますよ」
「……うん、それは知ってる。だけどコスパ的な問題から選ぶプレイヤーは少ないぞ?」
「そう、なんですか?」
 ジャスティスが指摘して、初めて気付いた。
「まず、豹よりは安いが、馬よりは高い。これは分かるな?」
「はい」
「次に、どこでも移動できるが、どこを進むにしてもあまり早いほうじゃない。こういうところでは馬のほうがかなり速いくらいだし、山に行けば鹿や熊のほうが進める場所も多いし早い」
「そう、なんですか?」
「あぁ。そして、餌が他の騎乗モンスターよりも食べる。実際、馬の三倍、豹の五倍くらいの計算になるんだ」
「ま、その分、一回の餌で動ける範囲は他よりも広いがな」
 そう付け足してきたのはユウだった。
「育て方で特性も変わるから、一頭買えば終わりだ。だから万能そうに見える駱駝を購入するプレイヤーは少ない」
 そんな話をしている中でも、カナリアの駱駝はもしゃもしゃと餌を食べている。
「いいんじゃないか? 中には育てるのが面倒で色んな騎乗モンスター買ったやつもいるし」
「ユウ、よく知ってるな」
「ん? 『深窓の宴』でやってるやつが結構いる……」
「なんだ。ジャッジのことを言ったのかと思ったぞ」
「やらかしたのか?」
「やらかした。一時期あいつの畜舎は凄いことになってた。ディッチさんがバイク開発してから、全部売ったけど」
「あいつ育成とか苦手だからな」
「だからあいつ、ここで生産職選んでないのか」
「そういうこった」
 そんな話をしながら、三人は着々と用意をしていく。そして、それぞれの騎乗モンスターに乗った。
「さて、行くか」
 そこまで来て、状態異常になりにくくなるアクセサリーを二人に渡していないことに気付いたカナリアは、慌てて渡していた。

 まずはメンモドキを大量に採取することになる。

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