初心者がVRMMOをやります(仮)

神無乃愛

オークゴブリンレイド戦 2


 同じ徹は踏まない、そうカナリアが決意したところで、生理的嫌悪は変わらない。
「カナリア、アレは素材だ。素材」
「素材?」
「そう、素材。きっとセバスが肉を美味しく煮込んでくれる。いや、焼いたり燻製にしたり」
 ジャッジが暗示をかけるようにささやく。
「そして、あの皮を綺麗になめせれば、ゴブリンとオークのいいとこ取りが出来るかもしれない」
 ゴブリンの皮は柔らかく使いづらいし、オークは硬すぎて使いにくい。伸縮性がゴブリンの皮にあるものの、のばしてしまえばあっという間に破れてしまう。

 それを経験したカナリアだからこそ、二つの皮のいいとこ取りが出来るかも知れないという言葉が魅力的にうつった。
「頑張りますっ!!」
 ある意味単純とも言えたが、何とか生理的嫌悪よりも物欲が勝った。

「カナリア君! 向こうが隊列を組む! その前に我々で隊列を乱す動きをする。カナリア君は、ここのメンバー全員のHP、MP、LP全てに気を配ること! それでいてなおかつタブレットにばかり集中せずに周囲を見ること! いいね?」
「はいっ」
 荷は重いが、やるしかない。素材を手に入れるためにも。

 ディッチたちが行ったあと、カナリアはタブレット表示を「PT全員のステータス画面」へと切り替える。今までそういったことはディッチの役目で、PTが二つだろうが三つだろうが、当たり前のように指示を出していた。
 一つを見るだけでも、カナリアには難しい。

 だが、ジャッジたちの足を引っ張りたくない。

「カナリア」
 ジャッジが楽しそうに声をかけてきた。
「この間お前は、他のプレイヤーを助けられたんだ。出来る」
「でかい失敗さえしなきゃいいよ。先生だってレイド戦指揮の失敗なんてかなりあるし」
「そう、なんですか?」
 ユウの言葉にカナリアは驚く。
「別のゲームでは失敗の方が多かったって聞くぞ。俺らの高校時代は『面倒見のいい引率の先生』だったけど」
 現在カナリアが受けているゲーム内での授業スタイルも、その頃に確立されたらしい。
「俺はあれ+補習を何度も受けた。ゲーム内ストーカーかと思うくらい探し出して、赤点補習で合格するまでクエスト禁止とか、よくやらせられた」
 特に担任になると凄かったとユウが続ける。
「ジャッジは行事サボりまくりで怒られてたな」
 ジャスティスが言い、そのクラスをまとめるクラス委員だったというジャスティスに、少しばかり同情した。

 そんな話をしていたら、はぐれたオークゴブリンがこちらへ向かってきた。

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