初心者がVRMMOをやります(仮)

神無乃愛

オークゴブリンレイド戦 3

 必死にカナリアがタブレットで全員の状態を確認しているのだろう。その分周囲が疎かになる。ディッチには「死なない程度に危険な目にあわないと分からないぞ」と釘を刺されている。
「ジャッジ、過保護すぎ。もう少し冒険させたれ。ある種のDVになりかねないぞ」
 ユウがここぞとばかりに言う。
カナリアあの子の場合は尚更。世界が狭すぎる」
 分かっていても、危険から遠ざけたいと思うのは我が侭なのだろうか。
「お前って昔からそうだよな。大事に囲いすぎるか、全く興味ないか」
 ジャスティスまで呆れたように言う。

 そう、ジャッジにとっても十年以上と「程よい距離」で付き合っている友人がいると言うことが驚きなのだ。
 偶然にも、その道標を最初に照らしてくれたのは、全く縁もなかったはずのポアロ&マープル夫妻だった。

「きゃぁっ!」
 いきなり一PTとはいえ指揮を任されたカナリアが、周囲からダメージを食らっていた。
「カナリアッ!!」
 慌てて駆け寄ろうとするのをディスカスに止められた。
「俺が魔法でやったほうが早いっ。お前は目の前のオークゴブがこっちに来ないようにしろっ!!」
「……あぁ」

「さて、我々も出来るだけ素材を残して狩りますか」

 にやりとタカが笑っていた。


 さすが、とでもいうべきだろう。
 こちらよりも総LVが低いパーティでこちらよりも上手くやっている。
「カナリア、お前はお前らしくやれ」
 隣に来て、ジャスティスがささやいた。
「わたし、らしく?」
「カナリアはどうしたい?」
「み……皆さんと一緒に、たたかいたいです」
「だったら、それでいいだろ。いつものように、俺らの状態見て、ポーションや飯渡してくれて、回復してくれて。補助魔法かけて。暇があれば攻撃に回ればいい」
「で……でもっ」
「何度いえば分かる? 俺らのほうがベテラン。ベテランに頼らずにやるって方が無理だ」
 何度も言われているが、どうしてもこれ以上甘えることが出来ない。
「レイド戦は経験がものを言う。初戦ってのは、何の攻略サイトも見ないででやれば『死に戻り』するもんなんだ」
「そう……なんですか?」
「何回も言ってるだろ。忘れんな」
 ジャッジまでもがそばに来て、頭を優しく小突いてきた。
「はいっ」

 今、出来ることを。やればいい。

 カナリアは慌てて全員におにぎりを渡した。


「俺の言葉よりもお前の一言だな」
 呆れたようにジャスティスがジャッジに言った。

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